日付が変わる少し前に家に着いて、点けたテレビで『チューボーですよ』をやっていたので「あっ、土曜日か」と改めて思うと同時に、試合の翌日が月曜日だったJ2のスケジュール感がまだ身体に残っていることに気がついた。
C大阪をホーム・山梨中銀スタジアムに迎えた試合でも、最初の10分くらいは「これがJ1の洗礼か…」と弱気になりそうな展開だった。3度目とはいえ、J1に上がったばかりの感情は不安定。2分、杉本健勇のループパスで裏を取られて扇原貴宏にヤバイシュートを打たれてディフェンスラインが不安定になり、6分、マークには行っているけれど誰もファーストディフェンダーの役割を果たせていないボンヤリディフェンスから杉本にキープ&ドリブルを許し、最後は3人くらいで杉本をゆる〜く囲みながらも柿谷曜一朗にパスを出されて、ドーンで先制を許した甲府。
甲府の選手はサボっていたわけではないが、C大阪のようにうまい選手が揃うチーム相手にちょっとでも弱気になると、ボールに行っても後手を踏まされて回されてさらに焦るという悪循環が失点後も続いた。いわゆるガッツの空回り。ベンチ前のテクニカルエリアに出ているダークスーツ姿の城福浩監督の背中は自然発火しているんじゃないかと思うほど「怒」の雰囲気が出ていた。
ただ、失点後しばらくはパスが繋がらなかったけれど、悪い時間帯がずっと続くわけはないので1失点でしのげばチャンスは来ると思っていた。12分には左サイドから左サイドバック松橋優がファーサイドの金子昌広にクロスを合わせて決定機到来。ヘッドで合わせたシュートは不発だったけれど、この辺りから徐々に潮目が変わり始めた。相手ゴール前・バイタルエリアまではボールを運ぶことができるようになり、現時点での甲府の力は発揮できるようになった。課題は、決定機を1回でも多く作ること。結果的に前半のシュートはC大阪が7本なのに対して8本なので数字上は悪くはない。ただ、ミドルシュートを枠に飛ばすC大阪に対して甲府は浮かしてしまうことがほとんど。この差は小さくはない。
甲府が盛り返したので最初の10分間の不安とはお別れできたが、主導権を取っている時間帯に点を取らなければジムファイターの親戚のようなもの。そういう不安があったけれど、37分にウーゴが決めてくれた。ダヴィの後釜というプレッシャーの中で勤勉タイプのブラジル人は大変だったと思うが、2戦連続のゴールは自信に繋がるはず。CKがファーに流れ、そのルーズボールを柏好文が全力で奪いキープして作ったチャンスだった。柏のクロスをファーサイドのハンマーヘッド・佐々木翔が頭で叩きつけて折り返し、ウーゴが落ち着いて決めた2013年ホーム第1号ホームラン…ではなく、ゴール。柿谷に決められたときは、「勝つには2点取らないと…」と重い気分だったけれど、同点になれば気分も軽くなるし、スタジアムの雰囲気も一気に盛り上がった。
41分には佐々木のミドルシュートが逆転を期待させた。パンチの効いたグラウンダーのいいシュートだったけれど、隅を狙ったので残念ながら枠外にピューン。このボールはゴール裏のピッチ看板とピッチ看板の間、50センチくらいの狭い間は通過したけれど、7,23メートル幅のゴールに甲府のシュートはなかなか飛ばない。でも、1-1に追いついたことを良しとする前半だった。
試合開始前、C大阪サポーターが「(J1に)おかえり」コールをしてくれて、アンバサダーがいい人(森島寛晃さん)だとサポーターも優しさのある雰囲気になるのかなぁと感激した。(優しさついでに勝点3もくれないかなぁ)なんて甘いことを考えていたら、後半のC大阪は開始からシンプリシオとエジノを下げて枝村匠馬と南野拓実を投入。恐れていた、フィールドプレーヤー全員日本人システム。シンプリシオとエジノが前半にイエローカードをもらっていなければもう少し引っ張ったと思うが、結果的には交代選手がより機能したのはC大阪だった。甲府は前半の立ち上がりと違って落ち着いたリスクマネージメントができていたと思うが、金子を下げ(64分)、松橋を下げ(77分)、ウーゴを下げ(82分)ていくと、時間と共に甲府の攻撃力は低下。79分に山口螢に決められたゴールは南野拓実のシュートのポスト跳ね返りという不運もあったので、ものすごく大きな問題のあるシーンだったとは思わないが、フレッシュな選手を入れてもフレッシュさをチーム力として活かせなかった点は課題だろう。
右サイドから南野が打ったシュートを、「拓実、決めよった…」と思って斜め後ろから見ていた山口。そこから自分のところに転がってきたボールをワンタッチでシュートするのは簡単ではなかったと思うが、それをきっちり枠に飛ばした技術の勝利。シンプリシオとエジノがチームにフィットしてスペシャルな部分を出すまでにもう少し時間がかかりそうだけど、この状態でも開幕から2連勝しているのだからC大阪の可能性は大きい。後半のシュート数が甲府が1本なのに対してC大阪は9本と、フィールドプレーヤー全員日本人システムが機能している証拠。第3節以降どうフィットさせながら勝っていくのかが注目点だろう。
甲府は後半に足がつった選手が見た限りで3人はいたけれど、J1の舞台という緊張感も影響しているはず。「ある程度やれる」、「悪くない」というバッドではないけどベリーグッドではない狭間で自信は持てるけれど、勝点を手にするための何かを突き詰める戦いはしばらく続きそう。山本英臣や水野晃樹や青山直晃の復帰が待ち遠しいが、ルーキーの金子は特徴を出せているし、ウーゴは試合ごとに慣れて信頼を高めているし、サイドバック松橋の守備力も向上しているし、佐々木のボランチも悔しい経験を糧にハマりつつある。2試合で勝点は1だけど、内容と現状を見れば胸を張れる1分1敗。期待が萎むことはない。今節はミドルシュートの差が気になったが、今週1週間ミドルシュートの猛練習をして急にうまくなることはない。個の技術はシーズンを通じて改善する課題で、甲府が突き詰める点は組織としての戦い方であり、メンタルの部分では全員で戦うという一体感を高め維持すること。1-2になったとき、ゴール裏のサポーターは直ぐに歌い出した。そして、メインスタンドからはそれに合わせて手拍子が起こった。突き放されてシュンとするのではなく、スタンドも一体感で応援しているのだからまだまだやれるし、前進できる。ファン・サポーターも城福丸の乗組員として同じような考え方で船を漕いでくれている。次もホーム名古屋戦。今節は約12000人が山梨中銀スタジアムに来てくれたが、次は隣近所や学校・職場の知り合いを誘って満員にして名古屋に圧力をかけよう。
以上
2013.03.10 Reported by 松尾潤
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