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【J1:第15節 浦和 vs 仙台】レポート:浦和と仙台、注目の上位対決はドロー決着も緊迫感のあるゲームだった。(12.06.24)

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浦和が勝てば勝点2差に縮まり、仙台が勝てば8差に広がったこの一戦。どちらにとっても負けると痛手となる試合だったこともあり、慎重な戦いでこう着状態に陥る時間帯が長いゲームとなった。

前半は仙台がやや優勢だった。
「元々、つないでくる印象の方が強かったし、それがなかったら蹴ってくると思っていた」と柏木陽介が語ったように、仙台は昨季までと違ってまずはボールをつなごうとするチームだ。一方の浦和は前から取りにいくことはあまりせず、自陣でブロックを作って迎え撃つのが基本線。そしてボールを奪ったら「元々、俺らはブロックを敷いてからカウンターという形」(柏木)という強力なコレクティブカウンターでゴールを狙っていく。

必然的に試合展開は仙台がボールを回して主導権を握る形となった。ただ、なかなかチャンスにはつながらなかった。手倉森誠監督が「ポゼッションからの崩しのなかで、相手の門を通すというのを意識できている」と手応えを感じたように、相手選手間の狭いエリアを通す勇気あるパスと、間でボールを受ける動きでポゼッションはできたものの、アタッキングサードで浦和の守備を崩す仕掛けが足りなかった。

対する浦和も、仙台にチャンスを作らせないという部分では狙い通りの戦いができていたが、攻撃面では思うような形が前半は作れなかった。得意のカウンターが発動できなかった大きな要因としては、仙台の守備対応が効果的だったことが挙げられる。仙台はDFラインを高く設定したものの、前からボールを奪いにいく姿勢はあまり見せなかった。2トップは基本的にパスコースを切りながら軽くプレッシャーをかける程度で、中盤の選手も積極的に浦和のDFラインに寄せていくことは少なかった。

仙台がDFラインを高く設定したのは前からプレスをかけるというよりも、浦和の5トップ(1トップ2シャドーと両ウィングバック)をゴールから遠ざけるのと同時に、中盤4枚とDF4枚のスペースをコンパクトにして、浦和が得意とする縦パスに対して網を張ってボールを奪い取る意図があったためだと思われる。実際、浦和は「ちょっと縦に入れすぎた。もっと時間を使って、相手を引き出すような回しができればよかったが、それがあまりできなかった」と永田が語ったように縦パスを入れる場面はあったが、柏木陽介、マルシオ・リシャルデスが受けようとするところで潰されていた。

「浦和は1トップ2シャドーで、ウィングバックを高い位置に置いてそこにボールを入れたがる。中盤のユニット4枚の背後にポジションを取るので、その背後のケアを2列目に求めていた。ボールが動いているうちに出先のところにスライドするというのは、今月にナビスコカップで広島と戦っていたのがいいシミュレーションになったなと思う」と手倉森監督。仙台もプラン通りの守り方ができていたため、浦和は縦パスから攻撃のスイッチを入れる必殺のパターンを出せなかった。

ところが、後半は一変して浦和が立ち上がりからチャンスを作った。開始早々、敵陣でボールを奪い返すと、マルシオがポスト直撃の惜しいシュートを見舞う。その後も速攻を仕掛けるシーンが何回か続くと、56分には高い位置でゲームを作って宇賀神友弥のクロスから梅崎司が決定的なヘッド。仙台は浦和の出足の鋭さに気圧され、後半の入りに失敗した。

ただ、その時間も長くは続かなかった。ゲームが一回落ち着いてしまうと、仙台がパスを回し、浦和が受け切るという前半同様の静かな流れに。しかも仙台は前半に比べ、門を通したり、間で受けたりする動きを見せなくなったため、ただ後ろでボールが回っているだけという閉塞感漂う時間帯が増えていった。

そんななか82分、浦和がビッグチャンスを作り出す。自陣からボールをつなぎ、縦パスを入れてサイドに振るという得意の形から山田暢久がクロスを入れると、ファーサイドに飛び出した田中達也がヘッド。ボールは見事ネットを揺らし、その瞬間スタジアムは歓喜に沸いたが、オフサイドの判定でゴールは認められなかった。対する仙台も終了間際の後半アディショナルタイム、カウンターから武藤雄樹が運び、梁勇基が決定機を迎えるも、ペナルティエリア内で切り返したところで山田暢久に止められ、チャンスを生かせなかった。

「私はプロのチームの監督で、相手もプロ。子どものサッカーではない」

試合後、語気を強めてそう話したペトロビッチ監督の言葉がこの一戦を端的に言い表している。ペトロビッチ監督は仙台のことをよく研究し、手倉森監督もまた浦和のことをよく理解していた。結果としてこう着状態の目立つ試合となったが、自分たちの長所を生かそうと試みながら相手の特徴を封じる、両チームともそういう戦い方をしようとしていたのがよく分かった。

エンターテイメントという意味では、あるいは少し物足りない内容だったのかもしれないが、動かない展開のなかでもそれぞれの思惑がぶつかる静かで緊迫感のある戦いがあった。両監督は勝利を目指しながらも、同時に絶対に負けてはいけない試合だということを念頭に置きながら戦った。チャレンジとリスクを天秤にかけ、現在置かれている状況を考え、互いに相手をリスペクトした上で戦った。それはまさに“大人のサッカー”だった。

以上

2012.06.24 Reported by 神谷正明
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