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【J1:第7節 神戸 vs 柏】レポート:神戸が柏の猛攻に耐えて今季3勝目。野沢の目に涙(12.04.22)

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試合の前日。全体練習の後に、神戸の野沢拓也は黙々とFK練習を何度も繰り返す。和田昌裕監督が台車のついた壁人形を左から右へ移動させれば、野沢もそれに合わせてFKポイントを変えながら。壁人形の頭を越えたボールは慣性に逆らうように曲がり、落ち、ネットを揺らす度にギャラリーから感嘆の声が上がる。いぶきの森球技場のいつもの風景だ。

前半14分。神戸はペナルティアーク付近でFKを得た。全員でプレスをかけて奪ったボールを大久保嘉人がもぎ取ったチャンスだ。柏の壁は10枚。キッカーは野沢。「壁を越えたら入ると思った」と振り返るその弾道は、柏のGK菅野孝憲が反応するよりも早くポストをかすめてゴールへ。歓声がスタジアムを埋め、野沢はベンチに駆け寄り、和田監督に飛びついた。いつもに似た風景だが、野沢のくしゃくしゃの笑顔があった点でいつもとは違った。
公式戦6試合無得点の神戸にとっては待ちに待ったゴール。その勢いのまま神戸が主導権を握るかに思われたゲームは、その後、柏の北嶋秀朗や田中順也にくさびのボールが入り始めると、サイドへの展開や2列目からの飛び出しなど、徐々に柏がリズムをつかんでいく。前半28分過ぎにはジョルジ ワグネルのFKを神戸のGK徳重健太がはじき、柏の澤昌克が詰める決定的なシーンもあった。
そして、前半41分。クロスボールを神戸DFが跳ね返したこぼれ球を、柏の澤が豪快なミドルで沈めて同点に。結局、前半は1−1で折り返すことになった。

後半も柏の優勢は続く。「(ボールを)奪いに行くのか、相手に回させるのかというところで、相手が入ってくるところを狙う守備になった」(橋本英郎)神戸が、柏に面白いようにボールを回される防戦一方の展開。それでも最後の最後で神戸が跳ね返し、徳重のファインプレーもあって何とか追加点を許さない。いつ失点してもおかしくない状況を打開すべく、神戸は橋本に代えて運動量の豊富な小川慶治朗を投入。後半18分には、1対1に強い北本久仁衛を入れて、柏の2トップを抑えにかかる。それでも依然として流れは柏が握り続けた。

試合が動いたのは後半39分。左サイドの低い位置でボールを奪った相馬崇人が、途中出場の森岡亮太とワンツーで2人を交わし、そのまま前方へドリブル突破。ロングディスタンスの後のクロスは、中央に走り込む小川のピタリと合い、小川がそれをダイレクトでゴール右隅へ決めた。そして後半アディショナルタイムには、GK徳重から右サイドのスペースへ流れた野沢へロングフィード。そのまま野沢はボールをキープするかに思われたが、アーリークロスを選択。ニアの田代を越えたボールをファーサイドで森岡が頭で合わせ、GK菅野が弾いたところを田代がだめ押しの3点目を押し込んだ。野沢の攻めの気持ちが生んだ価値あるゴールだった。

試合後、柏のネルシーニョ監督は「後半40分間を支配しながらも後半40分以降の2つのカウンターで決められてしまい、その結果敗れてしまった。(中略)チャンスを作った後をしっかり決めなければ、こういう結果をもたらしてしまう」と振り返った。シュート数は神戸6、柏21。柏側の視点で言えば“自滅”したゲームだったと言えるかも知れない。
だが、神戸側から見れば、耐えて、耐えて、ワンチャンスをものにした勝利。和田監督が「粘り強く、我慢をしながら、チャンスをうかがって、2回のチャンスを確実にものにしてくれた」と選手たちを讃えるように、まさに全員でつかんだ貴重な勝点3だった。

試合後。移籍後初ゴールを決めた野沢が、ゴール裏のサポーターへの挨拶をした。その途中で声を詰まらせ、手で涙を拭った。期待されながら結果が出せずにいた悔しさと、やっと期待に応えられたという安堵の想いが交錯したのかも知れない。
ミックスゾーンに現れた野沢は、ある記者の“ゴールした後に和田監督のもとへ行くのは最初から決めていた?”という質問にこう応えた。「(6連敗に関して)一番のプレッシャーは和田さんだったと思う。(中略)何もかも忘れて思わず行っちゃいました」。
いぶきの森球技場の、あの風景がふと頭に浮かんだ。

以上

2012.04.22 Reported by 白井邦彦
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