「ここ何試合か入りが悪かったので、入りに重点を置いていた」
山形大在学時に特別指定選手として山形に在籍し、NDスタでのプレーは水戸時代の08年以来となる松本・塩沢勝吾が、立ち上がりからエンジンを吹かした。3分には船山貴之からのパスを受け、右角度からのシュートでコーナーキックを獲得。7分にも空中で西河翔吾と競った直後に裏へ動き出し、鐵戸裕史の縦のヘディングパスを受けて左足を振った。これもGK清水健太に防がれたが、15分にはファウルを取られたものの、玉林睦実のクロスに西河を引きずってヘディングを放つなど、松本の意気込みがピッチ上で発散された。ただし、決定機を量産していただけに、「そこで仕留めておきたいところは正直あった」(反町康治監督)というのが振り返っての正直な思いだろう。
前がかりの松本に圧された山形も徐々にボールを動かすようになるが、守備でリトリートする松本に対し、バックラインで人を十分に余らせてボールを回していた。そのため、逆に前線では収まらず、相手の攻撃を受けることとなったが、15分ほどするとアンカーの宮阪政樹がセンターバックの間に入り、小林亮、石川竜也の両サイドバックを高く上げ始めると、ここからは山形が一方的にボールを支配する。前に人数をかけることが可能になり、ブロック間も使ってサイドチェンジするようになると、22分には小林のクロスから秋葉勝がヘディングシュート、その直後にも山崎雅人選手のヘッドの落としに詰めた永田亮太選手がシュート。39分には、前回対戦でもゴールを決められている弦巻健人にあわやというシュートを浴びるが、清水が伸ばした右手でかろうじてクリア。時折カウンターを受けながらも、ボールをつなぎながら広くはないスペースで精度を少しずつ上げていき、着実に決定機を増やしていった。
ハーフタイムでいったんプレーは中断したが、後半に入って間、山形がボールを支配しながらチャンスをつくる展開に戻るまでには時間がかからなかった。そして64分、奪ったボールをいったんGK清水に戻し、右に開いた西河、小林、永田に預けてサイドチェンジ。船山祐が左サイドでキャッチし、追い越した石川が寄ってきた中島裕希の足元に入れると、中島はターンして中へ持ち出し、思い切り右足を振り抜いた。それまではGK野澤洋輔やディフェンダーを中心とする粘り強い守備を破れなかった山形が、ていねいなつなぎと中島の思い切りのいいプレーでようやく先制した。
その6分後、山形は船山祐を下げ、今週加入したばかりの林陵平をピッチへ送る。が、「3トップかなと思ったら、2トップでやってるということをあとで聞かされました。そういうちょっとしたところの伝達はチームとして徹底していかなければいけない」(小林)とピッチ内では混乱が生じていた。さらに、松本が72分に一気に3枚のカードを切った矢先、痛んだ秋葉を確認した清水がボールをタッチに出したが、松本はスローインで返球せずにそのまま攻撃を続行。サイドをえぐる鐵戸を中島が倒してプレーはいったん止まったが、直後のフリーキックからの流れで、船山貴がオーバーヘッドでシュートを放ち、これが前田和哉が上げた手に当たりPK。キッカーの船山貴が冷静に沈めて松本が同点に追いついた。
「相手に惑わされることなく、自分たちは自分たちのペースで、自分たちのプレーを続けなきゃいけない。そこで相手が関与したり、別の第三者が関与するプレーであってはいけない。そのタフさをもっと身につけていかなきゃいけないなと、今日は改めて思いました」。アクシデントに動揺し、相手に付け入る隙を与えたことを、奥野僚右監督は指摘した。首位がまたも敗れたこともあり、入れ替わりで首位に立った甲府とは勝点3差。しかし、船山祐は「離れてないのはデカいと思うんですけど、そういって俺らはもう3試合ぐらい逃しているので、そこを危機感を持ってやらないと簡単に離れちゃうと思う」と話す。ベンチ外になった選手のなかには好調を維持している選手も多く、チーム内競争は続いている。引き分けの多いこの時期は、弓を引き絞る状態にも似ている。
「勝点3取れたゲームだったと思います」と船山貴は悔しがったが、松本はまたしても昇格争いの渦中にいるチームから勝点をもぎ取ってみせた。北信越を舞台に高校総体が開催されている影響で、練習場が十分に確保できず“ジプシー状態”だが、試合終了と同時に数人が倒れ込むほどにすべてを出しきってみせた。「次のゲームは、ホームとなりますけれども、我々にとっては少しメモリアルな試合ということなので、ぜひともいいゲームをしたいなと思っています」(反町監督)。あれから1年、Jの舞台でも力強い進歩は続いている。
以上
2012.07.30 Reported by 佐藤円













