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【J2:第36節 山形 vs 東京V】レポート:戦術変更の山形が十中八九手にした勝利は、ラストプレーで消える。東京Vは2試合連続のアディショナルタイムの同点ゴール(12.10.01)

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「最後まで自分たちの背中を押していただいているサポーターに、今日は本当に笑顔で帰ってもらいたかった。ところが、笑顔にはいたらなかった」。冷静に話そうと務める奥野僚右監督のなかに、抑えきれない感情が見え隠れする。土壇場で追いつかれた山形にとって、この勝点1を受け止めるのはやさしいことではない。

高橋真一郎監督が指揮を執ってからの3試合で負けなし、前節・千葉戦は阿部拓馬のアディショナルタイムのゴールで勝点1をつかんだ東京Vが同じメンバーで臨んだのに対し、山形はディフェンスライン2人が新たに加わり、2節前から石川竜也を除く3人が入れ替わったことになる。しかし、変化はそうしたメンバーの入れ替えにとどまらなかった。コイントスで風上を選択する以前から、3連敗を受けたこの日の戦い方をはっきりと定めていた。トップ下でプレーしていたブランキーニョが左サイドに開き、ボランチは宮阪政樹に加えてキャプテンマークを巻いた秋葉勝が下りてはっきり2枚配置していた。人の配置でマッチアップさせることで相手のプレーの自由を奪い、阿部、アレックスの足元に送られる縦のパスを封じる一方、3ボランチのスライドが遅れ気味で相手にサイドの起点をつくられていた問題も、サイドハーフを置くことで、少なくとも数的不利をつくられることはなくなっていた。

さらに攻撃面でも、ブランキーニョを中軸にしたポゼッションスタイルから、ロングボールを多用するスタイルへと変更。「いままではずっと足元、足元という形が多かったので、そこで失ってしまうと一気にカウンターでもっていかれる場面もある。また、裏を最初に見せていけば足元も入りやすくなると思うので、最初から裏というふうに」と秋葉。フィードの精度や押し上げのタイミング、サポートの距離などは改善の余地があり、前半のシュートは4本と風上に立っていたほどの効果は見られなかった。攻撃が単調に映る時間帯もあったが、「相手に隙を与えないような攻撃の仕方というところでの距離感であったり、連係、連動を攻守ともに取り組んできました」(奥野監督)と、リスクを可能な限り排除しながら、11人全員の一体感を取り戻すことができていた。

山形がこれまでのスタイルを変化させ、大きく蹴ってきたことについて、「ヴェルディとしては、もっとパスがつながると思ったんですが、山形の長いボールとそこからの圧力によって、それができなかった」と高橋監督。東京Vにとってはやや想定していなかった展開となったが、それでも「前半は結構、意図的に裏に狙った部分もありました」(中後雅喜)と冷静に対処できていた。むしろ痛かったのは、2日前に腰を負傷していた阿部の再発。フィードに合わせて何度か裏に抜けるランニングを続けていたが、前半途中で自ら交代を要請し、後半頭から柴崎晃誠と代わることになった。

この交代で梶川諒太が左サイドへ、左サイドの飯尾一慶が前線へとスライドした理由を、高橋監督は「中盤を厚くしたかった。4-2-3-1のように、アレックスの下に飯尾を付けて、ウチのリズムをつくり出したかった」と意図を説明。中央に強力な舵取り役が加わり、両サイドバックが高い位置を取るとともに、飯尾も裏への飛び出しを発揮し始めていたが、むしろ立ち上がりは山形が立て続けにチャンスを迎えた。その後はやや落ち着いたものの、山形が自陣でブロックを作っていたこともあり、シュートは遠目からのものに限られた。

スタジアムの熱が一気に上がったのは69分。山形が、廣瀬智靖とともに山崎雅人を投入したシーンだった。負傷で7試合ぶりの出場となった山崎は、狭いバイタルでボールの受け手として果敢に潜り込み、75分には右にさばいて廣瀬のクロスと、そこに飛び込んだ石川竜也のシュートを呼び込んだ。石川のシュートは枠をそれたが、直後の76分。古巣との対決となった林陵平のくさびを、山崎が土屋征夫を背負いながら廣瀬に預けると、そこからスルーパス。林と秋葉の飛び出しがかぶってしまったが、林が和田拓也につつかれたボールをそのまま秋葉が蹴り込むと、土肥洋一の手を弾いたボールはゴールマウスに吸い込まれた。

9月最後の試合にして、初めてリードした状況を迎えた山形は、その後も2バック気味に残る東京Vのセンターバックにはボールを持たせ、コンパクトな守備で対応した。しかし、両サイドバックにやや自由が与えられた東京Vが左右への展開を増やしていくと、84分、飯尾に代わって投入された木島良輔が和田のクロスに飛び出し、GK清水健太と1対1で放ったシュートがファーポストを強襲。しかし、その直後には山崎が強烈なミドルシュートが東京Vゴールを襲い、GK土肥の好セーブに阻まれるシーンもあった。
一進一退の展開のなか、4分間のアディショナルタイムに入ると、山形は右サイドのコーナーキックやスローインで時間を使っていたが、残り1分でボールを奪った東京Vがスローインから最後の反撃。何度か山形の守備に跳ね返されながらも攻め続け、左サイドで木島が倒されてフリーキックを獲得。ボールをセットした時点では追加4分を回っていたため、これがおそらくはラストプレーになるはずだった。

「ボールは狙ったよりは全然長かったですよ。もうちょい短くて、ヘディングで合わせるボール、頭で誰かが触れるぐらいの高さでやろうと思ったんですけど、ちょっと最後、力が入った部分もありました」中後が蹴ったボールは高めの軌道をたどりながら、巻いてゴールに向かっていた。頭上で弾くことも可能だったボールを清水はキャッチしにいくが、落下地点よりも膨らんでジャンプしたこともあり、後方へファンブル。慌ててかき出そうとするが、詰めていた土屋もボレーを繰り出しながら体ごとゴールへなだれ込んだ。

「諦めずに選手が戦った結果、最後の奇跡のような形で勝点を取ることができたと思います」(高橋監督)は、2試合続けてアディショナルタイムで追いつき、勝点を拾った選手たちを讃えた。一方、3連敗後、戦術に手を加え、狙いどおりに試合を運び、ようやく手中に収めるはずだった勝点3をラストプレーで逃した山形。失ったものは大きいが、「この方向性というのは、今日の試合の内容を見てわかるように、間違ってはいないと思います。それをよりよい連係と連動になるように、トレーニングを続けていければなと、いまの段階では思っています」(奥野監督)。次につながるものも手にしている。取り戻せる場所は必ずある。そしてそれは、目の前の残り6試合にしかない。

以上

2012.10.01 Reported by 佐藤円
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