「今季最高」と、曹貴裁監督は語った。勝利を挙げた前節の、こと前半の内容についてである。
ホーム富山戦で9試合ぶりの勝利を挙げた湘南は前節、アウェイで山形を降した。立ち上がりから積極的に仕掛けていき、間隙を突いて襲いかかってくる敵の反撃には切り替え、帰陣ともに素早い。奪えば攻めの手綱を解き放ち、多くの時間を敵陣に求めた。ボールのあるなしにかかわらず皆が攻守に関わるさまに、永木亮太が引いた「一体感」という言葉が腑に落ちる。思えば、セカンドボールを坂本紘司が奪い古橋達弥のファーストシュートに至った開始20秒の一連は、この日の早かりし序章だったかもしれない。
指揮官が続ける。
「攻守に渡って自分たちでアクションを起こし、イニシアチブを握れるようになってきた。自己判断とともに意思統一ができるようになってきたと感じる」
「得点を取りたいと思っていた」そう明かす永木が先制ゴールに思いを映し、スコアでも前半のうちに主導権を握る。後半はホームチームの攻勢が強められ、一時は同点に追いつかれもした。だがPKを防いだGK阿部伸行を筆頭に、DF陣の奮闘もあって最少失点に食い止め、逆に山形を突き放す。永木のラストパスに、高山薫が鮮やかに仕留めたのだった。
3バックの左に入った島村毅は、勝利が遠のいていたゲームとあわせて前節を振り返っている。「自分自身、最近は裏を取られないように距離を置いて対応していた部分があった。でも山形戦では入りからアグレッシブな守備ができた。やはりチャレンジは大前提だと思う」。危険な空間を幾度も塞いだ鎌田翔雅も「山形の山崎選手や中島選手を抑えられなければJ1には行けないと意識して臨んだ。試合前からモチベーションは沸騰していました」と明かし、またこうも語る。「これまでは全体的に一歩が遅れていた。負けても勝ってもいない状態が続いていたけれど、負けたことで初心にかえった」。第17節北九州戦の敗戦を節目に、チームは次のステージへと踏み出しつつある。勝利した前々節の富山戦然り、前節の時点で首位だった山形の先手を奪い勝点3に結んだ事実は、そのたしかな足跡といえるだろう。
「ペナルティスペシャルデー」と銘打たれた今節、湘南が迎え撃つは同じくペナルティのユニフォームを纏う岡山だ。シーズン序盤は最下位の憂き目すら見た彼らだが、以後着実に勝点を積み上げ、現在8位につけている。影山雅永監督のもとでのチームづくりは3年目を迎え、3−4−2−1の成熟が数字にも窺える。とりわけ失点は14と首位の千葉に次ぎ、スコアが動きやすい終盤の失点も前後半ともに少ない。4位の湘南との勝点差はわずか3、7位と8位を行ったり来たりしているここ最近を思っても、上位をじかに食らい、もうひとつ上に出たい。なお岡山はチームトップの6得点を稼ぐ川又堅碁とスピードスターの石原崇兆が、湘南は“疾風迅雷”古林将太が出場停止となり、メンバーもまた興味深い。
岡山の印象について、曹監督は「アグレッシブな攻撃とゴール前のスペースを埋める有機的な守備」を挙げた。同じフォーメーションの激突もまた戦いの焦点となる。「ミラーゲームになれば、先にポジションを取る、先にアクションを起こすといったことが大事になるし、それを果たせたほうが有利になる。その意味で楽しみな試合です」。攻守における主導権奪取にチームの成長を見た山形戦のつぎのゲームだからより、いかにイニシアチブを握れるかは湘南にとって大切な要素となろう。
くだんの山形戦で3バックの中央を務めた大野和成は、こんなふうに語っている。
「ラインを高く保つためにも個の1対1で負けないことは大前提。点を取るためにはリスクを冒して攻めていく勇気が必要だし、攻撃陣にはどんどん行ってほしい。その分、後ろは個々で負けないように踏ん張るのみ。僕らの後ろには伸くんがいるし、GKとともに連係していきたい」
首をたくさん振って痛くなった、と苦笑いしたが、公式戦では初めてという3バックの中央でラインをコントロールし、裏のカバーにはスピードを活かした。付け加えるなら、先制ゴールは大野が競り勝ったところから、決勝点も大野のフィードを機に生まれていた。「やっていて楽しかったです」と語る前節の記憶は、苦しい局面、厳しい勝負への挑戦があってこそ唇に上るものだろう。相手に対し、また自分たち自身に対して、今節もその姿勢は変わるまい。挑み続ける先に、「今季最高」の更新はある。
以上
2012.06.16 Reported by 隈元大吾
J’s GOALニュース
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