上空を覆う雲が中々晴れず、ハッキリしない天気に不快指数が上がる。今の福岡は梅雨のような状況に陥っている。負けが続いているわけではない。けれど、勝ちきれない。守備では大きく崩されているわけではないのに簡単に失点をし、ここまでの24失点は横浜FC、北九州と並んでリーグ15位。攻撃に目を転ずれば、ボールを支配してもシュートまで行けないことが多く、坂田大輔、城後寿がそれぞれ７得点を挙げながらも、チーム得点26は甲府と並んでリーグ９位に留まっている。その結果の順位は13位。「全攻切守」を武器にして「勝点90。Ｊ２で優勝してＪ１に昇格」という高い目標を掲げてスタートしたチームは、リーグ中盤を迎えても、自分たちの形を示すことができない状況が続いている。

今の福岡に求められているのは「やりきること」だ。
決して全てが悪いわけではない。第18節の北九州戦、続く第19節の松本戦では、前半は守備で相手を圧倒。コンパクトなゾーンを保って、ボールを失った瞬間に素早く攻守を切り替えてボールを奪い返す場面を多く作り出して相手に攻撃を許さなかった。その守備を担っているのが、鈴木惇、城後寿、岡田隆のハードワークだ。問題は、それが90分間続かないこと。サッカーでは相手の時間帯は必ずあるものだが、それにしても前後半の落差が大きい。ペース配分も含めて、目指す守備を90分間やりきる必要がある。
攻撃面にも同じことが言える。守備が機能している時間帯は、ボールを一方的にポゼッションしながら楔のボールを打ち込んで相手の守備網を崩そうという工夫は見られるが、ゴールへ向かうスイッチが入らずにシュートまで行けないことが多く、過去２戦で放ったシュートはともに一桁に終わった。「シュートで終わる」という大原則を徹底できないチームは、前に人数をかけている時にボールを奪われてカウンターからピンチを招くという状況をも生んでいる。
相手云々ではなく、戦術云々でもなく、まずは自分たちがやろうとしていることをやりきること。福岡が置かれている状況から抜け出すためには、やりきる強さを発揮することが求められている。

さて、そんな福岡が次節に迎えるのはＦＣ岐阜。ここまでの成績は３勝４分１２敗で２１位と苦しいシーズンを過ごしている。しかし、戦いながらスキルアップを目指すチームには変化の兆しも表れている。前節の東京Ｖ戦は、まさにそんな試合。４−１−４−１の布陣で戦った試合は結果こそ１−４というスコアだったが、それが内容をそのまま反映したものではなかったことは、以下のコメントからも窺い知れる。
「先制して、良い流れで入れたが、その良い流れの15分までに２点目が取れなかったのが痛かった。岐阜はすごく良いチーム。特に守備は本当に堅くて、去年のチームよりもはるかに強かった」（飯尾一慶・東京Ｖ）
「狙い通りのサッカーができた。最初の失点を抑えておけばもっと違った展開になったんじゃないかと悔やまれる。守備としては、目指していることがある程度できた」（樋口寛規選手・岐阜）
福岡との対戦でも、チームが目指すものは、戦いながらチームを成長させていくこと。そういう意味では、福岡同様に自分たちのやるべきことやり抜くことがポイント。課題としては、リーグワーストの得点力をどのように修正するかということだろう。

順位や、互いの戦力を比べるだけなら福岡が優位であることは間違いない。しかし、これまでの福岡の戦いが物語っているように、それは試合の結果には直結しない。岐阜を受けて立つようなら望む結果は得られず、チャレンジャーとして自分たちの目指すサッカーを岐阜にぶつけられるかどうかが勝負の鍵を握る。また、出場停止の鈴木惇の穴をどうやって埋めるかも大きなポイント。前節は成岡翔が出場停止だったが、攻守に渡ってチームの要としての絶対的な存在感を放つ鈴木の欠場の影響は、それ以上に大きい。結果を出していない相手との戦いではあるが、福岡にとっては簡単な試合ではないことだけは確かだ。

そんな試合で福岡に求められるものは結果と内容だ。勝ち切れない中では、勝つという結果がチームに大きな力をもたらすものだが、ここまでの福岡を見る限り、それだけでは足りない。結果も内容も手に入れて、自分たちの目指す方向に間違いがないことを示さなければならない。そして何より、思うようにならない現状を脱し、Ｊ１昇格という大きな目標に向かって進んでいける力を示してくれることを、レベルファイブスタジアムに集まるサポーターは望んでいる。

以上

2012.06.16 Reported by 中倉一志