J2リーグ戦は今節がちょうど半分の節目。北九州としては6月に3試合が重なった九州内4チームのダービー「バトル オブ 九州」の前半戦の締めくくりでもある。
一連のダービーが始まる前、一際気を吐いていた選手がいた。ゴールを守る最後の砦、佐藤優也だ。練習であっても不用意なミスをした選手に対してはすかさず近寄って「集中しろ!」と大きな声で自覚を促し、練習後にはFWともコミュニケーションを図って、最後列から見える相手のウィークポイント、ストロングポイントを共有した。
佐藤を駆り立てているのは、ほぼ1カ月前、5月20日の東京V戦。完全に崩される場面が相次いで5失点を喫し、試合中に立て直すこともできなかった。「切り替えのところが大事。そのへんのところがヴェルディ戦で見えてきた。そこをやっていかないと自分たちのサッカーはできない」と佐藤。戦況を冷静に観られるポジションだからこそ、当然とも言える切り替えの意識付けや、フィールドプレーヤーとの連係にも従前以上の気持ちを込めていた。
その気迫、気概が、ファインセーブにも繋がっている。勝点1を得た第19節・栃木戦、前節・熊本戦でも佐藤の躍動が光る。もっとも個々の場面を思い返せば『神がかっていた』とでも言いたくなるが、そういうわけではなく、前へ向かう姿勢や勝負へのこだわり、11人目のフィールドプレーヤーという自覚が生んだ努力の賜物であっただろう。センターバックのキローラン木鈴は「優也さんがいるので前に上がれる」と話す。守護神へのチームの信頼は厚い。
ただ、佐藤が目に見えて分かる活躍をする試合というのは、それだけ枠を捉えるシュートを打たれているということでもある。ブロックを築いてミドルレンジから打たせるだけのようなゲームプランの中にあるチームであれば、シュートが飛ぶことは戦術上はアリかもしれない。しかし北九州はそういう戦略を持ったチームではない。マンマークで球際に厳しいディフェンスをしてリスクを減らし、奪うと前線に人数を割いて揺さぶる――。青写真はあるものの、ここ数試合は対人プレーに強さがなく、簡単にクロスを上げられてしまっていた。熊本戦ではペナルティエリア内でのマークも外され、結果として佐藤頼みの展開になった。
今節は長身FWの森島康仁や、ここまで6得点の三平和司を擁する大分を迎える。熊本戦と同じように簡単にシュートまで持ち込まれると、北九州が勝機を見出すのは、その熊本戦よりも難しいだろう。新井涼平は「(クロスを)上げられると中が強いので前で対処しておきたい。早い段階で奪えればカウンターも選択肢になる」と話し、供給源を断つ必要性に言及。三浦泰年監督は「(大分は)経験のある選手がいて、個人のスキルもある。しっかりと補強して今シーズンの目標に向かっている」と話し、北九州も「それ以上のモチベーションを持って戦わないといけない」と意気込む。強みを持つ大分の攻撃の前に、北九州は守備面で自分たちのサッカーの原点に回帰できるか。ディフェンス陣にとっては正念場となる。
もちろん攻撃面でも勝ちきるためには、さらなる点の上積みが必要だ。今節を前に三浦監督が「永遠のテーマかもしれない」と話したのは、どこまでボールを大事にし、どこでスイッチとなる楔を入れるのかの見極め。とくにこの6月は大事にしすぎてシュートまでいかなかった場面もあり、前線でボールを持ちながらも悔やまれる試合もあった。前線で保持できることそのものはチームも個人のレベルも成長してきた証左であり、一つの階段を上がったところと言える。次はスイッチのタイミング。「長い目で見ればできるようになる」(三浦監督)というそれは試合を重ねながら見出すしかない。
もっとも、だからといって目の前の試合を落としていいわけでは絶対にない。「ゴールに飛び込むかたちをもっとどんどんしていかないと。結果にもっとこだわらないと」と常盤聡。トライ&エラーにも気持ちを込めて、試合に立ち向かう。
大分は森島を軸に西弘則、村井慎二がシャドーの役を担う前線を敷くが、三平、イ・ドンミョンなど後列からも絡みやすく、どこからでも得点が狙える。ただ目下3連勝中の大分を支えているのは、連勝中無失点のディフェンスにもあるだろう。ゴールマウスの前では今季はJFL時代の北九州に一時的ながら在籍した経験を持つ清水圭介が立ちはだかる。堅守の一翼を担い、全試合に出場中だ。北九州時代に試合出場はないとはいえ、サポーターにとっては懐かしい清水と、守護神佐藤との対決にも注目したい。
成長途上にある北九州と、そこから抜け出した感もある大分。試合は大分にやや優勢かもしれない。それでも結果はいつも最後のホイッスルまでは分からない。
前節で2得点の端戸仁も意気込んだ。「セカンドや球際、そいうところがおろそかになると自分たちのサッカーも何もできない。初心に還って、基本的なところから自分たちのサッカーをしていきたい」。
前半戦最後となる今節、北九州は置き忘れた「初心」を取り戻しにいく。
以上
2012.06.23 Reported by 上田真之介
J’s GOALニュース
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