「最終ラインを高く保っているから」
この言葉は、ランコ・ポポヴィッチ監督が就任してからF東京の言葉となった。
“最終ラインを高く保っているから”背後に広大なスペースが広がっている。だから、対戦相手の多くはそれを狙ってくる。
そして、C大阪もご多分にもれず、そこを突いてきた。試合後、「決定機は我々のほうが多かった」と、C大阪のセルジオ・ソアレス監督は言った。C大阪は前後半で、何度もGKとの一対一の場面を作った。前半35分に、F東京のパスミスを奪ってゴールラインの寸前までボールを届けたが、DF森重真人にクリアされてしまう。前半44分にはF東京からボールを奪うと、カウンターを仕掛けた。ゴール前でパスを受けたFW柿谷曜一朗がDFを引き付けてシュートからパスへと咄嗟に判断を変える。左サイドのスペースへと抜け出たDF高橋大輔のシュートは、GK権田修一に阻まれ、ゴールネットを揺らすことができなかった。後半の41分にも、永井龍が背後のスペースを突いて決定機を作った。しかし、ここも右足を伸ばした権田に防がれてしまう。ソアレス監督は「勝てるゲームだったが、それを逃してしまった」と、首を捻った。C大阪は攻撃のチームだ。攻撃で先手を奪っていれば、ゲームの結果は違っていただろう。守備陣も踏ん張っていたが、それができなかったことでC大阪は敗戦を喫した。
“最終ラインを高く保っているから”攻撃に人数をかけられる。
試合前日、右サイドバックでプレーした徳永悠平は、C大阪のストロングポイントである清武弘嗣と、キム・ボギョンの両サイドをウィークでもあると語った。「確かに、セレッソの中盤の両サイドはいい選手だけど、そこまで守備へと切り替わったときに追いかけてこない。サイドで数的優位を作る回数はきっと多くなる」。
まさに、その言葉どおりの展開が試合開始から待っていた。この日、F東京の両センターバックは、ピッチを斜めに横切る対角のパスを増やした。選手を飛び越えていくボールを“最終ラインを高く保っているから”高い位置にいる両サイドバックへ届けた。そこを起点にして攻めた。F東京がC大阪よりも少しだけ長い時間ボールを支配できたのはこの効果が大きかった。前節横浜Fマリノス戦は、相手の前からはめてくる守備に対して、足元のパスに終始したため、そこを抜け出すことができなかった。その反省を活かした。
「今日は足元でつなぎ過ぎず、対角のボールが多かった。セレッソの守備がマリノスに比べてはまっていなかったので飛ばしたボールに、ボランチがすばやくサポートにいくこともできていた」(F東京:MF高橋秀人)
F東京は先手を奪い、セレッソ大阪を敵陣に押し込んで主導権を握った。それによってゴール前までボールを運ぶ機会を確保した。先制点も「もっとボールを引き出してもよかった」という徳永が絡んでいる。61分に、右サイドからボールを運んでペナ角にポジションを取った田邉草民にボールを渡す。田邉はサポートに入ったMF長谷川アーリアジャスールへとボールを預けた。アーリアは左足にボールを置くと、ファーサイドを狙ってシュートを放ち鮮やかな曲線を描いたボールがネットを揺らした。さらに、76分にはFWルーカスがC大阪の最終ラインをギリギリで抜け出すと、右足でゴールを射抜いて追加点を奪った。このままF東京が逃げ切り、2−0で勝点3を獲得した。
F東京が“最終ラインを高く保っているから”C大阪が勝ってもおかしくなかった。だから“最終ラインを高く保っているから”はF東京の弱みでもあり、強みでもある。ただし、それがあるからやるべき行動を考えられる。描かれた完成図を予期する力を育み、速やかに実現していく。試合後の森重は「駄目でしょ。あんなにやられちゃ」と苦い顔をした。「もっと背後をつかれるリスクを負わないようにしたい」と言い、「ボールを保持する選手を見てラインをコントロールしないと。やることがハッキリした。それを前向きにとらえていきたい」と、次の話をする。“まだまだ”があるのは、“最終ラインを高く保っているから”というコンセプトがあるからだ。ヒヤヒヤとワクワク。次はどちらが勝るのか。そうやって未来の今を想像させてくれる。ランコ・ポポヴィッチが率いるF東京は、分かりやすい。言葉が少し姿を変えたときは、F東京のサッカーはたぶんもっと面白さが増している。「最終ラインを高く保っている“けど”」。
以上
2012.06.24 Reported by 馬場康平
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