後半が始まる2分ほど前。1階の記者ルームからメインスタンド上方の記者席に上がってきた私に、別の記者がバックスタンドの方向を指さして、振り返るよう促した。その手の先を見ると、紅い色をした丸い月が怪しく浮かんでいた。通常よりも大きく見える月、スーパームーンというらしい。吉兆とは程遠い戦慄を覚えた瞬間だった。
いまこう書いているのは、北九州の敗戦を紅い月のせいにさえしたくなるような心持ちからかもしれない。ほぞをかんだ試合。内容と結果をともに希求する作業はいつも簡単ではない。
「新しい選手をチャレンジさせたり、または未来を見据えた部分での采配をした」(三浦泰年監督)という北九州はこの試合、ボランチにキローラン木鈴、中盤の左に特別指定選手の中原秀人、右のウイングに森村昂太を置く4−3−3で臨んだ。試合2日前の5月4日に遠征先の町田から北九州に戻り、5日の練習を経てすぐに今日の試合。「誰が出てもやることは変わらない」(関光博)環境をチームとして作ってはいるものの、連係面での不安はあった。しかし、不安をぬぐえるはずの対人プレーへの強さが再び鳴りを潜め、連係のほつれを補うことはできなかった。
対する横浜FCもメンバーに手を加えた。先発メンバーにはカイオ、大久保哲哉、三浦知良のFW3選手が名を連ね、実際には大久保を前に置きながら、2列目でカイオ、三浦、それに武岡優斗が並ぶ布陣。ただ、序盤は大久保にはボールがなかなか入らず、カイオの攻撃的な姿勢も生きてこなかった。
双方の布陣が落ち着かず、中盤での失い合いのような展開になる中、隙を突いて先制したのは横浜FCだった。19分。右サイドからのスローインを拾った大久保がタッチライン際から走り込んだ武岡に流すと、武岡がDFを振りほどきながら切り返し、再びペナルティエリア内に入り込んだ大久保にスルーパス。これを大久保が冷静にゴールに振り抜いた。前半の横浜FCのシュートはこれが唯一。少ないチャンスをものにした横浜FCがゲームの主導権を握る。
後半の立ち上がりにも、今度は左サイドからの阿部巧のふわりとしたクロスに大久保が抜け出し、体を巧みに使いながらヘディングでループ気味のシュート。GK佐藤優也も及ばず、2点を先行した。
北九州は後半、キローラン木鈴をセンターバックに下げて右サイドバックの関を1列前に出したり、端戸仁、林祐征を矢継ぎ早に投入。前線の厚みを増すと、71分に多田高行が左の深い位置からクロス、ゴール前で林と相手DFが競り合ったこぼれ球を「自分の形ではない」(池元友樹)ながらも池元が右足で決めて1点差に詰め寄る。
しかしリードする横浜FCは守備陣が踏ん張って体を張り、北九州にペナルティエリア内にまで持ち込まれながらも「粘り強くディフェンスしようというのをやってくれた」と山口素弘監督も称える厳しいディフェンスを継続。北九州はチャンスを広げることができず、反撃は1点にとどまった。横浜FCは大久保の2点を守りきり、連敗を2で止めた。
なお、試合前に行われたキックインセレモニーでは三浦兄弟の母・由子さんが登場した。母の日に向けた企画の一環で行ったもので、由子さんはセレモニー後の取材で「泰年がブラジルに行っているとき、本人に頼まれたといって(泰年監督の友人が)カーネーションを届けてくれた。知良は母の日に限らずよく手紙をくれた」とコメント。また、試合後の三浦泰年監督の記者会見では、三浦監督は険しい表情を見せながら試合を振り返っていたが、母の日の話を振られたときだけは「うちのおふくろは何色のユニフォームを来てボールを蹴りましたか?」と記者に再質問するなど笑顔も浮かべ、「しっかりとした準備をして、しっかりした戦術と戦略の中で愛媛さんと戦いたい」と気持ちを新たにしていた。
北九州は新しい布陣に挑戦しながらも、同時に結果も求めるという試練を自らに課した。結果はホーム戦3連敗で、悔しさが残ったのは言うまでもない。ただ、悔しさこそ、次へ立ち向かう力となる。紅く怪しい月夜の敗戦を胸に刻み、北九州はまた歩き出す。
以上
2012.05.07 Reported by 上田真之介
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