先制された前半について風間八宏監督は「完全に選手が眠っていた」と表現している。少々辛口に聞こえるが、いつものようにボール支配率自体は悪くない中、それが決定的なシュートにつながらないという戦いを風間監督らしく述べていた。悪くはないが、ずば抜けて良くもないという時間帯だった前半28分に大きくサイドを振られ、1つの不運も手伝って川崎Fは先制を許す。安川有のゴールによるこの失点について、その直前に行われた負傷の井川祐輔から伊藤宏樹への交代による混乱の可能性を考えたが、それについて稲本潤一や中村憲剛が明確に否定している。
「(失点するとすれば)ああいう攻撃しかなかった」と話す稲本は、中村と共にクロスボールを上げられた場面でのアプローチが第一義的な問題だったのだと振り返る。そして、そういう意味では集中しきれていなかったのだと述べている。悪くはない試合展開の中、失点というきっかけを得て目を覚ますのは前節・柏戦と同様だったが、違っていたのはそこから失点を積み重ねることがなかったという点である。
満足できる試合内容とはならなかった前半だが、その理由の1つとして、フォーメーション上のミスマッチが起きていたと言う。大分の高松大樹と西弘則の2トップに加え、トップ下の丸谷拓也と木村祐志が並ぶ2シャドーに対し、川崎Fは中村と稲本との2枚のボランチと最終ラインの3選手の合計5選手が対応に当たった。そうした状況により「向こうの1ボランチ(宮沢正史)のところでボールをキープされ、しっかり前を向いて回される場面があった」と稲本。また中村は「向こうで余っているのが宮沢(正史)選手で、こっちは(中澤)聡太が余っていた。向こうは前半頑張ってプレスを掛けていたので、うちの後ろの3枚が向こうの2枚にうまく消されていた」と振り返る状況を作られていた。
そうした状況を改善させるべく、風間監督は後半から選手の並びを変更させる。見かけ上、3バックから4バックへと最終ラインを変更し、その結果として1人余っていた宮沢を中村がケアできるようになる。こうした戦術面の変更に加え、前半からハードワークしていた大分の足が止まった後半に川崎Fが攻勢を仕掛けるのにはそういう意味で必然性があったわけだ。
ウィングバックというよりはサイドハーフ的な役割だったと話すポジションを、後半からボランチに変えた田中裕介が、大久保嘉人にパスを出したのが53分のこと。これを大久保が落ち着いて処理してゴール。大久保によるこの移籍後初ゴールで川崎Fが大分に追いついき、流れは一気に川崎Fへと傾く。
左サイドをえぐった登里享平からのクロスが大久保を経由し實藤友紀に通ったのが58分のこと。この決定機の實藤のシュートは枠を越える。また65分には中村がペナルティーエリアのすぐ外からのシュートを枠内に蹴れなかった。73分にも小林悠のシュートがGK丹野研太のセーブに阻まれている。これら、流れの中からのチャンスに加え、後半だけで10本を数えたコーナーキックにおいて、中澤聡太や交代出場のパトリックなどが惜しいヘディングシュートを連発。逆転ゴールの可能性を強く感じさせる試合展開を見せるのである。
しかし、大分の粘りもあり、また川崎Fの決定力不足も加わり、2点目は遠かった。作ったチャンスの数に対し、1点しか奪えなかった攻撃について風間監督は「前回も言ったんですけど、一番大事な場面で、無駄な力を入れたらうまくできない」と述べ「今日ゴール前で(大久保)嘉人が見せてくれたような落ち着きを、各選手に持たせたいと思います」と締めくくっていた。つまり練習によって改善を目指すのだということである。また、そんな風間監督の言葉に応えるかのように、例えば「後半は自分たちの(フィニッシュの)質だけだった。自分も含め、別にシステムだとかパターンだとかではなく、自分の技術不足なだけだった」と悔しがる中村は、自らが外した決定機について「あれは決めないとダメです。自分がいる意味がない。こういうところで決めるために練習している訳で」と述べ、自らのここ一番でのミスを悔やみ、練習への意欲を見せていた。またこの点については稲本も「あれだけ攻めていて点が取れないのは、もっともっと練習する必要があると思います」と話している。
川崎Fにしてみれば、勝点を2つ落とすような試合だったと言える一方、大分にしてみれば悪くはない結果だった。互角に戦えていた前半に先制。一方的に押し込まれた後半に1失点し、結果として勝点1を手にした。田坂和昭監督は、F東京戦からの修正点としてボールを繋ぐという点と、速攻と遅攻の使い分けの2点を掲げており、それができた試合だったのだと評価。押し込まれた後半も「最後まで粘り強くなんとか抑えることができました」と前を向いていた。あの試合内容の結果としての勝点1は大分にとっては決して悪いものではない。
開幕戦を落としたチーム同士の対戦は1−1で終了し、共に勝点1を分け合う結果となっている。
以上
2013.03.10 Reported by 江藤高志
J’s GOALニュース
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