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【J2:第2節 水戸 vs 富山】レポート:春の嵐の中で繰り広げられた熱戦。富山のパスサッカーを上回った水戸のしたたかさ(13.03.11)

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春らしい穏やかな気候は試合前までだった。試合直前から強風が吹き荒れ、両チームを苦しめた。春の嵐の中で行われた一戦。しかし、「ガチンコの熱のこもった試合ができた」と安間貴義監督が語るように、両チームの気迫がぶつかり合う好ゲームが繰り広げられた。

主導権を握ったのは富山だった。前半こそ徹底してDF裏にボールを入れてくる水戸の攻撃に苦しめられたが、徐々にボールを支配し、押し込む展開が続いた。風の強い悪条件の中でも中盤でスピーディーにボールを動かして水戸のプレスをかいくぐった。後半は風上に立つ富山の一方的なペースに。60分に苔口卓也を投入し、1トップから2トップに変更して水戸のDFラインに圧力をかけると、さらに勢いづいた。62分にはキム ヨングンからのクロスをファーサイドの木村勝太が折り返し、ゴール前の西川優大が合わせるものの、ゴール左へ。68分には右スローインからゴール前に侵入した朝日大輔が強烈なグラウンダーシュートを放つも、本間幸司が片手ではじき出す。さらに77分、最後尾からのフィードのボールを受けて飛び出した苔口がシュートを放つが、これも本間が止めてみせた。

「正直、悲観するような内容ではなかった」。そう安間監督が振り返るように、富山は敗れはしたものの、チーム始動から準備してきたサッカーを存分に発揮することができていた。しかし、富山のサッカーを上回ったのが、水戸の「したたかさ」であった。開幕直前に西岡謙太と木暮郁哉が負傷。今節は木暮が復帰したものの、今度は試合前日に小澤司が負傷して欠場を余儀なくされるという事態に。度重なるアクシデントに見舞われる中で迎えた一戦。「今日はシンプルにサッカーをすることを心がけました。風もありましたし、出ている選手の特徴を生かした判断をした」と橋本晃司が言うように、水戸の目指すポゼッションサッカーではなく、富山の弱点である3バックの背後を徹底的に突くというサッカーを貫いた。

しかし、縦1本にならなかったことが水戸の「したたかさ」であった。序盤からシンプルにDF裏にボールを入れて、富山のDFを下げようとした。富山も粘り強く「縦」のボールには対応してきたものの、「横の動きを入れれば、崩れると思った」(橋本)。24分、水戸はそれまでの「縦」から「横」の動きを加えた。サイドチェンジを繰り返し、そして右サイドの橋本から左サイドの尾本敬へ。それまで富山は「縦」を強く意識していただけに、大きく横に揺さぶられたことで「横」のコンパクトを失った。その隙を水戸は突いた。尾本がゴール前に対角線のフィード。それに富山のDFラインは対応しきれず、ボールを受けた鈴木隆行が冷静にゴールに流し込み、先制点を奪ったのだ。チャンスの回数は少なかったものの、「縦」「横」「斜め」のパスを織り交ぜて、富山の守備を崩して決めたゴール。「勝負強さ」という水戸の成長を垣間見ることができた得点であった。

後半は富山の反撃を食らうこととなったが、「ズルズル引くことなく、後ろのカバーリングを意識しながらプレーした」と細川淳矢が語るように、高いDFラインを保ち、コンパクトに守備陣形を整えた。富山にサイドからチャンスを作られはしたものの、「最後のところで守ればいいと思っていた」(細川)水戸はゴール前で集中力高い守備で富山に決定打を出させることなく、勝利を手にした。

今季初勝利を飾った水戸。前半途中に風向きが変わったことにより90分の多くを風下で戦わざるを得ず、さらにけが人が相次ぐという苦しい状況下で勝点3を手にしたことに大きな価値がある。「いい状態で開幕を迎えられたわけではない」(柱谷哲二監督)にも関わらず、開幕2戦で勝点4を獲得できたことに対し、柱谷監督は「合格点を与えたい」と納得した表情を見せた。決して悪くないスタートを切ったと言えるだろう。

とはいえ、「内容は伴っていない。手ごたえはない」と鈴木隆が言うように、満足するには程遠い状態であることは言うまでもない。「したたかさ」だけでは、「J1昇格」という目標を達成することはできない。「けが人が戻ってくるまでは我慢の戦いが続く」と柱谷監督は言うように、今後も同様の戦いが続くことが予想される。その中でいかに内容を向上させられるかが水戸の命運を握っている。「したたかさ」と「内容」の両輪がそろったとき、「J1昇格」の現実味は帯びてくる。

以上

2013.03.11 Reported by 佐藤拓也
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