この第21節で、全てのチームとの対戦が一巡し、今シーズンのJ2は折り返しを迎える。ホームの横浜FCは9勝3分8敗（勝点30）で9位、アウェイ福岡は6勝8分6敗（勝点26）で12位。ともに勝ち数と負け数はほぼ同じで、後半戦での上昇のためにも勝ち越しで前半戦を締めくくりたいところだ。ゴールを奪わないと勝点3をもぎ取ることはできない。そのために両チームに求められるのは、自らのサッカーをゴールに結びつける「決めきる力」だ。

その決めきる力という意味では、横浜FCは着実に力を付けてきていると言える。前節の栃木戦の4ゴールは、それぞれが、その力の証明と言える。前節のマッチレポートで「ただただ美しい」と評された1点目のカイオのゴールを生んだのは、クリアボールを拾ってからの8本パス、そして仕上げの連続したワンタッチのパス。「自分のゴール（3点目）より1点目の優斗に出したワンツーのパスとかのほうが、チームとしては勢いが出た。相手にダメージを与えられたゴールだったと思う。素さん（山口監督）が求めるのは、相手に触らせないでゴールまで行くという攻撃。非常に良かった」と大久保哲哉が振り返るように、練習の成果が見事に出た場面だった。そして、山口監督は、その美しいゴールではなく、その他のゴールを生んだプレーの重要性を語った。

「1点目もそうだけど、3点目もあそこでジャンボ（大久保）が体を張って詰める、相手が3人にて、キーパーがいて、その中で自分1人で行く、あそこの反応はすごいし、1点目と同じぐらい価値がある。最後の4点目も、大事なのはあそこで詰めているのが何人居るかということだよね。あの場面も自陣からボールを運んでいるし、ずいぶん長い距離を走っているし、あの時間であの距離を走るというのは素晴らしい」
山口監督が掲げる「前進する保持」が、うまくゴールを生み出し、ゴールを奪い勝ってきた実績がさらにチームに勢いを与える好循環をもたらしている。
「5月からは2敗しかしていない。結果が出ているので、チームとして動き出しが早くなっている。調子というのは2ヶ月ずっといいということはないし、力がつかないとできないことだと思う。それで慢心するわけではなくて、いい意味で自信をもってやっていくことが大事だと思う」（大久保）
というように、これまでの好循環を、着実に結果に反映できるか。この福岡戦ではこの点が問われる。

横浜に乗り込む福岡は、冒頭に書いた6勝8分6敗という成績が物語るように、引き分けはJ2で最多となっており、勝ちきるという点で苦しんでいる。広く動き、裏を取るスピードがある坂田大輔と、得点力に優れた高橋泰という2トップは強力で、2トップをサポートする成岡翔、城後寿のスキルフルなプレーも含め、かみ合えば得点をもぎ取る力は持っている。それは、無得点試合が4試合のみということからもわかる。だからこそ、それを勝点3に結びつける「あと一歩」を身につけていくことが、この試合、そして後半戦の飛躍に求められることだ。前節6/17の岐阜戦でも、前田浩二監督が「守から攻の切り替えの時に、まだ休む選手がいるので、そこで相手が揃ってしまうという状況もありました」と振り返ったように、2トップが起点を作った後のサポートが遅く、結果として決定機にできなかった場面が多かった。中盤でのプレッシャーでボールを奪う守備はできているだけに、起点を作った後の人数の掛け方、スピードを改善できるかが、この試合の大きなポイントとなる。

攻撃にフォーカスを当てて書いてきたが、試合が打ち合いになるかと言えば、そう簡単ではない。大久保が「福岡は堅いサッカーの印象がある」と語るように、中盤でのプレッシャーがストロングポイントだ。ここで福岡が優位に立ち、横浜FCのポゼッションを遅らせることが出来れば、試合が膠着していくことも十分に考えられる。その意味では、月並みだが立ち上がりからの主導権争いがゲームを考える上で重要なポイントになる。そして、このカードは終盤に試合を決めるゴールが生まれることが多い。大久保はかつて福岡に在籍し愛された選手、福岡の西田剛、和田拓三はかつて横浜FCに在籍している。さらに、なんと言っても山口監督、前田監督は、横浜フリューゲルスで、様々な苦楽を共にした仲だ。それぞれに、負けられない思いを秘めて、最後のホイッスルまで意地のぶつかり合いになるだろう。この日曜日のニッパツ三ツ沢球技場は、ネットを揺らすための執念を燃やす両チームの熱い戦いが見られる。

以上


2012.06.23 Reported by 松尾真一郎