これほど完全に近い形で怪物ダヴィを押さえ込み、果敢にチャンスを作り続ける岡山には、そろそろゴールがもたらされていい頃だ、と思った直後の後半34分、セットプレーから甲府の得点が決まった。セットプレーからの失点がリーグで唯一ゼロだった岡山の、今季初めての失点だ。「サッカーの神様」は厳しい、と思ったのも束の間、ゲームが神の領域で行われているわけではないことが、8分後に証明された。岡山のDF植田龍仁朗からのクロスを澤口雅彦がヘディングで中央に送り、川又堅碁がこれを決めて追いつき、同点のままゲームは終わった。
岡山にとっては今季何度目かの、スタジアムが渾然一体となったゲームだった。甲府はこれまでの4-4-2からフォーメーションを変え、アンカーに山本英臣、トップ下に崔誠根と伊東輝悦、サイドハーフに柏好文とレナト、1トップにダヴィを置いた。岡山は出場停止明けの川又堅碁が1トップに戻り、右ワイドには澤口雅彦がスタメンで入った。立ち上がりから両チームともに前からのプレッシャーを厳しく効かせ、湿度75%のピッチには、ピンと張り詰めた空気が漲っていた。
岡山にボールの出しどころが見つからなかったのは、ボランチを押さえ込もうとする甲府の中盤が機能していたせいだ。甲府のダヴィがシュートを打てなかったのは、DF竹田忠嗣を中心に動きを読んだインターセプトや複数で挟み込むなどして、徹底してダヴィの自由を奪ったせいだ。一瞬たりとも目の離せない拮抗した展開から、前半34分、まず岡山がスタジアムを湧かせた。左ワイド・田所諒からのグラウンダーのクロスを澤口がシュート。これが右に外れた直後、今度は甲府が、柏、伊東と繋いだボールをレナトが自分で持ち込んでシュートを放つ。どちらも最初の決定機を前半の終盤になってようやく迎えるほど、互いの、シュートを打たせない狙いが実行されていた。
後半開始と同時に、甲府は高崎寛之を入れて2トップにする。これまでの数戦の形に戻し、58分には堀米勇輝を入れて、攻撃の糸口をさらに広げようとする。しかし前半に勢いを掴んだ岡山が引き続き甲府の攻撃を押さえ、岡山は72分以降、石原崇兆、桑田慎一朗、中野裕太と攻撃的カードだけを送りこんで、得点を狙い続けた。公式記録によるシュート数は岡山が11本、甲府が9本。この日、初めてキャプテンマークをつけた植田龍仁朗は「勝点2を落とした」と悔しがったが、全体としてみると、スタジアムの雰囲気を含めて岡山のゲームだった。岡山のプレーは勇敢かつスマートだった。甲府にとっては、チームとしてのオプションを増やすはずが、中途半端な形で終わる痛いゲームとなってしまった。
先週金曜日の練習後、植田に警告累積のリーチが気になるかと聞いてみた。答えは飄々と「まったくないです」。植田はイエローをもらうことも甲府の強力な攻撃陣を怖がるどころか面白がっているようであった。鋭い読みと熱いプレーを発揮し続けた竹田は「任せておけ」という響きを含ませながら、「臨機応変に対応する」と話していた。最終ライン3人の集中は素晴らしく、ボランチ2人との連係も狙いどおりだった。GK中林洋次は今までよりさらに広く、ペナルティーエリア外にも対応した。このゲームでの岡山の良さを挙げていくと、プレーした全選手の名前が出てくる。影山雅永監督はリーグ戦後半を戦うにあたって、「個人のスタンダードを上げる必要がある」と話したが、全員が一段階上のパフォーマンスを発揮し、後半戦に繋げたと言えるだろう。
以上
2012.06.25 Reported by 尾原千明
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