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【J1:第31節 広島 vs 札幌】レポート:エースの輝きは、紫の誇り。広島、「らしさ爆発」で完勝(12.11.08)

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ズバッ。重い楔をハンマーで打ち付けたような力強い縦パス。
森崎浩司から佐藤寿人へ。同期2人の阿吽の呼吸。「ヒサ(佐藤)はターンが巧い。足下に速いボールを出せば、相手は絶対に怖いはず」と確信した森崎浩のスピードボールは、守りに人数をかけた札幌の狭い空間を貫いた。
強くて速いボールを収めることは、決して簡単ではない。だが紫のエースの足に、ボールがピタリと吸い付く。自分の支配下にボールを置きながらの反転。その鋭さに櫛引一紀が思わず、後ろからつかむ。PKだ。

キッカーは、パスを出した7番。本来であれば、得点王レースを独走するエースに任せるところだが、ファウルを受けた時に佐藤は打撲、痛みで足を引きずる状態だった。「PKをとった選手がそのまま蹴って外すことはよくあること」と冷静に判断。
「蹴る?」
7番に聞く。
「蹴ろうか」
11番に答える。同期の2人、互いの能力に盤石の信頼を置く関係。自信を持って蹴った森崎浩の左足は、コースこそ高原寿康に読まれていたものの、それでも弾けないスピードと強さに満ちていた。

「先制点をとった後、受け身になるケースが何度もあった」と森崎和幸は言う。守備意識が強くなりゾーンを引き過ぎてしまう姿勢は、時に追いつきたいと願う相手の勢いにつながっていた。
だが、この試合では「リスク」よりも「チャレンジ」する気持ちが前に出た。後ろで回すだけでなく積極的に縦パスを入れる。森脇良太もオーバーラップを何度も仕掛け、人数をかけた攻撃を演出。その闘いぶりが札幌の攻撃意識を抑える効果も生んだ。

札幌は同点を狙うべく、前に出た。だが対戦型スポーツの場合、攻撃に出た裏には必ずカウンターのリスクが潜む。そして、その瞬間を狙って牙を研ぐハンターが、広島には存在する。
31分、札幌が広島陣内に押し込んだ。スローインを投げるのはストッパーの宮澤裕樹。彼の前には6人の選手がペナルティエリア近くにいた。リスクをかけて攻撃にに出る札幌。しかし、その目論見は森崎和幸にボールを奪われたことで崩れる。プレスをかけにいくが、高萩洋次郎の大きなサイドチェンジにかわされた。この瞬間、広島のカウンター、発動。
清水航平からパスを受けた瞬間に前を向いた青山敏弘の視界には、佐藤寿人の猛烈な動き出しが飛び込む。間髪をいれず。日本語のこんな表現が、この時の青山にはピタリとはまる。「僕がパスを出したのではなく、寿人さんにパスを引き出された」とパッサーが語るように、この瞬間にみせたエースの動きはまさに稲妻。磨きに磨き上げたホットラインの呼吸がピタリとはまれば、ベテラン河合竜二にも為す術がない。約50mのロングパスから佐藤が決めた今季21点目は、広島を勝利にグイと引き寄せた。

後半も広島は攻撃の手を緩めず、12本のシュートを放つ。札幌の必死の守りに弾かれはしたが、86分にはCKを水本裕貴がヘッドで叩き込み、勝負を決めた。札幌に隙を一切与えない、文字どおりの完勝。真ん中の守備を固める相手の思惑を真っ正面から破壊するパワフルな中央突破を見せつけ、久しぶりに「広島らしさ」全開となった夜に、広島ビッグアーチは熱狂した。

「勝ちたい気持ちと負けたくない気持ち。闘う想いには両方あるが、選手たちは『負けたくない』よりも『勝ちたい』気持ちを前に出してくれた」と森保一監督は選手を讃える。一方の札幌が「負けたくない」だったとは言わない。だが、勝利に向けて準備してきた方策を正面から破壊された後、それでも勝つために何をするべきかという方法論は見えなかった。
札幌が西川周作が守るゴールを脅かしたのは、カウンターから89分に放った大島秀夫のシュートくらい。期待を集めたルーキー・荒野拓馬も「何もできなかった」と石崎信弘監督は厳しく評価。広島サポーターからも拍手を受けて古巣相手に登場した前田俊介も、見せ場は70分のドリブルくらい。ボールがほとんど入らない状況では、その才能を発揮させる術もなかった。

仙台が引き分けたため、勝点差が2に広がった。だが森崎浩は「ウチが負けて仙台が勝てばひっくり返る。『差』といえるほどのものではない」と、周囲の喧噪を戒める。次節、多くの選手が「特別な想いがある」と語った対浦和戦(11/17@埼玉)をはじめ、頂点を極めるための関門はまたまだ続く。ただ、勝ち続ければ仙台の結果関係なく、優勝を勝ち取れる立場となったこともまた現実だ。
「優勝するためには、何だってやる」
力強く吐き出した佐藤寿人の想いは、試合に出ていない選手も含め、監督・コーチ・マネジャー・用具係・フロントスタッフも含め、そしてサポーターも含めた紫の人々、全てに共通した情熱だ。

以上

2012.11.08 Reported by 中野和也
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