「がっかり」だけど「失望」はしていない。でも、控えメンバー主体の東北社会人リーグ現在の2位のチームと、控え主体のJ2リーグ首位のチームが対戦して、120分戦った末に味方GKが2本も止めたのにも関わらずにPK戦の末に負ければ愚痴でも言わないと収まらない。ただ、J2首位のチームに言うのだから敬意を失わず言葉を選んでぶつけないと信頼関係が崩れてしまう。Jリーグは憂さ晴らしの対象ではないし、ヴァンフォーレ甲府は郷土の期待の星が集まっているチームなのだから。
いつもなら城福浩監督の会見後は、監督を記者が囲む“ぶら下がり”団子が出来るのだが、6月9日以来(J2第18節千葉戦)甲府は10勝4分で負けたことがなかったので久しぶりの負けで誰も団子を作ろうとは思わなかった…と思う。記者会見室を出てから誰にも邪魔されずにスタスタ歩いていく城福監督がロッカールームの前に着く頃には、ピッチで各スタンドに挨拶をしてきた甲府の選手がメインスタンド前に戻ってきていた。ベンチ外の選手も付近にいたので、このドサクサに紛れて城福監督から独占コメントを取ろうかと思って少し近づこうとしたが、城福監督の3メートル以内に入ると怒りのビームに焼かれそうな気がしたので止めた。監督のメンタルはビームを出すほどではなかったかもしれないが、敢えて聞かなくても心中はある程度察することはできたから焼け焦げるリスクを避ける決断をした。
福島戦の先発メンバーは落としすぎだったのかもしれない。「落とす」という言葉が気に入らない選手もいるかもしれないが、福島ユナイテッドも先発11人のうちレギュラーは3〜4人で、甲府は2人。お互いに慣れない11人で戦って、負けたのは甲府。2つもカテゴリーが上で、全国リーグの首位チームが何でこんなにも苦しい戦いを強いられたのか。負けた時はいくつでも理由を挙げることができるが、ざっくり言えば甲府の選手が持っている危機感が福島の選手が持っている上昇志向との勝負に負けたということではないだろうか。甲府は前半の立ち上がりから、福島が高い位置からかけてくる組織的なプレッシャーに手を焼いてビルドアップができなかった。でも、少し慣れてくるとFWの青木孝太を活かしてシュートチャンスを作れるようになった。しかし、福島が怯まず、下がらずボールを奪いにくるからセカンドボール争奪戦で甲府は有利に立てず、押し切れなかった。主導権争いではやや優位で戦っているように見えたが、ショートカウンターからポロっと失点する可能性は常にあった。福島の突破力・決定力不足に助けられた部分もあったが、甲府の選手の「絶対に勝たないといけない」という思いや危機感が焦りにつながって、急ぎ過ぎてタメを作る余裕がなかったようにも思えた。
後半の立ち上がりはハーフタイムの修正が効いたのか、シンプル且つワイドにボールを運んだ甲府。このまま開始10分以内にゴールを決められれば前半のことは忘れることもできたが、FWにボールが収まらず前線からの守備も福島のFWと比べればアリバイ程度なのは後半もほぼ同じだった。新しくチャンスを手にした選手はそれぞれ特徴を出してはいたが、途切れ途切れにちょこっとそれを感じるだけで、インパクトは薄かった。フェルナンジーニョを62分に投入してからも決定機はあったが、福島のFW久野純弥が前から掛けるプレッシャーと戻りディフェンスに甲府は最後まで苦しめられた。もちろん、久野だけでなくチームとして粘り強くボールに食らいついていたのだが、久野はその先頭を切って本当によく貢献していた。90分では勝負がつかず、延長戦に入っても久野はチームを引っ張り続けた。お互いに足がつる選手や痛む選手が続出して、甲府は一時フィールドプレーヤーが8人になり、「もうやられる…」と思ったが、守備ではものすごく頑張る福島も攻撃では決定力不足で助けてくれた。延長後半の最後に久野が左サイドをスピードを活かして突破してから中に入れたクロスを、23歳の藤本安之が決められていればヒーローになれていたがシュートは枠の外。ただ、彼は今季公式戦初出場。悔しさと同時に自信も掴んでいるはずなのでJFL昇格に向けたチームのラストスパートに貢献してくれるだろう。で、感情のジェットコースター・PK戦は甲府のGK・岡大生が福島の3人目と4人目を止めたにもかかわらず、甲府は1人目の山本英臣が外し、5人目の冨田大介が止められ、6人目の井澤惇が外して、4人目の段階で逆転したにもかかわらず敗れた。PK戦になれば戦力差はグッと縮まるのだが、城福監督が1人目と5人目に選んだ選手が決められなかったことのショックは小さくない。
