90分間を通して、J加入初年の開幕戦を戦う長崎の伸びやかさが際立ったゲームだった。長崎に対する一般的な戦前の評「J2の戦力を揃えた」を得心していたつもりでも、チームとしての完成度は予想以上に高く、まとまりがあった。とはいえ、この日のメンバーの平均年齢が、岡山は24.44歳、長崎が26.18歳と、岡山の方が若く、各選手の経験値は総括するとほぼイーブンと言えただろう。そして長崎には「チャレンジ」という呪文があった。岡山も当然それを見越して、ハードワークで挑む心構えはあったのだが、ゲームを落ち着かせる前に躓いてしまった。
岡山の躓きは前半25分の失点だ。それまでの展開で、岡山が主導権を握りかけたかのように思えた時間もあった。長崎はショートパスを繋いでペナルティーエリアに入り込もうとするが、フィニッシュに至る前のミスがあった。しかし互いにはまり合う同じ3−4−3のフォーメーションの局面に、より強く挑んでいたのは長崎。岡山は徐々に中盤でボールを奪えなくなっていく。
長崎の先制点は、岡山が最終ラインに戻したボールを、前線に繋ぐ前に奪われたところから生まれた。トップの佐藤洸一がフリーになって抜け出し、GK中林洋次を交わしてゴール。佐藤はそれまで裏に抜ける動きを繰り返し、岡山のディフェンダーの先手を打つなどトップとして理想的な仕事を続けていた。
前半の鬱憤を晴らしてくれたのは、後半から投入されたMF石原崇兆だ。長崎・高木琢也監督のハーフタイムの指示のひとつが、「1対1の勝負に勝てている。これを後半も続けていく」。長崎が伸びやかにプレーする一方で、前年の攻撃の形を継承する岡山には、足りないものの方が目についた。そんな中で石原が中へと切り込み、仕掛け、前へと繋ぐことで、チーム全体の前へのパワーは強まっていった。
岡山はFW押谷祐樹、石原のミドルシュートをはじめ、69分に投入されたMF鈴木崇文のクロスバーに当たったシュートなどで長崎を脅かすが、ゴールインに至らないままゲーム終盤に突入。同様に、長崎も隙を突いた攻撃の手を緩めず、シャドーの幸野志有人は後半だけで3本のシュートを放った。しかし90分、岡山はFKから貴重な同点弾をものにする。キッカー竹田忠嗣からDF植田龍仁朗のクロスを長崎のGKの岩丸史也がパンチングし、こぼれ球をFW上條宏晃がシュート。これはバーに当たるが、その跳ね返りをFW荒田智之がヘディングで押し込んで、意地のゴールを決めた。
「あそこにいたことが素晴らしい」と岡山・影山雅永監督は荒田のゴールへの嗅覚を賛美しながら、「全員で取った点」とも話した。岡山の後半のシュートは11本だが、ゴールへと向かう新しいハーモニーはこの日、片鱗が認められるだけに留まった。昨年と同じことをなぞっているだけでは進めない。荒田智之のオフ ザ ボールの献身的な動きもまだ生かしきれていないが、「あの(失点した)時間帯に我慢出来ていれば、僕らのゲームにできたと思います。追いついたことをプラスに出来れば、次からいいプレーが出来ると思う」とGK中林洋次。リーグ戦、貴重な42分の1となる最初の試合は、岡山の意地がぎりぎりで勝点1を奪ったゲームとなった。
以上
2013.03.04 Reported by 尾原千明
J’s GOALニュース
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