「内容よりも結果」。15日の練習後、高木琢也監督はこの一戦に向けてそう話した。草津に乗り込んだ前節は、水戸戦で見られた攻撃陣の関係性が今ひとつで、ボールは保持しながらも最後の部分の工夫や積極性を欠きドロー。高さのある草津の攻撃に対しては狙いとした守備を実践して無失点に抑え、内容も決して悪くなかったとは言え、現状を打開して順位を上げていくにはやはり、そうしたゲームで確実に結果として３ポイント積み上げていかなければいけないことを改めて感じさせられた。

まして、やがてリーグも折り返し地点。開幕の福岡に敗れ、11節の大分との試合でもスコアレスで引き分けて今シーズンいまだ勝利のないバトル・オブ・九州とあって、今節は是が非でも勝点３をつかみ取りたい。北九州とは同じカテゴリーになって３シーズン目で、通算の戦績は１勝２分１敗の五分となっているが、現在の順位も熊本が北九州の後塵を拝する格好である。昨シーズン２回目の対戦となった35節のゲームでは交代出場した林祐征にヘディング２発を食らうという衝撃的な敗戦を喫しており、同じ轍を踏むわけにはいかない。

しかしながら、今節はお互い中３日というタイトなスケジュール、さらに熊本は４試合連続でFWとして先発出場し前線で起点となっていた高橋祐太郎、かたや北九州も最終ラインの小森田友明と中盤の森村昂太をともに出場停止で欠く状況。こうしたことから、高木監督は「大事なのはコンディショニングをどこまで戻せるかと、今までどういうことをやってきたか」と話し、15日の練習では通常試合の２日前に行っているフルピッチの紅白戦を実施しなかった。それでも狭いエリアでのミニゲームではタッチ数を制限し、早いアプローチへの対応策として確実なサポートと早い判断を意識づけたようである。

北九州に関しては、中盤で森村が出場停止とは言え前線のスピードやモビリティには警戒が必要。「GKから攻撃が始まる」と高木監督も述べている通り自陣からのビルドアップが熟成してきているが、前節の栃木戦でも見られたようなタテへのスピードを生かした攻撃も脅威だ。先制した場面では自ら相手ボールをカットしたキローラン木鈴が預けてゴール前まで顔を出して合わせているが、得点に至らなかった場面でも複数の選手が絡んでテンポよく動かしながらフィニッシュまで持ち込む形を作っている。特に、ドリブルでの打開もでき、熊本のJリーグ入りにあたっても貢献したキャリアを持つ左サイドバックの関光博や、左右の端戸仁、常磐聡らがサイドから中へ絞る動きをすることによって前線に流動性が生まれ、そうして生じたギャップをトップの池元友樹やトップ下の安田晃大が使うという構図がある。

熊本としては、こうした動きをいかに捕まえるかがポイントの１つ。草津戦でも３バックのサイドのスペースを狙われた反省を踏まえ、「前にプレスをかけに行くのか、引いてスペースを埋めるのか、状況や流れに応じて使い分けをはっきりさせないといけない」と片山奨典は話す。そうした上下動でタテの動きをケアすることに加え、気をつけたいのは前述した左右の動きにどう対応するかという部分。特に自由にポジションを変えてボールを引き出す安田から目を離せないが、その動きにつられてバランスを崩しバイタルを空けてしまうことは避けたい。「スライドを早くしてバイタルを埋めたい。同サイドで潰すことを意識しないといけない」と原田拓が言うように、まずは中を閉じることを優先しながら、適宜コミュニケーションを取ってしっかり受け渡しできるかが鍵。縦に伸ばされてスペースを与えればダイアゴナルに入ってくる可能性もあることから、コンパクトなゾーンを形成するためにDFラインを下げすぎない勇気も必要となる。

攻撃面での焦点は、そうした形でボールを奪ってからの切り替えだろう。熊本もしっかりとボールを動かして作る形を志向し、実際にそうした場面は増えているものの、相手の陣形が整っていなければその隙を突く狡猾さも得点の可能性を高めるためには有効。その意味では、前線の動き出しと出し手の判断を共有して背後を狙う場面をどれだけ作れるかに注目したい。

KKウイングのピッチの水捌けの良さは過去にも証明されているが、前日から激しく降った雨の影響も全くないとは言い切れず、ピッチコンディションも含めて状況に応じた判断を下して戦い方を調整する力も試される一戦。内容はもちろんだが、他の試合以上に結果を求められるのがダービー。下位を脱して浮上するためだけではなく、熊本の誇りのためにも、負けるわけにはいかない。

以上

2012.06.16 Reported by 井芹貴志