ここからは全てが決勝戦のつもりで戦っていく。浦和は27日、ホームの埼玉スタジアムでＣ大阪を迎え撃つが、永田充は「負けたら先がないというのははっきりしている」と悲壮な覚悟を固めている。

ただ、ここにきてレギュラー陣のコンディションに不安が出てきているのは気がかりだ。平川忠亮は左足のハムストリングを故障しており、別調整が続いた。踏ん張った時に痛みが出るようで、週末の試合には間に合わない可能性がある。最終ラインでビルドアップの起点となる永田も左足に違和感を覚えており、状態についてはっきりとした言葉は返ってこない。

また、柏木陽介と槙野智章が前々日の練習を途中で切り上げていたのも気になるところだ。これは疲労蓄積を考慮し、指揮官と相談の上で練習前から決まっていたとのことだが、いずれにしても体調万全というわけにはいかないということだ。特に槙野は木曜日の練習でシュートを試みた際、左ひざを痛めてそのままグラウンドを去っていたため心配だ。

もう星を１つも落とせない状況なので、どの選手もそれこそ這ってでもピッチに立つつもりで調整を続けている。野戦病院化している厳しい状態だが、今節を乗り切ることができればリーグは一旦休止となる。ここが踏ん張りどころだ。

一方、Ｃ大阪はシーズン終盤にきて調子を上げてきている。その大きな要因はやはりレヴィー クルピ監督の復権だろう。このブラジル人指揮官が戻ってきてからは４勝１分１敗といい数字が出ている。まだ気を抜くわけにはいかないが、残留争いから抜け出した感もある。

試合を見ても、クルピ監督の信条である攻撃サッカーのもとで選手たちがハツラツとプレーしている様子が伝わってくる。両サイドバックが高いポジションを取るクルピ監督おなじみのアグレッシブなスタイルを取ることで、攻撃の鍵を握る３シャドーに躍動感が戻ってきている。

苦境から這い上がってきた天才・柿谷曜一朗はオフザボールの質を上げており、守備の献身性も目立つようになっている。曲芸的なプレーが実効性を帯びてきているため、対戦相手にとっては非常にやっかいな選手に成長した。

ケンペスがチームを離れたことで前節のＦ東京戦でスタメンの座を射止めた杉本健勇も注意すべき存在だ。長身を生かして中央でドーンと構えるということはせず、裏を狙ったり、相手選手間でボールを受けようとする嫌らしいタイプ。柿谷とのコンビネーションもスムーズなので、浦和としてはこの２人に気持ちよくプレーさせるわけにはいかない。

浦和はこのところ序盤の失点が目に付く。前節の仙台戦で目立ったような軽率な守備対応も少なくない。クロスに対して中の人間がボールウォッチャーになること、特にファーサイドのケアが緩いという悪癖も顔をのぞかせている。守備陣にはよりいっそうの集中が求められる。

リードされても食らいついていけるだけの攻撃力を備えているのは心強いが、序盤でビハインドを背負えば試合の難易度は上がってしまう。得点力は追いつくためにではなく、優位な状況に持ち込むために発揮していきたい。

クルピ監督の性格からして、リードしたからといってＣ大阪が簡単に引きこもるとは考えにくいが、戦いずらい相手になるのは間違いない。浦和は負けたら先がない状況だ。ビハインドを背負ったら慌てて傷口を広げてしまう可能性もあるので、先制点は絶対に与えなくない。

首位の広島も前節つまづいたことで、浦和は首の皮一枚でつながっている状態だ。タイトルへの道のりが非常に険しくなった事実に変わりはないが、可能性が潰えたわけではない。原口元気は「広島が負けたことで望みはまだある」と最後まであきらめていない。

今、自分たちにできるのは目の前の試合を１つ１つ確実にものにしていくことだけだ。最大限の努力をして、あとは幸運の女神が微笑むのを待つ。

以上

2012.10.26 Reported by 神谷正明