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【J2:第2節 札幌 vs 栃木】レポート:劣勢を強いられた栃木が敵地で粘り強く勝点3をゲット。ホームの札幌も敗れはしたものの、今後につながる好パフォーマンスを披露した。(13.03.11)

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「本当にサッカーの試合というのは何で決まるのか、というのがやればやるほどわからなくなります」
試合後の会見で勝った栃木の松田浩監督がこのように振り返った。つまりは、ゲームの内容と結果が直接的にリンクしていない、そういう印象が強かったのだろう。

立ち上がりから両チームがともにパスをしっかりとつなぎながら戦った。安易にロングボールを蹴ることをせず、後方から狙いを持って組み立てていく。狙いの見えるゲームというのは見ていて非常に面白味があるものだ。

そのなかで主導権を得たのはホームの札幌。中盤の底でプレーする河合竜二、上里一将、そして左サイドバックの松本怜大などパスの出所が複数ある札幌に対し、栃木のほうはパウリーニョへのパスコースが消されると、ボールこそ保持するものの横パスばかりが多くなってしまい、効果的な組み立てができなくなっていく。そうして主導権が徐々に札幌へと傾いていったというわけである。

後半に入ると、そのパワーバランスはより色濃くなる。栃木は流れを変えるべく高い位置で走り回るオフェンス陣と、札幌のパスワークに押される守備陣との距離が大きく開いてしまうようになり、セカンドボールのほとんどが札幌の選手の足元へと転がっていった。50分過ぎには内村圭宏からのラストパスを受けたテレが抜け出してシュートを放ち、57分頃には左CKの流れから内村がヘッドで狙うも、これは右ポストに嫌われる。完全に札幌のペースだ。そうして後手を踏んでいくうちに栃木は運動量を落としていき、今度は中盤の守備も甘くなっていく。ボール保持者への寄せが弱まり、札幌の勢いを止められない。チームとしての連動性では完全に札幌が上回っていた。

ただし、あらためて言うまでもなく、サッカーという競技はチャンスの数やプレーの質を競うものではない。相手ゴールネットを揺らした回数が多い方が勝者となる。そしてそれを先に果たしたのが、劣勢の栃木だった。

65分、こぼれ球の拾い合いのなかから高木和正がボールを持つと、「いい感じでカズ(高木)の前にボールが転がった」のを確認した途中出場の廣瀬浩二が抜群のタイミングで、絶妙なポジションに動き出す。ボールウォッチャーになり、ラインにギャップを生んでしまった札幌DF陣の隙を突いてパスを呼び込み、冷静にシュートを流し込んでみせた。これこそがまさに、冒頭の松田監督の言葉が意味するところだろう。ゲームの展開としては札幌がほぼ押し込み、いつ得点を挙げても不思議ではない状況だった。それが、わずか一瞬の出来事で栃木がリードを奪ってしまったのである。あらためてサッカーというのは、先の読めないスポーツである。

1−0のスコアにしてしまえば、ここからは栃木のペース。今シーズンの栃木は以前よりもポゼッションの意識を高めて戦っているが、もともとは強固な守備ブロックが売りのチーム。敵地で1点をリードしたとあって、ここからは持ち前の安定した守備でゲームをコントロールしていく。ラスト10分は札幌が上原慎也を投入してパワープレーを敢行してきたが、それに対しては身長188センチの長身DF大和田真史を投入して対応。セットプレーの続く苦しい場面もあったが、最終的にはほぼ問題なく跳ね返しタイムアップの笛を聞き、今シーズンの初勝利を挙げてみせた。

あらためて総括するならば、どちらにも収穫のある試合だったと言えるだろう。栃木は相手に押し込まれながらも、僅かな隙をついて得点を挙げ、敵地で勝点3を狡猾に奪ってみせた。こうした勝ち方というのは、リーグ戦を勝ち抜く上で非常に大事なもの。後々シーズンを振り返ったときに、大きな意味を持つ一戦になり得るだろう。

一方、敗れた札幌にとってもこの試合の意味は大きいはず。チャンスをフイにして「もったいない試合」(古田寛幸)を演じてしまったが、チームとしてのパフォーマンスでは間違いなく栃木を凌駕していた。守備陣は体を張った粘り強い守備を演じたし、攻撃陣はアタッキングサードで様々なアイデアを見せた。財前恵一監督が就任してまだ2戦目だということを考えれば、十分に評価に値する試合だと言っていい。勝った栃木にも、負けた札幌にも、間違いなく今後につながるゲームだったはずである。

以上

2013.03.11 Reported by 斉藤宏則
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