「新潟が勝点3を取るには、こういう試合でないと難しいと考えていました」
ときどき正直すぎるコメントが飛び出す新潟の柳下正明監督だが、今回は選手たちを称え、メッセージを送る意味でも記者会見の冒頭でこう語った。ボールを支配したのは完全に清水だったが、狙い通りの泥臭い試合運びで結果を出したのは新潟。そうした試合内容も象徴する言葉だった。
前半は、完全に清水のゲームだった。4日前にヤマザキナビスコカップ決勝で120分の激闘を演じた清水は、そこから気持ちを立て直し、疲労を回復して自分たちの力を出せるかという部分が、この試合最大の注目点であり、不安要素でもあった。だが、その意味では選手たちが十分に期待に応えて序盤から良い動きを見せ、攻守の切り替えも早く、少ないタッチでパスをつなぎながら、完全にボールを支配。
決勝戦で出場停止だった杉山浩太が中盤の王様になり、出場停止の金賢聖の代わりにセンターフォワードに抜擢された鍋田亜人夢も、精力的な動きと確実なポストプレーで攻守に大きく貢献。コンディションの良い2人がチームを牽引したことも期待通りだった。
それに対して新潟は、清水ボールになったら前線の選手があまり深追いせずにスローダウンさせることに専念。その間に全体が素早く守備の態勢を整え、自陣でがっちりと守ろうという姿勢を見せた。
それもあって清水はDFラインからきっちりとパスをつないでいくことができたが、ゴール前にはほとんどスペースがない状態で、それをどう攻め崩すかというのが最大のポイント。これはヤマザキナビスコカップ決勝でも課題になった要素だが、この試合がどうこうというよりも、まだチームとして発展途上の部分。サイドから良い形でクロスを入れる場面や、遠めからシュートを打つ場面はいくつか作ったが、クロスは新潟の守備陣にしっかりと対応され、シュートも枠を外れるシーンが目立って、なかなか新潟ゴールをこじ開けられない。前半で本当に惜しかったのは、23分の大前元紀のシュートぐらいだった。
前半の新潟は、少し元気がないという印象すら受けたが、それはある意味狙い通り。後半勝負に向けて辛抱強く力を蓄えていた。もちろん清水側は「われわれが試合をコントロールしていた」(ゴトビ監督)と言うが、狙い通りかどうかという意味では、結果的に無失点で折り返した新潟のほうが、明らかに狙い通りだった。
ただ、清水が先制点を取れば、それでほぼ試合が決まるという雰囲気もあり、後半も新潟守備陣が一瞬も気を抜けない展開が続く。そして後半頭から投入された小林大悟(八反田康平と交代)が機能して、9分には鍋田のクロスから小林が決定的なシュートを放つが、これは右ポストに当たってゴールならず。12分にも鍋田が右からゴールライン際を突破して折り返しのパスを入れるが、大前元紀には届かず。
そうして清水が決めきれないうちに、試合を動かしたのはセットプレーだった。後半14分、新潟の右CKから中央の競り合いで上に跳ね上がったボールに、DFの石川直樹がいち早く反応して頭で押し込み、我慢のサッカーを続けていた新潟が先制点を奪うことに成功。こうした試合には起こりがちなことだが、貴重なワンチャンスを生かした力は、新潟の何としても勝ちたい、残留したいという思いから生まれたものだと感じられた。
その後は、清水が「土曜日の試合(ヤマザキナビスコカップ決勝)の延長戦と似ていて、選手たちの集中力やチームの組織が崩れていってしまった」(ゴトビ監督)という状況に陥り、逆に新潟は守備の集中力をそれまで以上に高めて、文字通り身体を張った守りを展開。清水は、切り札の高木俊幸(後半16分〜)と瀬沼優司(後半26分〜)を投入してもあまり効果を上げられず、思うようにチャンスを作れないまま試合が進む。そして5分以上あったアディショナルタイムでも攻めきれず、1-0のままタイムアップ。
新潟は15位・神戸との差を勝点2差に縮める貴重な勝点3をつかみ、清水はリーグ優勝の可能性が数字上でも消滅(残り3試合で首位と勝点10差)。どちらも最後まで死力を尽くしたことは同じだが、勝利への執念という意味では、やはり新潟が上回っていたと言わざるをえなかった。
以上
2012.11.08 Reported by 前島芳雄















