誰もが驚く突然の退任だった。前節の名古屋戦に勝利し、残留を確定した鹿島は、体調不良の選手が多かったことも考慮して3連休が与えられていた。その休み明け、来季の編成をジョルジーニョ監督と強化担当者である鈴木満常務取締役とで、話し合う予定でいたのだが、その席で突然監督の方から申し出があったという。鈴木常務も「ウソだろ」と驚いてしまったそうだ。
ただ、監督としても苦渋の決断だったようだ。鹿島で4年の現役生活を送ったが、そのときは子供たちがまだ幼かったこともあり、家族全員が日本で一緒に暮らすことができていた。しかし、98年に鹿島を離れてから14年の月日が流れた。
「僕個人の本心としては、鹿島まで最低5年くらいは指揮を執ってやっていこうという気持ちで参りました。ただ、彼らもちょうど人生の進路というか、これからどうやって歩んでいくのかを悩んでいる時期ですので、父親として彼らの近くにいて、より良い助言や教育指導をしないといけない。やむを得ない決断になりました」
そう言って退任の理由を報道陣の前で明かした。さすがにそのときは涙を見せることはなかったが、鈴木常務に退任の意向を告げた夜は、一晩中泣き、選手に説明するときも、言葉を詰まらせながらだったという。
「ホーム最終戦。サポーターに対しても、我々が示さなくてはならない勝利というものをしっかりと飾りたいですし、選手たちも、僕のリーグにおける最終戦ということで、恐らく勝って終えたいと思ってくれていると思います。僕が知っている限り、彼らはそういう選手たちです。この試合に全力を尽くしていきたいと思います」
カシマスタジアムでのリーグ最終戦は、試合終了後に監督が挨拶することが恒例となっているが、思わぬお別れの挨拶の場となってしまった。
ただ、監督は「現役のときだけでなく、監督としてもタイトルをもたらしましたが、このクラブが僕にもたらしてくれたものはそれ以上のもの。僕はまだ、それを返しきれていない」と話す。「今回はやむを得ない事情でこういう決断をせざるを得ないことになりましたが、永遠の別れではなく、またいつか、という形の別れにできればと思います」と、いつの日か戻って来ることに含みを持たせた。
監督の突然の退任は驚きをもって迎えられたが、選手はそれに動揺するような姿は見せていない。就任当初から監督の言葉に感銘を受けてきた青木剛は、「急だったので驚きました。でもサッカーの世界ではこういうこともある。しっかり勝ってシーズンを終えたいという気持ちです」と、すでに切り替えている様子だった。選手との距離感が近く、細やかな気遣いを見せてきた指揮官だっただけに、「やりやすかった」(興梠慎三)という声も多い。勝利した勢いを天皇杯に繋げていきたいところだろう。
今季、柏レイソルとは4度目の対戦となる。勝敗こそ、鹿島の1勝2分だが、いずれの試合もお互いに一歩も引かない好ゲームだった。大黒柱のレアンドロ ドミンゲスも2節前にケガから復帰し、守備陣では同じく近藤直也が戻り安定感を取り戻している。何より柏は前節の神戸戦に勝利して順位を4位にまで引き上げ、ACL出場圏内の3位鳥栖とは勝点1差に迫っている。勝たなければACL出場は夢と消えてしまうため、必勝態勢でカシマに乗り込んでくるだろう。どちらのチームにとっても、負けられない一戦となった。
以上
2012.11.30 Reported by 田中滋
J’s GOALニュース
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