水曜日に行われたヤマザキナビスコカップ第7節・新潟戦を、大宮は60分まで3-0とリードしながら、残り30分で4失点を重ね、悪夢の逆転負けを喫した。ベルデニック監督の大宮での初勝利は、リーグ第16節・清水戦へ持ち越しとなった。
6月11日の就任以来「守備の安定」を第一のテーマに掲げて指導してきたベルデニック監督だが、第14節・柏戦に続いて新潟戦でも4失点。守備面では成果が出ているとは言えないが、もう一つのテーマである「攻撃の改善」においては、柏戦で2得点、新潟戦で3得点と、こちらは一定の成果を見せている。要はそのバランスで、前節・広島戦のように守備にほとんどのエネルギーを費やせば、リーグ屈指の強力攻撃陣を完封することができることは分かった。しかし同時に得点機も数えるほどになってしまっては、勝ちはおぼつかない。
リーグ戦のここ4試合は3連敗の後、広島戦の1分。水曜日のJリーグ第9節でG大阪が引き分けたことで、降格圏から勝点3差に迫られた。何より勝星のない状況が続けば、新監督のサッカーに対して選手にも迷いが生じかねない。守備と攻撃のバランスを取りながら、今はとにかく結果が求められている。
一方の清水は、ここのところリーグ戦では5試合勝星がなく、一時は2位だった順位も今や8位まで下降。水曜日のカップ戦も鹿島に1-2と敗れ、調子は上向きとは言えない。リーグ2位タイ(13失点)を誇る堅守によって戦いは安定しているが、攻撃においてアグレッシブに相手を押し込む時間は長いものの、引いて守りを固める相手を崩せない試合が続いている。得点数が少ないだけでなく(16得点)、シュート数自体が少なく、リーグ戦で2桁のシュートを放った試合は5月3日の第9節までさかのぼらなければならない。
また、清水は現在5敗しているが、それらがすべてアウェイでの試合であることも興味深い。特に大宮にとっては、第12節・浦和戦、第14節・新潟戦のアウェイゲームが大きな参考になるだろう。いずれも相手をポゼッションで圧倒しながらゴールを奪えず、人数をかける割にフィニッシュに結びつかない攻撃をくり返し、相手の素早い攻守の切り替えからのカウンターに屈した。
大宮にとっては、広島戦と同じように自陣に引いて守りを固め、清水が焦れて隙を作るのを待つのが得策だが、あの日はラファエルとチョ ヨンチョルという攻撃の大事なピースをそれぞれケガと警告累積で欠いたことで、「現時点で我々が広島から勝点を奪うためには、こういう戦い方しか見出せなかった」(ベルデニック監督)という事情がある。木曜日の練習でも一部別メニューだったラファエルの出場は微妙だが、チョの復帰によって攻撃にスピードと迫力は加わるはず。ただしそのぶん、守備での貫徹度は下がるだろう。広島戦ではボランチが本職の金澤 慎を右サイドハーフに起用して守備を強化したが、清水戦ではおそらく東 慶悟がそこに入る。中央でのプレーを好む東がいかに右サイドハーフとして守備のタスクをこなし、そこからさらに攻撃に出て行けるか。大宮にとってはそこがポイントになりそうだ。
また両者は約20日前の6月9日、ヤマザキナビスコカップ第6節で対戦済みだ。当時の大宮は岡本武行GMが監督を代行し、コンパクトなゾーンディフェンスを導入して挑んだが、そのコンパクトな布陣のサイドのスペースで清水に起点を作られ後手後手となり、先制したものの3点を失って敗れた。その記憶が生々しいだけに、選手たちは「清水のやり方はかなりイメージできている」(深谷友基)と口をそろえる。
やはり警戒するのは「清水のサイド攻撃」(チョ ヨンチョル)。「サイドに振られて幅を広げられて、寄せている間に相手をスピードに乗せないようにしないと。いかに早くスライドするか」と村上和弘がいえば、深谷も「あのときは守備がまだ浸透していなかった。今はボールサイドの守備で人にしっかり付くようになっているし、うまく対応できると思う」と、カップ戦のリベンジに燃えている。
清水のやり方は一貫しているぶん、一度対戦したことがよりアドバンテージとなるのは大宮のほうだろう。確かに清水は堅守を誇るが、上記の通り攻撃には課題を抱えており、大宮が粘り強く守れば勝機も十分にある。ただし清水も大宮がそうした戦い方を仕掛けてくることは十分に予想しているはずで、大前元紀、高木俊幸を中心に大宮の守備組織を上回るサイドアタックを見せられるかどうか。ケガ明けのアレックスが復帰するほか、水曜日のカップ戦でも枝村匠馬がスタメン出場、伊藤翔ら若手も活躍しており、課題の攻撃に活性化の兆しがある。主導権は清水が握りそうだが、必ずしも有利に試合を進められるとは限らない。大宮は90分集中した守備が求められ体力的に厳しいが、攻める清水も一瞬の隙が命取りになりかねない、タフな試合になりそうだ。
最後に、大宮にとって気がかりなのは、攻撃の絶対的なエースであるラファエルに元鹿島のオリヴェイラ監督が率いるブラジルの名門ボタフォゴへの移籍の噂があることだ。清水戦にラファエルが出場するかどうかにかかわらず、それが事実となれば、大宮にとっては戦術的にも精神的にもダメージは大きい。その話題でやきもきしていたら29日午後には、長身と正確なロングフィードが武器の主力センターバックの一人、金 英權が中国リーグ移籍との情報も入ってきた(埼玉新聞モバイル版)。相次ぐ選手の移籍報道に、大宮サポーターにとっては、清水戦の勝敗とともに今後のチーム作りがどうなるのかも心配な状況。今週末の一戦は、とにかくドキドキしながら迎えることになりそうだ。
以上
2012.06.29 Reported by 芥川和久
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