ともに開幕戦からの課題を抱えて臨んだ２節。その修正という面では双方に進歩が見られたゲームだが、結果として勝利に結びつけたのは千葉。敗れた熊本は２連敗と苦しい状況になった。

立ち上がりから千葉が押し込んだのは、ジャイールと米倉恒貴の両サイドが高い位置に残る形を取ったことが関係しているだろう。熊本は「人につくのかスペースを守るのか、ちょっと判断が遅れた」（片山奨典）ためにラインを押し上げられず、中盤に大きなスペースが生まれた。ここにトップのケンペスが落ちたり、「前節のあとにもっとボールに触るように監督から言われていた」という谷澤達也が頻繁に顔を出してフリーでボールを受けてはターンしたりと、千葉の流動的な動きに熊本の守備陣はアジャストしきれず、また間合いを詰めるのが序盤から遅れてしまう。10分に許した千葉の先制点は、ケンペスの左足シュートが吉井孝輔に当たってコースが変わるというアンラッキーなものだったが、中盤でボールを持った佐藤勇人を囲みながらボールを取りきれず、センターバックの高橋祐太郎が引っ張り出されてケンペスをフリーにしてしまった。

全体的に下がっているため、熊本はボールを奪ってもゴールまでが遠い。加えて選手間の距離が悪くサポートも遅れ気味で、攻撃に転じた1本目のパスがなかなか通らない。こうしてゲームの中で細かいミスやズレが積み重なったこともあってか、相手を背負っていない状態で受けてもダイレクトで落としたり、間を通せそうな場面でも横にはたいたりと、プレーの選択肢から「前につける」チョイスが次第に減っていく。狙いとしていた千葉サイドバックの裏のスペースを突こうにも、攻撃のスピードが上がらずブロックを整える時間的な余裕を与えてしまう展開となった前半を終えると、ロッカーへ引き上げる選手たちにゴール裏の一角からはブーイングが飛んだ。
「全体で行ける時は行こう」というのが、吉田靖監督のハーフタイムコメントの１つめの指示だ。これによって両サイドからの積極的な仕掛け、またサイドバックが前のMFを追い越す形からアタッキングサードまで持ち込む回数は増え、ファビオが入って以降、少しずつ熊本が流れを引き寄せ始めたのも確か。だがそこから先が単調で、ゴール前をしっかり閉じた千葉に怖さを与えるには至らなかった。加えて、たとえば左からのクロスを受けた55分の齊藤和樹のシュート、また齋藤が粘ってつなぎファビオのシュートの跳ね返りに五領淳樹が詰めた62分など、決定機を逸した場面ではゴール前の判断で落ち着きを欠いている。

一方の千葉は、押し込まれる時間帯を耐えながら追加点の機会をうかがっていた。流れが変わったのは63分にジャイールに替えてナム スンウを投入してからだ。トップ下にいた谷澤が左へ出て、ナムはケンペスとの距離を意識しながらサポート。スローインからの流れで、佐藤健太郎からの縦パスをワンタッチで流して米倉のゴールに結んだ69分、さらに佐藤勇のフィードに競り勝ったケンペスの落としを再びつないだ75分の３点目と、いずれもナムのラストパスから生まれているが、テンポの良いパス交換とそれを可能にする選手同士の連動した動きは特筆すべきものだった。

だが鈴木淳監督も試合後に振り返っているように、２得点を挙げた後半も内容としては決して良くはなかった千葉。「押し込まれた時間帯でも、つないで自分たちで時間を作れるようにしたい」と山口智も話しているが、この試合でも見られたムラを消しながら、一つひとつのプレーのクオリティをさらに高めることで、試合運びをより盤石なものにしていきたい。

熊本にとっては、相手より多くのシュートを放ちながらゴールを割れなかった攻撃面もさることながら、失点の数とその形が大きな問題として浮かび上がっている。セカンドボールへのカバーリングや、斜めまたは横の動きで入ってくる相手選手の受け渡しがうまくできずにバイタルエリアを崩されたかっこうで、守備的MFとセンターバックの連携において「もっと緻密な守備をやっていかないといけない」と吉田監督も述べている。ただ、こうした部分について全く手を付けない状態で開幕を迎えたわけではなく、練習で意図して取り組んでいる形を、守備でも攻撃でも、未だリーグ戦の舞台で発揮しきれていないのが実情。

この２試合で露呈した課題は、短期間で容易には修正できないかもしれないが、この壁を乗り越えなければ先へは進めない。信じて貫くことに加えて、「良くなるように話し合いながら、微調整していくことが必要」と、北嶋秀朗は言う。「こういう状況は成長するチャンス」（同）なのだから。

以上

2013.03.11 Reported by 井芹貴志