試合後。ピッチから引き上げる神戸の選手たちに、サポーターから容赦ない罵声が飛んだ。「もっと練習しろ!」「相手はJFLやぞ!」など。J1リーグではここ2試合無得点で白星なしの神戸は、この天皇杯2回戦で悪い流れを断ち切る予定だった。だが、昨季のJFL王者・SAGAWA SHIGA FCに完敗。溜まっていたサポーターのフラストレーションは、敗戦の笛を引き金に表に溢れ出てしまった。
今日の神戸は試合開始から覇気が感じられなかった。守備ではボールホルダーへの寄せも遅く、ボールを奪われたら意地でも奪い返すような気迫もない。西野朗監督は「気持ちをしっかりとか、スタートからしっかりとか。みんな口々にはそう言いながらも、ゲームに入るとどうしても“そのうち”とか、“これくらいで”というちょっとした緩さがあり、いつの間にか大きな問題になっていた」と振り返る。苦戦はしても負けるわけはないといった楽観的な雰囲気のまま、ゲームは進んで行くことになった。
ただ、神戸の出来が悪かったという見方ができる一方で、純粋にSAGAWA SHIGA FCが強かったとも言える。西野監督も「SAGAWA SHIGA FCがいいサッカーをして、勝つべくして勝ち上がったと率直に思うし、(神戸は)完全に敗戦を認めなくてはいけないゲームだった」と言う。本来の力を出せなかった神戸と、いつも通りの力を発揮したSAGAWA SHIGA FCとの差は何だったのか。
このゲームに関して言えば、“チームの完成度の差”が一つの答えとして挙げられるのではないだろうか。
この日の神戸は、日本代表の伊野波雅彦が不在、橋本英郎と吉田孝行が練習中に筋肉系の違和感を覚えて大事を取っていた。加えて、大久保嘉人や田代有三も万全のコンディションではない。選手の底上げの意味も含めて、リーグ戦とは少し違うメンバー構成で臨んだ。とはいえ、メンバーが変わったから神戸のサッカーが貫けない、では寂しい。センターバックを伊野波&北本久仁衛のコンビから、試合から遠ざかっていたイ・グァンソン&高木和道を起用し、多少は守備面でのバランスが変わるだろうと予想はできたが、想像以上にバランスが崩れてしまったように感じる。
前半の開始早々から、SAGAWA SHIGA FCの高い位置でのプレッシングに対し、ボールの処理に苦戦する2人。11分にはバイタルエリアでSAGAWA SHIGA FCの清原翔平にボールを奪われ、ショートカウンターから嶋田正吾に先制点を許してしまう。その後もセカンドボールをことごとく拾ったSAGAWA SHIGA FCは、22分に中村竜也が拾ったボールを2列目から飛び出した嶋田へ展開するなどリズムをつかんでいく。24分には厳しいチェックを見せた清原に再びボールを奪われ、危ない場面も作られている。
その後は、相馬崇人の果敢な攻撃参加で神戸が流れを引き戻し、35分には相馬が野沢拓也とのパス交換からペナルティエリアに侵入し、中央の田中英雄に決定的なラストパスを送るシーンも。残念ながら田中のシュートは相手GKの森田耕一郎のファインセーブに阻まれるが、神戸が徐々に主導権を握り出す。そして42分。野沢の右CKからイ・グァンソンが頭で押し込み同点。なんとかゲームを振り出しに戻して前半を折り返した。
そして後半。SAGAWA SHIGA FCの中口雅史監督が「(西野監督は)後半の立ち上がりに動いてくるだろうな」と予想していた通り、神戸は前線で起点となれる大久保を投入し、間延びした陣形をテコ入れするように守備力の高いボランチの三原雅俊をピッチに送り込んだ。その狙い通り、大久保が前線でタメを作ることで野沢や相馬、朴康造らが攻撃に参加でき、明らかに前半とは違うリズムが生まれた。
だが、皮肉にも追加点を奪ったのはSAGAWA SHIGA FCだった。55分、ショートコーナーからDFの奈良輪雄大がクロスを入れ、それを清原が頭で押し込み、貴重な得点を挙げる。この一戦のために用意していたトリックプレーが見事にハマった格好だ。これで勢いに乗ったSAGAWA SHIGA FCは「全員守備、全員攻撃」というチームコンセプトをピッチで体現し、3回戦へと駒を進めることになった。
結局、球際の寄せの速さ、守備面でのカバーリング、セカンドボールへの意識など、チームとしての完成度に差があったと言わざるを得ない。中口監督の下で長年に渡って自分たちのサッカーを追求してきたSAGAWA SHIGA FCのチーム力が、神戸よりも上だったと言い換えることもできるだろう。神戸の奥井諒が試合後に残したコメントからも、その差はうかがえる。「サッカーはチームスポーツなので、もう一度チームが一つになって同じ方向を向いてやっていかないと。個人個人でいい選手が揃っていても負ける時は負ける。(リーグ戦に向けて)この1週間でチームとして同じ方向を向くということが次につながる。(逆に)それができなければ今日みたいな試合になってしまうと思う」
これで神戸の天皇杯は終わった。だが、まだまだ神戸の航海は続く。立ち止まっている時間はない。SAGAWA SHIGA FCの天皇杯での躍進を祈ると共に、神戸のこれからの進化に期待したい。
以上
2012.09.09 Reported by 白井邦彦
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