息詰まるような緊張感。期待と不安。歓声とため息。様々な想いが交錯する濃密な90分間。戦いの日々がレベルファイブスタジアムに帰ってくる。昨シーズンの福岡の成績はクラブ史上最低のJ2で18位。しかし、そこから這い上がろうとするチームの姿に、ファン、サポーターは例年以上に大きな期待を寄せている。その中心にいるのが、スロベニアからやって来たマリヤン・プシュニク監督。来日してから2か月足らずでチームに大きな変化をもたらした指揮官の手腕に、ファン、サポーター、そして、福岡に関わるすべての人たちがチーム再建を託している。
選手たちも必死の思いで自分たちを変えてきた。開幕戦の東京V戦で見せた粘り強い守備と、どんな時でも前を目指す姿勢は、福岡が志向するアグレッシブなサッカーそのもの。課題は、まだまだ多いが、その姿は昨シーズンとは全く違う姿だ。プシュニク監督の指導が地面が水を吸い込んで行くように浸透していっているのも、選手たちに自分を変えようという強い意欲があるからだと言える。そして10日、福岡はレベルファイブスタジアムのサポーターの前に、2013年型アビスパの姿を現す。その姿がどんなものなのか。福岡に関わるすべての人たちが、期待に胸を膨らませて待っている。
迎える相手は山形。昨シーズンは終盤に失速して10位に終わったが、前半戦を首位で折り返し、常に昇格争いの中心にいたチーム。今シーズンこそはJ1に昇格することを目標にチームをスタートさせたが、その実力は十分にある。組織化されたサッカーは、いまや伝統とも言えるスタイルで、堅固な守備ブロックを形成して相手にチャンスを与えず、奪ったボールを、しっかりと動かしてゴールを目指す。ゴール前に壁を築くのは石井秀典とイ・ジュヨンの両CB。中盤ではロメロ・フランクが攻守のつなぎ役を果たす。攻撃の中心は右サイド。廣瀬智靖との連携からSBの山田拓巳が積極的に攻撃に絡む。中盤を自由に動いてリズムを作り出すのは伊東俊。前線では中島裕希と山崎雅人が虎視眈々とゴールを狙う。そんなチームを「攻撃はデンジャラスで、守備は組織的。非常にオーガナイズされたチーム」とプシュニク監督は評す。
その山形相手に、福岡がどんなサッカーを見せるのか。注目を集めるのはプシュニク監督の采配だ。福岡が追い求めてきたサッカーは、高い位置から、これでもかとばかりにハイプレッシャーをかけ、奪ったボールを素早く縦に運んでシンプルにゴールを目指すというもの。それがはまった時の迫力は、シーズン前の練習試合で実証済みだ。しかし、前節の東京V戦では、低く構えてブロックを形成。戦術を変えて、しかし狙い通りの形で勝利を得た。古賀正紘は「試合によっていろんな選択肢を持っている監督。あれだけ前から行く練習をしながら、試合では、すべてが前から行くわけではなかったし、しかも何の躊躇もなく戦術を変えた。まだまだいろんな引き出しを持っていると感じる」と話すが、はたして、山形戦では、どんな戦い方を見せるかが楽しみでもある。
また、そんな監督の指示に選手たちが対応できるのは、守備が安定しているからに他ならない。ボールに対してファーストディフェンダーがしっかりと寄せ、それに連動して2対1、3対1の状況を作って狙い通りに奪って行くのは去年までは見られなかった姿。そして、衰えぬ運動量は、日常のトレーニングの積み重ねの賜物だ。どんな形で戦うにしても、FWから始まる連動したチームディフェンスが戦いのベースになることは間違いない。課題はビルドアップの部分。東京V戦では、どちらかと言えば守備的に戦ったとは言え、いい形で奪ったボールを攻撃につなげられなかったのも事実。この点について、山形戦に向けて入念にトレーニングを積んできたが、それをどのような形で表現するのかにも注目したい。
そして、やはり必要なものは勝利。ホーム開幕戦は42分の1の試合であって、しかし特別な試合。誰もが待ち望んでいる試合だ。プシュニク監督は話す「試合前夜は眠れないことは間違いない。理由はプレッシャーを感じているからではない。ワクワク感で一杯で、楽しくて、楽しくて、待ち遠しいからだよ(笑)」。それは選手たちも同じだろう。雁の巣球技場では、程良い緊張感に併せて、福岡サポーターの前で自分たちの変わった姿を見せたいというポジティブなエネルギーが感じられる。
特別な試合のキックオフは10日16:00。監督、チームスタッフ、選手、そしてスタジアムに足を運ぶ全員で、勝利のためにひとつになって戦いたい。「1、2、3、アビスパ!」の掛け声とともに。
以上
2013.03.09 Reported by 中倉一志
J’s GOALニュース
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