風は無風ないし微風だったが、コイントスで勝った草津・御厨貴文は味方サポーターに向かって攻めるエンドを選択した。連戦中も含めて8試合、先発メンバーを換えていない山形に対し、4連敗中の草津は前節から先発メンバー5人を入れ替えていた。草津の明確な決意は、キックオフの笛とともにピッチ上で表現された。近い距離でシンプルにパスをつなぎ、守備に切り替わったあとも、ハマるケースでは前からアプローチし、敵陣でプレッシャーをかけた。ただし、状況を見極めての判断力と対応力を磨いてきた山形にとっても、それは十分に想定内のもの。対応で慌てることはなく、草津の勢いある攻撃を5分と経たないうちに切っている。ただし、連戦の影響で全体に運動量が少なく、ボールのコントロールも自由にはならない。「相手の3トップの速い選手が、うちのサイドバックの裏を使うことが予想されたなかで、それをなるべくなくそうということでやっていました」(松下裕樹)と草津がサイドバックの裏のスペースをケアしたことに加え、3トップ自体のプレーの質が上がらなかったことで、サイドから何度かクロスが上がってはいるが、山形の攻撃が形になる機会は多くはなかった。
それでも、両チームに均衡を破るチャンスがなかったわけではない。24分の山形ゴールキックでは、抜け出した中島裕希が起点をつくり、追い越した山崎雅人がクロス。クリアしきれなかったボールに競った宮沢克行が潰れ、秋葉勝がポスト直撃のシュートを放っている。31分には右サイドで中島が山崎へくさびを入れるが、山崎が潰されたと見るやくさびを入れた中島自身が裏へ走り込み、萬代宏樹にヘディングを打たせるクロスを送り、39分の直接フリーキックでは石川竜也のフェイントでゴール前の密集を解いた直後に宮阪政樹が強烈なシュートを枠に飛ばしたが、これはGK内藤圭佑の好セーブに阻まれている。一方の草津も36分、宮沢のバックパスミスを受けた遠藤敬佑がそのまま中央から持ち込み、シュートの跳ね返りを右に流れながらクロス。清水と小林亮が交錯したこぼれ球に、逆サイドから飛び込んでいた林勇介が懸命に詰めたが、ここは小林が間一髪でかき出した。
宮沢に代えて船山祐二を投入した後半の山形は、その船山が試合を動かすことになる。宮阪のパスをバイタルで受け、「前を向いたときに、ザキさん(山崎)が走ってたのでパスを出そうかなと思ったんですけど、通らないと思って、前が空いてたからシュートに切り換えた」と利き足とは逆の右足で放ったシュートは、小柳達司の足に触って上方へコースを変える。GK内藤も戻りながら懸命に手を伸ばしたが、それをもかわした軌道はゴール右隅に落ちるように吸い込まれた。
これで勢いづいた山形の攻勢がしばらくは続いたが、草津もやられっ放しではなかった。59分、遠藤が胸トラップから西河翔吾をかわしたカウンターの場面では、ヘベルチへ送ったパスがズレ、70分のフリーキックでは、熊林親吾からのパスを受けた松下のクロスを小柳が折り返し、ゴールエリア手前で杉本裕之が倒れながらタイミングをズラしてシュートを放ったが、GK清水の好反応に阻まれた。1点を追う草津は、76分に2枚替え。「土井ちゃんが入ってハッキリした」(松下)とラフなボールに競る長身の土井良太と、その裏を狙う後藤涼の連動性が功を奏し、前線からのチェイシングも効いていたが、「最後のところでフィニッシュに行けないと相手も怖くないかなと思います」(松下)と、山形の守備の対応力ゆえに逆にシュートチャンスが減った。
結局、試合は1-0のまま終わる。ともに連戦の疲労は色濃く、ピッチ上で展開されていたのは、頭で描いていたプレーとは違っていただろう。それでも、闘う姿勢は失わず、走れる限り走り、競る場面では競り、戻るべき時間帯では戻った。首位に浮上したチームと5連敗となったチームに明暗を分けたが、技術的な側面で語ればけっして高い評価を得られなくても、それを補う気迫が両チームから感じられた好ゲームだった。
「狙いとする形はできつつありながら、結果としては負けてしまうということは、成功にはいたらなかったなと。今ひとつ、勝負どころでのひとつのアクションが足りない」。草津・副島博志監督のこの言葉からも、結果にこだわって臨んだゲームだったことが受け取れる。5試合ぶりに相手にリードを与えずにハーフタイムを迎えたが、それだけに、後半開始直後の失点には、副島監督も「非常に残念」と表現した。敗戦のなかに光るいくつかの手ごたえを、次節の北関東ダービー・栃木戦で表現したい。
山形は2点のリードを追いつかれた前節をいい薬として、今回は1点のリードを守りきった。「この間の試合(愛媛戦)で2点差はセーフティリードではないとわかったところなので、2点3点取れれば、ここまで消耗しないでも勝てるんじゃないかなとは思います」(清水)とはいえ、苦しみの対価以上のものを勝点3が与えてくれることを励みに勝点を重ね、今季ついに湘南をかわして首位に立った。それでも、「自分たちの仕事の成果が、途中経過ではありますけれども、そこで数字となって表れている、この13節の順位だと思います。それ以上でもそれ以下でもない」という奥野僚右監督の思いは、チーム全体に浸透している。「周りがすごくそういう(首位に対する)戦い方をしてくる可能性が高くなってくると思う」(清水)との懸念はあるが、これで自ら足元を見失うチームであれば、ここまでの厳しい試合は乗り越えられなかっただろう。
試合後のミーティングでは長期離脱中の岡根直哉も含めた全選手とスタッフが円陣を組んでいたが、そこへ仕事で場を離れていた立石雅揮トレーナーが連れ込まれ、連戦のバタバタで5月4日当日にできなかったプチ誕生祝いが行われた。緊張気味にあいさつをする立石トレーナーにボトルの水をかけたのは石井秀典。一丸となっているこのチームには、本当に笑顔が似合っている。
以上
2012.05.07 Reported by 佐藤円
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