ネットが揺れたのは都合7回。J2リーグにおいて、順位でも苦しんでいる両チームの「勝つ事」への思いが、結果としてゴールの数に表れた。引き分けがない1発勝負にあって、非情なPK戦を回避して納得のいく結果を得るには、終了の笛が鳴るまでに相手より1つでも多くのゴールを奪うしかない。もちろん7つもゴールが生まれれば、お互い守備に問題があったことは明らかで、サッカーのクオリティが高かったとは決して言えないだろう。しかしゲームとしては、非常に見応えのある展開だったことは確か。J2に同期で加盟した両クラブにとって、過去のどの対戦と比較しても、歴史に深く刻まれる忘れがたい一戦となったに違いない。一方で、こうした貴重な試合を現場で目にした観客が1900人足らずに留まったのは、やはり少々残念ではある。
この試合、熊本はGKに岩丸史也、ボランチに原田拓と吉井孝輔、センターバックの1枚には福王忠世と、リーグ戦とは一部メンバーを変更。一方の岐阜もGKに野田恭平、センターバックにはキャプテンの関田寛士が戻り、ボランチでは李漢宰が先発。32節の東京V戦で結果につなげた4-1-4-1とは微妙に異なり、井上平が李とやや横並びになる4-2-3-1に近い布陣でスタートしている(結果として、ゲーム中に行徳浩二監督は1アンカーに修正したようだ)。
序盤、1週間前の北九州戦で相手ボランチにプレッシャーをかけられなかった点を修正して前からの連動した守備を意図していた熊本は、北嶋秀朗と武富孝介のチェイスやプレスバック、そして原田と吉井の中央のケアによって、ボランチを経由した攻撃の形を岐阜に作らせず、セカンドボール争いでも主導権を取って徐々にペースを握っていく。11分、北嶋からのパスに右サイドバックの市村篤司がスペースへ抜け出して鋭いクロスを中央へ送ると、これに武富が飛び込んで頭で合わせた。1−0。
残りの約80分、試合を上手くコントロールできれば、点を取りに出ていかざるを得なくなった岐阜の裏のスペースをつき、追加点を奪って突き放すという理想的な展開に持ち込める。特に原田からの大きなサイドチェンジ、またDFラインの背後を狙った北嶋、武富の斜めのランニングを生かすスルーパスも岐阜を前後左右に揺さぶるのに有効だったことを考えると、熊本は前半のうちに追加点を取っておかなくてはならなかった。しかし先制して以降、30℃を超えた気温の高さなども影響してか、24分に染矢一樹、25分には井上にボックス内でシュートを許していて、対応の緩さは前半のうちから少しずつ見え始めてもいた。
後半開始直後に岐阜がいきなり同点に追いついたのも、熊本にそうした細部の甘さがあったことが一因だろう。48分、左のコーナーキックから流れたボールをファー側のゴールエリア付近で拾った樋口寛規は、きれいなターンからそのままゴールへ向かって短いドリブル。密集の中から打ったシュートは、あっさりとゴールインし、1−1。その後、井上に替わってピッチへ入った橋本卓がスペースでボールを受けては捌き始めると、次第に流れは岐阜へ。ボールを保持されても積極的には奪いに出ず、言ってみれば回させて疲れさせ、時折起きるミスを待つようにリトリートする岐阜に対し、熊本はサポートや判断の精度が少しずつ低下。すると64分、ダニロが競ったボールを再び樋口が拾って持ち込み右足で決め、岐阜が逆転する。1−2。
後半の熊本も、決してチャンスが作れなかったわけではない。しかしセカンドハーフの45分だけで10本のシュートを放ったにも関わらず、最後の精度やゴールへの勢いを欠いたのは事実。74分に原田のFKからピッチに入ったばかりの仲間隼斗が決めて再び同点としたが、これは原田の早いリスタートの判断と正確なロングフィード、そしてシンプルに背後を狙って飛び出した仲間の思い切りの良さとシュートまで持ち込んだ技術、それらがうまく得点として結実した場面でもあった。2−2。勢いを増した熊本はその後も75分に藤本主税、81分に養父雄仁、88分大迫希、そして90分にも原田と立て続けにビッグチャンスを作ったが、ゴールは割れない。
15分ハーフの延長戦も、双方が勝負を決めるゴールを目指して攻め合った。93分、この日2点目となる武富のミドルシュートで熊本が一時逆転。3−2としたが、岐阜も2分後の95分、右からのクロスを樋口が折り返し、ダニロが決めてまたも食い下がる。これで3−3。ここまでの得点経過から見ても、まだ何かが起こる気配は十分あった。果たして延長も残り8分となった112分、この試合の最後のゴールが生まれる。決めたのは、その3分前にGK野田まで抜き去りながらポスト右へシュートを外していた大迫。「(直前の場面を外しても)まだチャンスはくると思っていた」と振り返った通り、ファーサイドまで届いた片山奨典のクロスを、ふかさずにきっちり落ち着いて、右足でまさしく突き刺した。4−3。120分の激闘の末、熊本が3回戦へ進むことが決まった。
敗れた岐阜にとっては確かに、「身体もメンタルもダメージが大きい」(行徳監督)結果だ。このところ減少傾向だった失点が増えたこと、さらにはリードした状態でのゲーム運びなど課題はあるが、2度追いついた粘り強さは、リーグ戦終盤に向けて糧となるはず。ダニロと樋口、またサイドから染矢、廣田らが絡んだ連携で崩す場面もあり、攻撃は残り10試合でもさらに良くなるだろう。
逆に熊本は、高木琢也監督が話しているように「せっかく点を取ったのに、短い時間ですぐ追いつかれる」失点の仕方は、若い選手たちが点を取ったことによるプラスの効果を半減させかねないもの。「2回追いつかれているというのはやっぱり良くないし、トーナメントだから勝てたのかもしれないけど、リーグ戦だったらそうはいかない」(高木監督)。
3回戦は現在J1で首位にいるベガルタ仙台と、3年ぶりに公式戦で対戦する。一昨年の90回大会で、優勝した鹿島とやはり3回戦で対戦した際、先制ゴールを挙げた福王は言う。「チームにとって絶対プラスになる試合。同じJ2にいて今J1のトップにいる仙台と何が違うのか、その差を感じたいし、せっかく戦う以上はピッチに立ちたい。リーグ戦にも絡んでいけるよう、毎日のトレーニングから意識していかないといけない」
自信をもって3回戦に臨むには、それまでのちょうど1ヶ月に挟むJリーグでこそ、この試合の教訓を生かし、結果を出し続けることだ。
以上
2012.09.09 Reported by 井芹貴志
J’s GOALニュース
一覧へ【第92回天皇杯 2回戦 熊本 vs 岐阜】レポート:120分の激闘。点の取り合いを制した熊本が2年ぶりに初戦を突破、J1仙台とぶつかる3回戦への切符をつかむ。(12.09.09)
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