新潟は勝点31で17位。15位大宮まで2差、14位神戸とは4差と降格圏脱出は十分射程距離にある。それをより確実なものにするためにも、この鳥栖戦は勝点3が必須だ。切り札になるのがルーキーのFW鈴木武蔵だ。スーパーサブとして、ゴールがほしい場面での投入が予想される。鳥栖は現在3連敗。ただ、状態は必ずしもマイナスではない。1つでも順位を上げるためにも、アウェイで連敗を止めたい。
自信は練習からプレーに表れている。25日の紅白戦、サブ組でスタートした鈴木武は途中から藤田征也と交代して主力組の右サイドハーフに入った。中盤がボールをキープすると、すぐに裏に抜け出す動きを何度も見せた。結果的にパスは通らず、持ち味のスピードを生かしてゴールに迫ることはできなかったが、「行けるタイミングはあった」。練習後、ボランチの三門雄大と、パスと動き出しのタイミングを確認。「コミュニケーションを取っておけば、試合では来ますから」。本番での実行には手応えをつかんだ。
前節大宮戦で、好感触をつかんである。後半34分に左サイドハーフで途中出場すると、その5分後には左サイドを突破してシュート。サイドネットに阻まれたが、大宮の守備を崩した。この試合が第16節鹿島戦以来、約4カ月ぶりの公式戦出場だった。7月にU-19日本代表で出場したAFC U-22選手権2013の予選で左足関節脱臼骨折を骨折。全治4カ月の重傷だった。そこから復帰した初戦で可能性を見せた。
柳下正明監督は「武蔵は常にゴールを狙おう、前に行こうとしている」と評価している。そして「私の中で、(鈴木は)『これならできる』というものがある。そういう場面が来たら使うかもしれない」。鳥栖戦での起用に前向きだ。鈴木武も「ゴール前への飛び出しを求められいると思う」と自覚がある。
新潟の総得点は23で、リーグ17位。残留は得点力アップとイコールだ。ボールを持ってすぐにトップギアに入れられる鈴木のスピードは、勝負どころで武器になる。「僕が裏を狙うと、相手も嫌だと思う。そこから点を取りたい」。6月のヤマザキナビスコカップ予選・大宮戦ではプロ入り初ゴールが決勝点になった。今度はリーグ戦初ゴールでチームを残留に近づける。
鳥栖は、3連敗中の合計失点が10と守備に不安を抱える。攻め込まれたときに後手に回る状況が続く。同時に、攻撃は3試合で4得点。爆発的ではないが、自分たちの形で得点している。
前節名古屋戦(1-3)は、前線からのプレスでボールを奪うと、スピーディーで正確なパス回しから1点を返した。現在12得点の豊田陽平を軸にした攻撃は、しぶとさがある。鳥栖のホームで行われた、前回の新潟との対戦は、終了10分前のゴールにより1-0で接戦をものにした。
3連敗の相手も広島、C大阪、名古屋。優勝、残留、ACL圏内を目指して負けられない意志を固めたチームばかりだった。結果的に黒星が続いたが、チーム状態は極端に低迷しているわけではない。一つきっかけをつかめば浮上する地力はある。
試合当日、新潟サポーターは1000人以上が結集して、スタジアム入りする選手たちを鼓舞することを計画している。勝点3を得るための何よりのバックアップがチームにはある。鳥栖も昇格初年度で、上位を目指す意地がある。
両チームの気持ちの強さは、先制点を巡った攻防、球際の競り合いに表れる。
以上
2012.10.26 Reported by 斎藤慎一郎(ニューズ・ライン)
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