前節土壇場でドローに持ち込んだ水戸とアウェイで勝利をつかんだ富山。その勝点2の差に両チームの現状が表れている。
昨季けが人の多さに泣いた富山だが、開幕戦ではほぼベスト布陣というメンバーで臨むことができた。昨季との違いはそのまま試合内容に如実に表れた。3−3−3−1(3-1-4-1-1?)というシステムの特徴を生かした流動的な攻撃で再三北九州ゴールに迫ったのだ。特筆すべきは2得点を両ウイングバックが上げていること。サイドからの折り返しを逆サイドのウイングバックの選手がゴール前まで走り込み、ゴールに流し込んだ。ポジションに固執することなく、自在に動けている何よりの証拠と言えよう。
また、韓国人コンビも今季の富山の強みである。昨季はMFソ・ヨンドクが孤立奮闘するシーンが多かったが、今季は新加入のU-22韓国代表MFキム・ヨングンと息の合ったコンビネーションを見せ、昨季以上の存在感を示している。ソがいるため、キムも伸び伸びプレーでき、2人のダイナミックなプレーが攻撃のアクセントとなっている。安間貴義監督が2年かけて築いたベースの上に個の上積みができているのだ。昨季19位に沈んだチームと思って試合に臨めば、水戸は痛い目に遭うだろう。
一方の水戸は「いい状態で開幕を迎えられたとは言えない」と柱谷哲二監督が言うように、苦しいスタートを迎えている。チーム始動から柱谷サッカーの肝であるボランチに据えてきた西岡謙太と木暮郁哉が負傷。木暮はプレーできてはいるものの、コンディションが万全でなく、開幕はスタメンから外れた。開幕戦で急きょ4−3−3にシステムを変更したことからもチームの苦しみがうかがえた。
今節も木暮の出場は微妙な状況。そして、「チームの頭脳」と柱谷監督が絶対的な信頼を置く西岡が不在の中でいかにチームとしてまとまって戦うことができるがチームの命運を握っている。ただ、まだ突破口を見いだせてはいないのが現状である。今週の練習でもなかなかコンビネーションが上がらず、試合2日前の紅白戦ではレギュラー組の動きが悪く、サブ組に3点を叩き込まれてしまった。歯車がかみ合っていない状態が続いている。
とはいえ、プレシーズンマッチ鹿島戦の30分以降や前節の後半を見る限り、このチームが昨季以上のポテンシャルを秘めていることは間違いない。柱谷監督も「テクニックに関しては今年のチームが上」と認めている。あとはいかにそれを引き出すことができるかだ。そのためにも柱谷監督は「個人個人が責任を持ってプレーすることが大事」と語る。「前半から意識を高く持って試合に臨んで、前節後半のようなサッカーをやらないといけない」と山村佑樹が語るように、試合開始から強い気持ちを前面に出すことが求められる。試合当日は気温が20度を超すことが予想される。急に気温が上がれば、体力的な消耗が激しくなり、集中力を保つのも難しくなる。そうした面でも個々の意識が問われるゲームとなるだろう。
水戸にとって忘れていけないのは、このゲームが「震災復興支援試合」と銘打って行われることである。翌日3月11日で東日本大震災から2年が経つこととなる。被災地のクラブである水戸として、情けない試合をするわけにはいかないのだ。「茨城県は被災地。これは絶対に忘れてはいけないこと。まだ苦しんでいる人が多くいる。だからこそ、我々は茨城を代表して前進する姿を見せなければならない。前に進んで行くサッカーを見せたい」と柱谷監督は並々ならぬ気合いを見せる。
3月11日はあくまで区切りであり、復興へはまだまだ時間がかかることは言うまでもない。「茨城の光になる」(本間幸司)ためにも、シーズン通して強く戦わなければならないのだ。「このチームをJ1に上げてみんなと喜び合いたい。そのためにもこの試合は絶対に勝たないといけない。開幕戦で勝てなかったので、富山戦をいいきっかけにしたい」。震災の被害にあった茨城を元気づけるために水戸に加入した鈴木隆行は力を込めてこう語った。
気温が高く、難しい試合になるだろう。また、チームとしてもまだ試行錯誤状態にあり、うまくいかない時間も多いはずだ。だが、苦しくなった時、選手たちにはスタンドを見上げてもらいたい。そこに戦う理由があるはずだ。何のために戦うのか。それを知るチーム、そして選手は強い。勝点3を手にし、「水戸の町とともに前進していく」という戦うスタンスを再確認することが、水戸に課されたこの試合のタスクである。
以上
2013.03.09 Reported by 佐藤拓也
J’s GOALニュース
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