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【J2:第9節 北九州 vs 山形】プレビュー:雨への対応力、風の読解力。厳しい状況が見せるチームの深さや個のパワーを、本城で目撃せよ。(12.04.22)

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この試合に向けた取材を終えて帰宅した私。椅子にもたれながらテレビをつけると、ちょうど天気予報のキャスターが聞きたくもないことを言おうとしていた。『週末はまとまった雨と風にお気を付けください』。どうやらこの週末も雨らしい――。

雨中の試合。そしてかなり強い風が吹くことになりそうだ。もっとも雨については昨年から折に触れて書いてきたことであり、ある選手が「今年に始まったことじゃない」と話すなど北九州にとってさしたる困難ではない。天候が試合にスパイスを加えるならば、それは『風』だ。

バックスタンドに並ぶフラッグはたいていの場合、左にたなびいている。これはメインスタンドから見て右から左に吹いているということであり、明白に風上と風下が分かれていることを示しているようにみえる。
ところが深い湾の終端部にあり、なおかつ丘陵地帯にある本城陸上競技場。スタンドは風を遮るのに十分な高さはなく、これら複合的な要因が風を舞わせている。ピッチレベルの風とクロスやゴールキックが通る高さでは風が異なるということも起き、GKのフィードが上空の風にあおられてピッチを割ることも少なくない。風上に立ったからボールが伸びる、風下だからボールが止まるという単純な話ではなく、繊細な風を読みながらの試合運びが求められる。
雨天であっても本城の芝の状態は良いが、もちろん完璧に通常の状態で戦うことはできない。環境を読むこと、柔軟な戦術を持つこと、そしてパスが繋がりにくい状況となったときには個の力、個の判断力が重要になってくるだろう。

個の力となれば、J1の戦力に加えて新たな顔ぶれを獲得して今シーズンに臨んでいる山形が一歩優位だと言えよう。最前線に座す萬代宏樹はここまで1得点だが、山形は萬代にまず供給し、そこから中島裕希と山崎雅人が絡む。高さ、スピードを武器に局面での強さを発揮して少ない人数でチャンスを作れるのが山形の特徴で、北九州のDF登尾顕徳は「得点力がある。厳しい試合にはなると思う」と警戒する。
ただ山形は1−0で富山に勝利した前節試合後、奥野僚右監督が「ボールをつないでサイドを崩す、背後を突く。そういった連動を生み出しつつ、試合を進めることができた」と話すなど組織的なサッカーにも注力する。奥野監督の言葉の通り、富山戦では得点に至るケースはなかったもののサイドを使った連動性の高いパスワークが見られたほか、石川竜也らサイドバックのポジショニングの良さも際立った。今節も北九州の素早い寄せをかいくぐりながら組織的な部分と個の力の両面を出したいところだ。

一方で北九州は前節の岐阜戦、自分たちのサッカーをほとんど出すことができず0−1で敗戦。内容はスコア以上に良くなく、連勝は4で止まった。しかし北九州にとっては前向きな敗戦と言えるだろう。「連勝中も進化させることはしてきたが、大きくはできなかった」と三浦泰年監督。調子が上がってきていない選手や逆に急速に伸びてきている選手の使い方、あるいは試合の中での距離感のズレなどを連勝中に変更することはリスクを伴う。結果がある程度出ている以上、大きくなたを振るう必要はないのかもしれないが、練習試合ではレギュラーメンバーとサブメンバーが混合した組み合わせを試すなど、変化を加えたり、連勝で緩みがちだった緊張の糸を再びぴんと張らせた。

ピッチ状況が悪化したときに生きてくる個の力や判断力。北九州の場合はスプリントと思い切りの良さを持ち味としている渡大生や、福岡教育大との練習試合で30メートル超のロングシュートを決めた木村祐志にゴールへの期待がかかる。
渡は「常に前半で潰れる気持ちで入っている」と気合い十分。渡は池元友樹らを活かす動きを心がけているが、ゴール前でのテクニックとスピードは池元に比肩し決して劣るものではなく、個での打開力にも注目したい。また、木村はそのロングシュート以外にもドリブルで決定機を作り、ゲームの流れを呼び込んだ。今節の試合ではプレースキッカーでもある木村の風への対応も楽しみなポイントだ。

その木村ら中堅どころを突き動かしているのも渡など若い選手だ。スタンドから見ていても渡の動きは爽快だが、それは選手も同じ。木村は「GKが前に来ていたので」といつも通りひょうひょうとゴールを振り返ったあとで、「(渡の)がむしゃらさがチームの刺激になっている」と渡効果に触れた。渡だけでなく、竹内涼や新井涼平からも消極性が消え、北九州の攻撃的なパスサッカーにはまってきていることも好影響を及ぼしている。
若い選手から出てくるゴールへの渇望と、敗戦や練習試合を通して再び生じた緊張感が、北九州イレブンを目覚めさせているのは間違いない。

悪天候の試合では、通用してきたものが通用しなくなる。どこからでも、どんな展開になってもゴールを近づけることはできるのか。チームの深さと、個人の強さが試される。
雨には雨の、風には風の試合がある。あまりにも雨、雨と書きすぎてしまったが、雨合羽を買って、こういう日にしか見られない貴重な試合を、本城で目撃してほしい。

以上

2012.04.21 Reported by 上田真之介
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