0-0で前半を折り返した神戸は、後半から森岡亮太を投入して攻撃のリズムをつかむと、58分には小川慶治朗の２試合連続ゴールで先制。新潟も後半から出場したアラン ミネイロを軸に再三に渡って神戸ゴールを脅かしたが、結局は無得点でピリオド。神戸がリーグ再開後２連勝という最高の形で、西野朗監督のホーム初勝利に花を添えた。

神戸・西野監督が「拮抗したゲームだった」と振り返るように、どちらに勝利の女神が微笑んでもおかしくない内容だった。前半、新潟は２トップのブルーノロペスとミシェウが左サイドに流れてボールを受けて何度も攻撃の起点を作ろうと試みたが、神戸のDFラインを突破することができないといった展開。神戸は大久保嘉人と吉田孝行の２トップを中心に前線から厳しいプレスを仕掛け、またボールをキープしながら優勢にゲームを進める。10分過ぎには右サイドバックの奥井諒から大久保、吉田へと流れるようなパスワークを見せたがゴールには届かず。29分にはセンターライン付近で野沢拓也が田中英雄にヒールでパスを送り、それを田中が前線の小川へスルーパスを通すなど精度の高いカウンターも披露した。だが、神戸４本、新潟３本のシュート数が示すように、前半は両チームとも相手ディフェンスを崩しきれないまま終える。

後半、両監督とも攻撃にアクセントを付けられる選手をピッチへ送り込む。神戸は吉田から技巧派の森岡亮太を、新潟は田中亜土夢からアラン ミネイロへ。新潟・柳下正明監督の「センターバックとボランチの間にスペースができている。そこを（アランが）うまく使ってくれれば相手は嫌がる」という狙い通り、後半の立ち上がりは新潟がアランのワンタッチパスで攻撃のリズムをつかむ。だが、神戸のDFラインの裏へはなかなか侵入できず。逆に、やや前掛かりになった新潟は自陣のバイタルエリアを神戸の森岡に狙われ、58分には先制点を許してしまう。
低い位置でボールを奪った神戸は、野沢を経由してバイタルエリアに走り込んだ森岡へパスをつなぐ。そして森岡はドリブルでボールを前へ運び、相手のボランチがプレッシャーに来ないのを見計らってペナルティエリア外からミドルシュート。それが猛ダッシュで前へ走り込んだ小川慶治朗の太ももに当たってシュートコースが変わり、ここまで新潟のゴールマウスを死守してきたGK東口順昭もさすがに反応できなかった。小川は「パスを受けようと思って今日一番のダッシュをしたら、ちょうど当たって…。ラッキーでした」と、２試合連続に苦笑いを浮かべた。一方、新潟の東口は「攻め込まれる場面が多かったが前半は０−０で乗り切ることができた。でも、後半は不運な感じで失点してしまった」と、やや苛立った様子で振り返った。

１点を負う新潟は77分に途中出場の平井将生が強烈なシュートを放ったもののポストに嫌われる。その跳ね返りが神戸・田中に当たってゴールへ向かったが、バーを叩くというアンラッキーもあった。アディショナルタイムには、左サイドバックの菊池直哉からアランミネイロへいいパスが入り、アランが惜しいミドルシュートを放つ場面もあった。「ただ、相手を崩すまではいっていない」と柳下監督が話すように、サイドへボールを散らしてスペースを作る、あるいはMFの2列目3列目からの飛び出しなど、崩しのアイデアや連動性に物足りなさはあった。とはいえ、まだ新監督が就任して２試合目。今後の可能性を感じさせるゲームだったと言える。
一方の神戸は「今できることは中盤をコンパクトにして、その中でハードワークしてボールを奪って…２人の関係だけでカウンターするのではなくて、そこで人がたくさん動いたカウンター」という西野監督のテーマをこの試合でほぼ体現。もちろん課題もあるが、小川や森岡ら若い選手の台頭でチームに勢いもでてきた。90分のゲームコントロールという点でも及第点と言ってもいいだろう。
神戸の小川は今日のゴールを「ラッキー」と言い、新潟の東口はそれを「不運な失点」と表現したが、今の神戸には運を引き寄せられるだけの強さがある。
強いて言えば「運・不運」を語るならば、試合終了後のアナウンスが流れるまで自分のゴールだと告げられていた森岡亮太は“幻のゴール”は「不運」だったかもしれない。試合後のミックスゾーンで、森岡は「あれは僕のゴールじゃないですか（笑）」と笑っていた。

以上

2012.06.24 Reported by 白井邦彦