天皇杯らしい何かが起こりそうな予感をあっという間に消し去ったのは、清水の次代のエースと期待される男の一撃だった。白崎凌兵、19歳。プロ1年目で決めたハットトリックは、けっしてフロックではない。
「0-0で引っぱりながら、何か起きそうな時間をできるだけ長くしたかった」という和歌山の八木邦靖監督が立てたゲームプランは、3段階上のカテゴリーに位置する格上の清水に勝つにはこれしかないというやり方だ。しかし、そのプランはキックオフから2分も経たないうちに崩されてしまった。
一方、守備陣には実績も安定感もあるメンバー、攻撃陣には若くて活きの良いメンバーを配して天皇杯初戦に臨んだ清水。アップ中にセンターバックの平岡康裕が左太ももに違和感を感じ、急きょルーキーの犬飼智也にメンバー変更するというアクシデントがあったが、試合前のプラン通り立ち上がりから厳しい攻勢に出る。
そして、開始1分半のところで左サイドバックの李記帝が左クロスを入れると、逆サイドに抜けたボールがフリーの白崎に通る。白崎へのマークが完全に外れていたことは、まだ試合に入りきれていなかった和歌山のミスだが、白崎のシュートには文句のつけようがない。ゴール右のあまり角度のないところから右足を思い切り振り抜いた一撃は、まったく左方向に切れることなく、左ポスト際にズドンと突き刺さった。
予想以上に早く先制点が決まったことで、格上の清水にはさらに余裕が生まれ、逆に初の大舞台に挑んだ和歌山の冷静さは失われた。当然その後は完全に清水ペースとなり、個の力の差も明確にピッチ上で浮き彫りになっていく。とくに球際での競り合いは、完全に清水の選手たちが優位に立ち、和歌山がなんとかボールを奪っても、清水が切り換えの速さを生かしてすぐに奪い返すという場面も目立った。
和歌山としては、この状況をどう打開すれば良いかわからないまま時間が過ぎる中、25分には清水が高い位置でのボール奪取から素早くつないで、またも白崎が鮮やかに2点目をゲット。ここでもシュートの落ち着きと精度は見事だった。
その後は、30度を超える暑さと強い日差しの中で両者の動きが落ち、互いに少し雑になったまま前半が終了。後半も、序盤はやや動きの乏しい展開が続いたが、パスを回され続けた和歌山の選手たちに疲れが見え始めるにつれて清水のチャンスが増えていく。
そして後半23分、この日はトップ下で巧みにゲームを作った八反田康平のパスで石毛秀樹が右の裏に抜け出してクロスを入れ、これを伊藤翔が押し込んで3点目。ここは美しいつなぎと連係で完全に崩した1点だった。
後半15分には、清水ユース出身の新人・柏瀬暁がプロ初出場を果たし、33分にその柏瀬が裏に飛び出してファウルを受け、PKを獲得。これをゴトビ監督の指示でキッカーを務めた白崎が冷静に決めて(35分)、プロ初のハットトリックを達成した。
さらにアディショナルタイムには、PKを譲った柏瀬が、八反田のクロスから自力で決めてうれしいデビュー戦での初ゴール。チームとしても5-0の大勝で3回戦進出のノルマを果たした。
初めてJクラブに挑戦した和歌山にとっては、「力の差がそのままで出てしまった」(八木監督)という試合。シュートは90分で3本あったが、GK林彰洋をヒヤリとさせるような場面は作れなかった。ただ、プロとの差や、自分たちに何が足りないかを知るという意味では、「すごく良い経験になった」と選手たちも口を揃える。和歌山に帰ってその“差”をきちんと整理し、練習に生かしていくことが、JFL昇格を早めることにつながるはずだ。
先日一周忌を迎えた故・眞田雅則氏を偲んで喪章をつけながら戦った清水にとっては、元GKの眞田氏のためにも「今日は無失点で終わらせるということが非常に重要だった」(ゴトビ監督)という試合。その意味でも、試合直前に急きょメンバーが代わった中で、守備にまったく破綻を見せなかったことは大きな意味があった。
さらに、白崎をはじめとする若き攻撃陣がそれぞれ結果を出し、大きな自信をつけたことは、今後のリーグ戦にもつながる。鍋田亜人夢が前半37分に膝を痛めて負傷退場したのは心配だが、プレーメイカーの八反田も存分に持ち味を発揮してゴールに絡み、個の成長という意味でも収穫の多い一戦となった。
以上
2012.09.09 Reported by 前島芳雄
J’s GOALニュース
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