横浜FC、福岡ともに勝点3を手中にできるチャンスはあった。横浜FCは前半のうちに2点目を取っていれば福岡を仕留めた可能性は高く、福岡は後半の大攻勢のうちチャンスをもう1つ決めれば、念願の勝点3を得ることはできたはずだった。そのような展開になったのは、90分を通して試合がハイペースになったこと。お互いにめまぐるしくチャンスが訪れた。そしてその原因はハーフタイムの横浜FC・山口素弘監督の「自滅しないように肩の力を抜いて行こう」という言葉に集約されていた。
肩の力が入っていたというのは、山口監督が試合後に「勝負球が1つ2つ早かった」と語った点。前半の福岡の守備は、前からのプレッシングも積極的に行っていたが、DFラインの間はそれほどタイトではなかった。そのため、横浜FCの武器である積極的なクサビのパスが思うように前に入る。特に、この日先発に起用された野崎陽介には面白いようにパスが渡る。しかし、その分、距離感を詰めて押し上げながら保持して崩すという、ここまで勝ちを積み重ねてきたスタイルとは異なる攻めになってしまった。それでも、前半はスペースに対する嗅覚で勝る横浜FCが福岡を上回る。そして、23分、裏のスペースに出たパスに武岡優斗が走り込むと、福岡DFがエリア内で倒してしまいPKを獲得。そのPKを落ち着いてカイオが決める。その後も、横浜FCがスペースを優位に制圧し、2点目は時間の問題かと思われた。しかし、その2点目を決めることはできず。福岡も、32分に坂田大輔が高橋泰からのスルーパスを受けて、キーパーと1対1になるが、このチャンスは決められず。前半は横浜FCが1-0で折り返す。
後半入るにあたって、横浜FCはセンターバックのペ・スンジンが怪我で交代を余儀なくされるアクシデント。八角剛史をセンターバックに下げ、佐藤謙介をボランチに入れる。仕方ない交代ではあるが、この交代が横浜FCの守備のバランスに微妙な影響を与える。前田浩二監督が「距離感をしっかり保とう。もっと連動した動きを」と伝えて送り出した福岡は、練習で取り組んでいる縦に入れるパスと、そこからのパスワークをピッチ上に表現。横浜FCが守備バランスを取り戻すのに苦労をしているのを尻目に、特に中盤でペースを握っていく。一方、横浜FCの攻撃のリズムは、前半の早さから抜けず、押し込まれた守備陣と攻撃陣の間が間延びしています。まさに、ハーフタイムに山口監督が危惧していた自滅の形に落ち込んでしまう。63分に、中里崇宏を投入し、4-3-2-1の形にしコンパクトさと中盤での支配を取り戻すことを狙うが、攻め急ぎと押し込まれた守備のアンバランスという全体の流れを変えるに至らず。そして、74分、ついに福岡のプッシュが実る。右サイドで突破した坂田大輔からのクロスを受けた高橋泰が右足で決めて同点に。その後も、アップダウンの激しい展開で、両チームともゴール一歩手前まで攻め合うが、決めきることはできず。前半は横浜FC、後半は福岡に「勝てたはず」の実感を残したまま、試合は悔しさの中、勝点1を分け合う結果となった。
横浜FCにとっては、まさに勉強になったゲームと言えるだろう。うまくボールが回るが故に、その一方で距離感を保つために、状況に応じてチームとしてペースをコントロールする必要があることを。勝負のパスをいつ見せるのか。その状況判断と駆け引きという面がチームのリズムに影響し、それが勝点を失う原因となり得るという教訓となる試合だった。その意味で、隙を見せない勝ち続けるチームに飛躍するための新たなハードルを実感した試合。山口監督が「この半分の時にこの順位は誰も予想していなかったと思いますが」と述べたように、前半戦を終えて勝点31の10位に至るまでに回復は、間違いなくチームが上位を狙う力を急激に付けたことを意味する。スカウティングが進む後半に勝ち続けるためには、隙を見せないチームになること。後半戦への大きな課題だ。
一方の福岡は、後半に相手が見せた隙をしっかり利用し、そして普段の練習で取り組んでいた縦へ入れるボールとパスワークをピッチ上に取り戻したという意味で、収穫が大きい試合だったと言える。それは前田監督の「単調な攻めではなく、しっかりと崩してフィニッシュまで持って行くという点では、迫力をもったゲーム展開を繰り広げた」という言葉からも感じられる。しかし、一方で9引き分け目と、そろそろ勝てる試合を増やしていきたいところ。その意味で、後半戦のスタートなる愛媛戦にその内容をつなげていくことが重要になる。
この試合のニッパツ三ツ沢球技場の入場者数8,436人は今季最高。スタジアムに集まったファン・サポーターに攻め合う試合を見せたのは間違いない。ハイペースのサッカーが展開されたピッチ上の熱からは、後半戦に向けた両チーム、ファン、サポーターのエネルギーは感じられるゲームだった。それが次につながることを願いたい。
以上
2012.06.25 Reported by 松尾真一郎