「(先発メンバーもPK戦も)選んだ私の責任」と城福監督は会見で話した。つまり、J2リーグ優勝を果たして、天皇杯では叶わなかったJ1チームへの挑戦の場を自ら勝ち取るという宣言でもある。チームは2日間のオフをはさんで火曜日から次節のホーム岡山戦に向けて始動するが、チーム内競争や雰囲気はさらにシビアになるだろう。甲府をネガティブな視線で見ている人が、都合のいい事実だけをつなぎ合わせれば、「甲府はダヴィがいないければ地域リーグのチームにも勝てないのか」と言わせてしまう結果を残してしまったのだから。久野はこんなことを言っていた。「最後まで走れたのは練習の成果でもあるけど、最後は根性ですね。根性で走りました」。翌日(9日)のリーグ戦に出場予定の福島の選手数人は、バスでは帰らずに甲府から特急電車で東京に向かい、新幹線で福島に向かった。それでもコンディションはかなり厳しいだろうが、そこまでして戦いたいと思って甲府に乗り込んできた選手たち。甲府の選手はこのモチベーションを上回っていたのだろうか。城福監督が試合前日に、「この試合に賭けるモチベーションが福島の選手より低いのなら、その選手はチームのラストスパートではノーチャンス」と言っていただけに、それに該当しそうな選手は相当な覚悟で残りシーズンに挑んでいかないといけない。
袖触れ合うも、天皇杯で負けるのも何かの縁。福島がJFL入りに前進し、近い将来Jリーグの仲間になることを祈っている。「福島ユナイテッド」というチーム名は甲府で強く印象づけられたし、クラブを誇りに思う福島県民も戦前より増えたはず。そして、甲府は甲府で切り替える。週末からのホーム2連戦(岡山、鳥取)は山梨中銀スタジアムをサポーターの力で盛り上げて連勝する。圧倒的な力の差はないのだから難しい試合になることは確実だけど、天皇杯で負けて謙虚になれたことは生きてくるはず。
以上
2012.09.09 Reported by 松尾潤
J’s GOALニュース
一覧へ【第92回天皇杯 2回戦 甲府 vs 福島】レポート:悲しいけど事実。J2リーグの首位が東北社会人リーグ2位のモチベーションに負けた。この現実をどう結実させていくのか。リーグ戦残り10試合に向けて甲府は強烈な刺激をもらうの巻(12.09.09)
- 開幕特集
- 開幕招待
- 国立招待
- J.LEAGUE ALL-STAR DAZN CUP
- 熱き一枚を手に入れろ
- ベイブレードコラボ
- 明治安田のJ活
- 明治安田Jリーグ百年構想リーグ
- 2025 移籍情報
- AFCチャンピオンズリーグエリート2024/25
- AFCチャンピオンズリーグ2 2024/25
- はじめてのJリーグ
- Jリーグ×小野伸二 スマイルフットボールツアーfor a Sustainable Future supported by 明治安田
- J.LEAGUE FANTASY CARD
- NEXT GENERATION MATCH 2026
- シャレン Jリーグ社会連携
- Jリーグ気候アクション
- Jリーグ公式試合での写真・動画のSNS投稿ガイドライン
- J.LEAGUE CORPORATE SITE
テレビ放送
一覧へ明治安田J1百年構想リーグ EAST 第1節
2026年2月7日(土)13:30 Kick off
















