J2はラスト3試合。まさにラストスパートの段階に入った。10月25日に京都が未消化の徳島戦に勝利したため、横浜FCにとっては2位までの勝点差が6に広がってしまったが、一方でプレーオフ圏内入りを虎視眈々と狙っている上昇株のクラブもある。2位の可能性を最大限追い求め、3連勝を果たし人事を尽くして天命を待つという姿勢で初めて昇格への道が開ける状態だ。今は5位にいるが、まだ何も手にしていない。横浜FCは前節も、したたかさとしぶとさという「試合における対応力」で勝点3をもぎ取ったが、これからのサバイバルゲームはやるかやられるか。対応力に加えてフルパワーで臨んでこそ、初めて勝利に近づく。

そのことを改めて認識させられるのは、この試合の対戦相手である草津と岡山の前節の対戦だ。草津は、好調をキープしプレーオフ圏内入りを狙う岡山を上回る積極性を90分間見せつけた。そして、84分のアレックス ラファエルのゴールで先制すると、得意の先行逃げ切りで勝利を収めた。岡山の影山雅永監督が「うちは決められずに、草津はそれを押し込んだ。ちょっとした運もあったが、それは草津の執念が呼び込んだものかもしれない」と草津に賛辞を送ったように、岡山も積み上げてきた堅守速攻の形を存分に見せていたが、草津の積極性はそれを上回っていた。この試合でわかることは、勢いという面で後手を踏んでしまうと、90分はあっという間に過ぎてしまい勝点を失う結果となるということだ。

その意味で、横浜FCは立ち上がりから主導権を握ることが重要になる。前節の熊本戦は、前半アディショナルタイムにクイックリスタートから抜け目なくゴールを奪い、その1点を守る展開だったが、立ち上がりから主導権を握っていたのは熊本だった。先制すれば、後半にチームとして積み重ねてきたタフさと、柔軟なフォーメーションチェンジによる対応力を見せつけることができる。しかし、問題はこのような逃げ切り態勢に持ち込むために、いかに先制するか。立ち上がりにおいてプレーの精度を高めて、確実に先制点に持ち込むことが大事になる。そして、横浜FCは最下位からの昇格を狙うチャレンジャーであることを忘れてはいけない。前回の草津との対戦（第6節＠正田スタ）は、先制されながらも永井雄一郎のヘディングシュートで山口素弘監督になって初めて勝点をもぎ取った試合。あの時に横浜FCが持っていた勝点と勝利への渇望を、同じように草津にぶつけたい。

そして、草津も前節4試合ぶりの勝利を果たしたが、出場停止と怪我で松下裕樹、熊林親吾、中村英之、そして後藤涼を欠く中、代わりに出場した選手がスムーズに試合に入り、岡山を封じ込めることに成功した。さらにシュート数も岡山の12本に対して、草津は17本と上回ることに成功。昇格という目標は失ってしまったが、残りの試合に出場した選手がフルパワーを出し、1つでも多くの結果を残すことが次に繋がることになる。前節の岡山戦の内容と結果は、そのポテンシャルがあることを十分に証明した。大事なことは、今回の横浜FC戦でそれを継続すること。草津にとってもチャレンジャー精神を継続して発揮することが求められる。

横浜FCも草津もよくオーガナイズされたチームだ。その中で、草津の金成勇、アレックス ラファエルは、裏のスペースを使うスピードに長けており、ここの応対が1つの鍵になる。裏を使われることで、ボランチとDFラインが間延びすると、草津が誇る松下、櫻田和樹のダブルボランチが余裕をもって配球できるようになる。一方の草津は、横浜FCのパスワークをいかに分断するか。最近の対戦相手はボランチへのプレスの掛け方を研究しているが、このプレスを90分間続けられるか。息切れすると、隙を見せることになる。それぞれ相手のストロングポイントを抑えつつ、早めにペースを掴みたい。

今シーズンの横浜FCは、アウェイのほうが結果が良くホームでは勝ち越せていない（ホーム：7勝4分8敗、アウェイ：12勝3分5敗）。しかし、昇格という目標が手に届くところまでたどり着いた現在、その目標への後押しをするのは「俺達の丘」三ツ沢に集うサポーターの応援だ。是非1人でも多くの方に足を運んでいただき、昇格への文字通りのサポートをお願いしたい。こういう状況に身をおける幸せを感じながら、そのポジションを絶対に無駄にしない強い意志がチーム、クラブ、サポーターにみなぎったとき、ニッパツ三ツ沢球技場にはホームの大きなパワーが宿る。その瞬間をこの試合で実現しよう。

以上

2012.10.27 Reported by 松尾真一郎