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【J1:第15節 川崎F vs 横浜FM】プレビュー:危機感を持って淡々とチーム作りを進める川崎Fが迎え撃つのは、好調の横浜FM。局面でのマッチアップに注目したい(12.06.22)

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田坂祐介がヘディングを決めた瞬間、クロスを上げた田中裕介はピッチに倒れこみ、拳を芝に何度も打ち付けて喜びを表現した。風間八宏監督が「13本パスが繋がって入っている」と胸を張る見事な得点シーンだったこともあるのだが、田中裕は「負け試合だったですからね」と自身のそのパフォーマンスの理由を振り返った。

辛勝という表現が適切な前節の鳥栖戦に対する選手たちの評価は、一様に厳しいものだった。たとえば矢島卓郎は「今のままでは、また試合をやっても多分、勝てないですよね」と川崎Fと鳥栖の力量を冷静に分析。また中村憲剛は鳥栖戦後のミックスゾーンにおいて、硬い表情のまま「勝ったのは良かったです」とだけ述べ、自らの最初の答えを打ち切った。鳥栖がうまい戦い方をしていたという事実はあるのだろうが、それにしても内容は悪かった。

表層的にはリーグ戦3連勝である。ただし、必ずしも内容が伴っていないという点で、危機感がチーム内に充満しているのも事実である。ただ、だからといって風間監督はチーム作りの方針を変えるようなことはしていない。就任以来貫いてきた、相手チームの分析結果を伝えるミーティングは行わず、ただひたすらに自分たちのサッカーを突き詰めている。そしてそんなチーム作りについて風間監督自身は「やり方ではない。基準を上げるという事」であると説明する。サッカーのやり方、つまり戦術を教えるのではなく、ひとりひとりのサッカーの基準、もしくは技術レベルを上げる事に主眼を置いているのだと話す。そしてその成果として「実際に見てもらえばわかるように来た時から比べればかなりいろんなものが出来るようになっている。持久力も、頭の継続力もそう」であるとし「トレーニングは変わってきている。試合の中でも、何回か面白い場面が出てきている。それがどのくらいの長さで出来るのか」が今後の課題であるとの認識を述べている。日々の練習の中で、実感として選手たちの成長を感じているのである。

相手チームを分析したミーティングを行わないスタイルは、当初選手たちに戸惑いをもたらしたという。ただ、やらなければやらないで問題はないという事が選手たちに浸透してきているというのも事実。その点についてたとえば井川祐輔は「自分たちのスタイルを貫いて、自分たちのサッカーをするだけです。そうすることで、逆に向こうが合わせてくれれば、相手は、相手のスタイルではないサッカーをやることになる」と話す。ただしそれは理想論であり現実として「今は相手にやられているところもある」事も認識している。そうした、まだまだやるべきことは多いという考えが共通理解としてチーム内にあることもあり、3連勝に浮かれるような雰囲気はないのである。

F東京戦でいい内容の試合をした横浜FMについて、選手たちにチームから与えられる情報はない。ただその中でもスラスラと相手選手の名前が出てくるのが田中裕である。

去年、横浜FMから移籍してきた田中裕は、「横浜とは去年4回やっているので、さすがに今更どうという事はないです。ただ、選手はほとんど知っているのである意味楽しみです。向こうも調子が上がってきているし、僕達は落とせない試合が続きますしね」と話す。

マッチアップする場面が頻発するであろう齋藤学については「学はマリノスに居た時から良かったですよ。愛媛に行って、それをコンスタントに出せるようになったんだと思います。だから、出られるようになっているんだと思います」と分析。また2トップでの起用が予想されるマルキーニョス、小野裕二の2選手の仕掛けについても警戒感を見せていた。

小野については、ケガから復帰の福森晃斗が、中学時代から選抜チームで共にプレーしており「中学の頃から知ってます。彼は全てにおいて凄い。シュートの精度もそうですし、体も強い」と話す。誕生日でわずかに6日しか違わないこの両者のマッチアップは、もし実現するようなことがあれば注目したいところである。

F東京戦で素早い反転からのゴールを決めたボランチの兵藤慎剛については、早稲田大学で2学年上の矢島が「入ってきた時からリーダーシップがありましたね。入った時から早稲田で一番上手かった」と述懐。兵藤は攻撃的に前に出るスタイルを取ってはいるが、場合によっては矢島との、大学の先輩後輩同士のボールの奪い合いの場面が見られるかもしれず、注目点の一つとなるだろう。

また中村俊輔のセットプレーが試合を左右するポイントの1つになるのは確実であり、ゴール前での不用意なファールだけは避けたいところ。今季の川崎Fは警告の数こそリーグ最少の12回にとどまるが、反則自体は213回と必ずしも少ないわけではない(最小は180回の名古屋。最多は鳥栖の281回)。リスク管理は徹底したい。

同じ神奈川県に本拠地を置く川崎Fと横浜FMとは昨季4度対戦し、2勝2敗とイーブン。特に33節のホーム最終戦はジュニーニョを送り出す最高の舞台となった事を記憶されている方も多いだろう。ただ、その一方で、ヤマザキナビスコカップのアウェイでの0−4という敗戦は、その結果はもちろん内容的にも最悪の試合をしたという事もあった。歓喜と屈辱の歴史を積み重ねてきた両者なだけに、この試合も簡単な試合にはならないだろう。両チームのサポーターが醸し出すスタジアムの雰囲気と共に、楽しみなところである。

以上

2012.06.22 Reported by 江藤高志
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