疲労困憊の谷口博之がぼやくように試合を振り返る。
「あんなの、どうやって取ればいいの?」
ボランチとして先発し、89分までプレーを続けた谷口は川崎Fのパスワークを前に、まさに為す術のなさを痛感していた。川崎Fは、谷口にそう言わしめるほどのボール支配率を実現していた。
要因はいくつかあるが、その1つは中村俊輔を襲ったアクシデントであろう。この試合を左右する選手の一人になるはずの中村俊は試合開始早々のアクシデントにより6分にはベンチに下がってしまっていた。これにより横浜FMは前線の起点をなくすこととなる。その中村俊に代わりピッチに入った森谷賢太郎が試合後に興味深い言葉を残している。森谷は筑波大学出身の二年目の選手で、川崎Fを率いる風間八宏監督のサッカーを実体験した選手。「川崎の監督が大学の時の監督で、やり方はわかっていました」と話す森谷が「(筑波)大学の時の対戦相手はこんなに辛かったのかなと、思いました」と、そう話すのである。
川崎Fは辛くも勝利した鳥栖戦の戦いを反省し、チーム作りを進めていた。たとえば井川祐輔は「取りに来る相手でも、回せないとダメだと思う。前から来る相手でも回せるようにしたい。そうやって取りに行っても無理だと思わせたい」と話している。そして実際にこの試合ではプレスにきた横浜FMの選手をいなしてパスを繋ぐことで、前線から守備をする意欲を削ぐところまでのパス回しができていた。
そうした前半について樋口靖洋監督は「前半、守備の奪いどころ、ここ数試合続いていたいい所で奪うという場面をなかなか作らせてもらえず、ほとんど川崎に主導権を握られていました」と率直に述べている。この樋口監督の言葉にあるとおり、前半は完全に川崎Fのペースだった。
だからこそ、實藤友紀はその前半を悔しがる。「前半のうちに点が欲しかったが入らない時は入らない」と。そのボール支配率に比べ、得点はおろか決定機すら作れなかった川崎Fに対し、横浜FMは前半に2度のビッグチャンスを作っている。一度は前半21分の場面。右サイドを駆け上がった小林祐三のクロスを、齋藤学がダイレクトで合わせたシーンだ。ペナルティエリア内で放たれたシュートを足で止めた西部洋平は「あまり覚えてないんですが、ディフェンスが4人くらいいて、コースを限定してくれていた」とチームメイトに感謝する。また、41分には兵藤慎剛の蹴るCKを中澤佑二がファーサイドで折り返し、これを小野裕二が合わせクロスバーに助けられるという場面もあった。一方的にボール支配率で勝りながら、場合によっては0−2で先行される可能性のある前半でもあったのである。
そうした前半を受け、迎えた横浜FMの後半について樋口監督は選手たちを褒め称えている。
「後半に関しては、どこで奪うか、プレッシャーのかけ方、あるいはどこで攻撃の起点を作るかというところで、非常に修正能力を見せてくれたと思います。結果は引分けで残念だが、修正能力という部分では、手応えを感じます」
この後半の横浜FMの修正点について、具体的には川崎Fの攻撃を作っていたボランチへの圧力を強めるということだったという。そうした戦いを徹底した後半について、たとえばドゥトラは「前半も、後半のような守備が出来ればいいと思う」と述べ評価する。しかし、前半に比べると横浜FMは決定的な場面は訪れず。対する川崎Fもボール支配率自体の高さはある程度維持しつつも前半同様に決定的な場面を作ることはできなかった。
ある程度守られてしまった後半を含め、川崎Fが試合を通して支配していた事実に代わりはない。最終ラインから中盤にかけて面白いようにパスを繋ぐ戦いを実現できていた。しかし川崎Fは、攻撃の最後の局面で横浜FMの守備ブロックを崩しきれなかった。
「ゴール前で待っている守備だったのでそこからが難しかった」と横浜FMの最終ラインについて話す矢島卓郎は、だからこそ「狭いところに突っ込んで行くのか、手前で蹴るのか」の選択が必要なのだと話す。そして、より得点の可能性を高めるためにも「狭いところで受けられるような判断と技術を磨く必要がある」と述べて練習への意欲を見せていた。
樋口監督が述べるように、この試合は横浜FMにとって今までできていた守備がうまく実現できていない戦いだった。それは横浜FMが悪いというよりも、川崎Fが良すぎたと表現するべきであろう。ただ、川崎Fはボールを支配し、パスを回しながらもシュートを打てる形に持ち込めなかった。
ひたすらボールを回され続けた横浜FMにとっては、悔しい試合展開だったはず。そして、そんな試合を0−0で終えざるを得なかった川崎Fにとっては、非常に悔しい試合結果だった。両チームにそれぞれに感じる悔しさを残し、神奈川ダービーの第一ラウンドは終わりを告げた。それぞれに収穫があり、それぞれに課題が出た、非常に評価の難しい試合だった。
以上
2012.06.24 Reported by 江藤高志
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