普段プレビューやレポートを書いている担当としては、できる限り多くの方にスタジアムに足を運んでいただき、少しでも多くＪリーグの魅力を堪能していただきたいと考えています。しかし、どうしてもスケジュールの問題でスタジアムに駆けつけることができないこともあります。そのような時のサポーターにとっての大きな味方は、スカパー！のテレビ中継でしょう。そのスカパー！の横浜ＦＣのホームゲームの中継で、レポーターを担当しているのが浅野有香さん。昨年のＪ２日記にも書きましたが、横浜ＦＣがＪ２優勝を果たした２００６年には、J's GOALの横浜ＦＣ担当ライターもされていらっしゃいました。その浅野さんのレポートは、横浜ＦＣへの思い入れにあふれたものです。

普段の取材から浅野さんとご一緒することが多いのですが、浅野さんのすばらしいところは、とにかく丁寧で謙虚なところだと感じています。そして、チーム全体の雰囲気をうまくとらえるように努力されていると思います。浅野さんに伺うと
「サブ組やメンバー外の選手の、試合では見えない部分をとても重要視しています。（シーズン前の）ハワイ遠征中にはお留守番組の練習などにもお邪魔しました。また、ケガ明けで復帰した選手などは、ケガの時の苦悩であったりその時の心境など、試合のピッチに至るまでの心情の部分や、選手自身の人間味あふれる部分を大事にしたいと心がけています」
ということですが、画面に映っている選手の戦う姿とその背景がうまくシンクロしていくところが、すばらしい点だと思います。

レポーターが、スタジアムのサポーターと接点を持つのが勝利の時のインタビュー。横浜ＦＣもようやく勝ち星が増えてきて、ニッパツ三ツ沢球技場でホームチームの勝利インタビューが行われる機会も増えてきました。
「やはり勝利は誰もがうれしい瞬間ですので、一番は選手（ヒーロー）自身がその喜びを素直に表現できるような雰囲気を作れたら…と思っています。また、サポーターの方が、その選手からどんなコメントが聞きたいのかを考えながら、選手がお立ち台に立つまでの過程の中でのエピソードだったり、選手自身が話していたことなどがあれば、それを織り交ぜながら、その選手に合った質問を端的に投げられるように心がけています」
という話をされていますが、短い勝利インタビューの中には綿密な準備が隠されています。

２００６年のＪ２優勝を見つめていた浅野さんは、今年の横浜ＦＣを次のように見ています。
「全員が同じ方向を向いて戦っているんだな…というのを強く感じます。選手一人一人の表情からも、充実した様子が伺えますし、出る言葉も、謙虚ながらもすごく力強く、自信を持ってやっていることが伝わってきます。２００６年は、チームが着実に力をつけながら…という部分がとても印象的でした。優勝・昇格が決まるかも…というアウェイでの鳥栖戦も、スタジアムの雰囲気はもちろんのこと、起きる全てのことにワクワクしたのを覚えています。あの頃の雰囲気に似てるなぁと思うことが増えてきたような…（笑）」

さらに山口素弘監督の印象を伺うと、
「私が言うのも変ですが、とてもクレバーな方だな…と、その印象は選手時代と変わりません。何より、選手のこと、チームのことを一番に考えていらっしゃるのは強く感じますし、チームが勝てない時でも、私達取材陣に対しても変わらない穏やかさはとても印象的です」
とのこと。浅野さんの鋭い目が見る今年の横浜ＦＣは、冷静な監督の下、選手が躍動していて、上昇に向けて非常にいい雰囲気が続いていることは間違いないようです。
テレビ中継の中で、レポーターの方がレポートを入れる機会はそれほど多いわけではありません。しかし、横浜ＦＣ担当の浅野さんだけでなく、どのレポーターの方もその内容には強い思いと緻密な準備が隠されています。次に、テレビ中継でレポートを聞く機会がありましたら、どんな工夫をしているか想像してみると、より深く楽しめるのではないかと思います。

以上

2012.06.22 Reported by 松尾真一郎