ガンバ大阪の『反撃の夏』が続いている。７月28日のヴィッセル神戸戦を皮切りに、前節、5-0で圧勝した８月18日の名古屋グランパス戦まで、２勝２分。負けなしで勝点を積み上げている。特に前節の名古屋戦は、前半途中からパスサッカーが機能し始めてペースを掴むと、38分にFWレアンドロが先制点。その5分後には、好調のFW佐藤晃大がペナルティエリア内で名古屋DF増川隆洋に倒されPKを獲得。増川にはレッドカードが提示され、それによって手にしたPKを“職人”MF遠藤保仁が決めて２−０と突き放し前半を折り返した。更に数的優位にたった後半も自慢のパスサッカーが躍動。68分に今野泰幸、70分にFW佐藤、83分に途中出場のFWパウリーニョがリズムよく得点を重ねて、今季最多得点で、しかも今季２度目の完封勝利を引き寄せた。

そんな『反撃』を後押しする原動力になっているのが攻撃の覚醒だ。
「今は、相手にとって脅威になるようなパス回しができるようになっているし、明らかに中盤からのスルーパスや、バイタルエリアで前を向けるスルーパスの回数も増えている。また、何より前線にレアンドロという武器が増えたのも大きいですしね。そういう攻撃が出来るようになっているのは守備を預かる僕らにとってもかなり心強いし、逆に守備にまわった時には『ここさえ乗り切れば』という精神的なよりどころにもなる」
こう話すのはDF今野だが、その言葉にもあるように、本来、攻撃でリズムを作り続けて来たG大阪が、その攻撃に本来の迫力を取り戻しつつあることで、チーム全体が落ち着き始め、試合の中で必要以上に慌てるシーンも減少している。実際、８月の戦いを振り返っても、３試合で積み上げた得点は10、失点は３。この失点については反省すべきところも多いが、いずれにせよ得点10が示す勢いは本物だと言っていい。松波正信監督も手応えを語っている。
「失点しても慌てることが減って来たし、得点できるという自信が、守備においても守り切れるという自信に繋がっている」

ただ、だからといって、G大阪が苦境に立たされている事実に変わりはない。前節の勝利で順位こそ１つあげたものの、未だ順位は降格圏の16位。ここを脱出するにはまだまだ勝点を積み上げなければいけないのは周知の通りだ。しかも今節対戦するのは同じ降格圏で苦しむコンサドーレ札幌。是が非でも勝点３を積み上げたい試合であることは言うまでもないだろう。
「神戸戦から、ここ４試合は心理的にも厳しい試合が続いてきた。神戸戦では元G大阪監督率いる相手との心理戦もあったし、大宮、C大阪とも残留を争う対戦という厳しさもあった。特に、ダービーは当然、特別な試合でしたしね。名古屋は近年なかなか勝てていない相手でしたし…そう考えても、かなり心身両方で厳しい試合が続いてきた中で、今節は８月を締めくくる試合ですから。ここを勝ち切らないと後半戦に影響すると考えても確実に勝点３を積み上げたい。ここ最近の札幌は、仙台や名古屋に勝つなど残留に向けての執念の感じられる戦いをみせている。自分たちのホームで僕たちに０−４で敗れた悔しさもあるだろうし、絶対に簡単な試合にはならない。改めて、全員が気を引き締め直して、勝点３への執念を燃やして戦いたい」（松波監督）

松波監督も警戒するように、確かに札幌もここ４試合、執念が伺える試合を続けている。名古屋、仙台から奪った白星は、まさに気持ちが結果に表れた試合だったと言えるだろう。また前節の神戸戦も結果的に2-4で敗れたものの、一時は0-2の状況から２点を奪って試合を振り出しに戻すなど粘り強さもみせた。その原動力になっているのが途中加入のMFハモンとFWテレの存在だ。残念ながらFWテレは前節のケガにより欠場が濃厚だが、MFハモンは今節も先発出場の可能性が高い。その展開力を思えばこそ、彼がボールに絡む回数が増えれば、イコール、ゴールチャンスも増える。G大阪としては十分な警戒が必要だろう。また今節では右膝を痛めて離脱していたMF高木純平がピッチに戻ってくる可能性も高い。キャリア、テクニックともに申し分のない彼が復帰となれば、明らかに札幌は勢いを増す。今週のトレーニングでは攻守いろいろなポジションを試したようだが、仮に攻撃的MFでの出場となればMFハモンらとの連携を築きながら前線を活性化させることだろう。余談だが、万博記念競技場は高木にとってJリーグデビューを飾った思い出の地。約2ヶ月半、ケガで離脱していた悔しさを晴らすにはまさに、絶好の舞台だ。

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2012.08.24 Reported by 高村美砂