おそらくは聞き覚えのある声が、半端ではない音量と頻度でスタジアム内に響くことになる。昨年まではそれを自分に向けられることが多かった秋葉勝は、その声につい反応してしまうことがないかと問われると、「『戻れ』と言われる分にはまだいいと思いますけど、『上がれ』と言われるのは困る。上がってしまったらピンチになるので」と冗談で返してきた。ただ、じつはその心配もないと言う。「去年も聞こえないフリをしてたので(笑)」
リーグ戦のちょうど折り返しとなる第21節は「JA全農山形さくらんぼサンクスマッチ」。さくらんぼが旬のこの時期に、山形は前監督である小林伸二監督の徳島を迎える。クラブではこの一戦を「山形県民応援デー」に設定し、一般の入場料を通常料金から1000円割り引くとともに多彩なイベントを用意し、積極的なプロモーション活動も行うなど、重要な一戦と位置づけている。
山形は前節、最下位・町田との対戦でスコアレスドローに終わり、3試合勝利を手にしていない。首位と勝点2差の4位はけっして悪いポジションではないが、停滞感漂うゲーム内容が続いているだけに、清水健太も「この連戦で勝点を伸ばせなかったので、何が何でも勝ちたい試合」と、この試合をターニングポイントに再加速をめざす。出場停止明けの宮阪政樹と入れ替わりで、今節は山崎雅人が出場停止。攻撃のみならず、守備でも献身的な機転と運動量を発揮してきたチームキャプテンが不在となり、また、3トップの一角が欠場することでシステム変更の可能性もある。こうした試合で結果を出すことができれば、獲得した勝点以上のものを手にすることができる。
対照的に、徳島は好調を維持している。第18節・横浜FC戦こそ逆転負けで落としたものの、その後は2連勝。しかも第15節以降、横浜FC戦をのぞく5試合はすべて無失点と安定した試合運びができている。シーズン序盤からつまずき、9試合勝利がない時期もあったが、個人戦術においてもグループ戦術においても細部まで要求する「小林メソッド」がようやく浸透してきた印象だ。まだプレーオフ圏内からは勝点11差、自動昇格圏内からも勝点14差あるが、今はそれほど遠くない距離ととらえているだろう。
前節、ホームで行われた四国ダービーでも愛媛を3-0で破り快勝した。コンパクトに保ちたい愛媛に対して縦に速いボールを多用し、ドウグラスと2トップの関係で奪った津田知宏の先制ゴールに続き、衛藤裕の素晴らしいクロスから、相手のギャップを突いてゴール前に顔を出した宮崎光平がゴール。両サイドハーフの連動した動きで追加点を奪った。多くはこの4人のユニットで攻めきるが、左サイドバックの那須川将大が攻め上がるなど、リスク管理をしながらも人数をかける場面もある。奪われたあとはサイドのスペースを使われることが多いが、遅れてもポジションに戻ることを徹底。守備のバランスを重視するため、前半は攻撃機会が少なく堅い立ち上がりが多いが、そこで失点しなければ、J2では豪華なベンチメンバーも含めて後半に相手の隙を突く。勝利への方程式を、小林監督は昨年まで率いた古巣にもあてはめてくるものと思われる。
4年間、同じ時を過ごし、そのスカウティングの徹底ぶりを知るだけに、小林監督がどこを突いてくるか、山形の選手たちは手に取るように理解している。「俺とかタツさん(石川竜也)が上がるというのもわかってるし、そこのサイドバックの裏というのはスカウティングでかなり出てると思う」と話すのは小林亮。ただし、それを警戒しすぎてもプラスの力は生まれない。「チャンスがあればそこは出るべきだし、後ろにセンターバックであったりとか、アンカーとかにしっかり埋めてもらって、バランス取ってもらって、自分はチャレンジしていきたいと思います。後ろを気にして躊躇するのは逆によくないし、中途半端なプレーにもなる。やるからには思いきり出たほうがチャンスにもなるし、守備のときはそこで攻撃の芽を潰せる可能性もあると思います」(小林亮)。徳島は加えて、石川や宮阪など攻撃の起点となる選手を抑えたり、フォワードの飛び出しをどうケアするかといった対策も施してくることが予想されるが、考えすぎることはむしろ敵将の術中にはまることになる。
昨年まで指揮した前監督を迎え撃つレアなケースに注目は高まるが、その心境を聞かれた奥野僚右監督が淡々と話す。「モンテディオ山形対徳島ヴォルティス、それのモンテディオのホームゲームということですね」。耳にした瞬間は、あまりの力みのなさに肩すかしを食らうが、周囲の期待や思い入れの皮を1枚ずつむいていった先には、目の前の試合に全力を尽くすという芯の部分だけが残る。山形にとって、この試合は「脱・小林監督」を懸けた戦いではない。いま持っている山形らしさを最大限に表現することで勝利をつかむ戦いだ。
以上
2012.06.23 Reported by 佐藤円
J’s GOALニュース
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