昨シーズンに味わった悔しい想いを胸に巻き返しを図る福岡は、いま変化の真っただ中にいる。昨年とは違う姿を見せたのが開幕からの3戦。豊富な運動量をベースにした高い位置からのハイプレスと連動した中盤の守備、そして、奪ってからの縦に速い攻撃は、福岡が志向するアグレッシブでスピーディなサッカーとは何かを、多くの人たちに披露した。開幕3連勝こそならなかったものの、その戦う姿は、スタジアムに足を運ぶサポーターの多くに期待を抱かせるものだった。
その一方で、現段階での課題が浮き彫りになったのが前節の徳島戦。徹底してロングボールを放り込んでくる徳島の攻撃に対応できずに最終ラインがズルズルと後退。ゾーンを間延びさせられ、プレスも、連動した守備も機能しないままに敗れた。後半は自分たちの形を表現する時間帯もあったが、90分間を振り返れば、自分たちの特長をほとんど発揮できずに終わった試合だった。
福岡が持つふたつの顔。しかし、ネガティブに捉える必要はない。福岡が目指すのはJリーグ36番目からの反攻。その過程に、いくつもの障害物が現れることも、上手くいかないことがあっても、そのひとつ、ひとつを粘り強く乗り越えていかなければいけないことも覚悟の上だ。やらなければならないことは明確だ。結果に一喜一憂せずに、何が出来て、何が出来ないのかを常に整理すること。自分たちがやるべきことを明確にし、弛まない努力を続けること。そして、目の前の試合に現時点での力の全てを発揮してチャレンジを続けることだ。「まずホップがあって、次にステップがあって、そしてジャンプが出来る」(マリヤン・プシュニク監督)。その言葉通り、やるべきことを、ひとつずつ積み重ねることこそが「変化」を「結果」に結びつける唯一の手段でもある。そして福岡は、レベルファイブスタジアムに札幌を迎えて第5節を戦う。
さて、1年でのJ1復帰を目指す札幌は、ここまで1勝3敗。昇格争いのライバル対決となった開幕戦の千葉戦を1−0で制したものの、その後は3連敗と波に乗れない日々を過ごしている。しかし、いずれも1点差の惜敗。そして総失点は4。敗戦に理由はあれど、3連敗という結果だけで札幌の実力を測れば、本当の姿を見誤ることになる。まして、J1復帰を睨めば、札幌にとっての福岡戦は、何があっても連敗を止めなければいけない試合。いままで以上の強い気持ちでレベルファイブスタジアムに乗り込んでくる。そんなチームをプシュニク監督は「危険なチーム」と表現する。「ボールキープが上手く、守備の陣形も整っている。前線には危険な選手がいる。そして、昨年までアビスパで仕事をしていた財前監督は、我々の事を良く知っている」(同)。これまでの4戦が福岡にとって難しい試合であったのと同じように、札幌戦もまた難しいゲームになる。
福岡にとってのポイントは3つ。まずは、徳島戦で不安定さを露呈した最終ラインを、どのように修正するのかという点にある。過去2戦では、怪我の尾亦弘友希に代えて岡田隆を左SBに起用するというスクランブル体制で臨んだが、はたして、札幌戦でも同じ体制で行くのか。そして、徳島戦では高崎寛之にいいようにやられたCBに対して、どのような改善策を施すのか。選手交代も含めて最も注目される点でもある。
もうひとつは、自分たちのサッカーを改めてピッチの上で表現すること。サッカーは駆け引きの勝負。いかにして相手の良さを消し、自分たちの良さを出すかが勝負の分かれ目になる。しかし、忘れてはならないのは、あくまでも自分たちの特長は、攻守に渡って前への推進力にあるということ。苦しい時間帯は必ずある。しかし、どんな時も前への意識を持てるか否かで大勢は大きく変わる。
そして、総力戦で戦うことだ。「いまは、自分が出て勝つという意識ではなく、誰が出てもチームのためにプレーするという意識を大事にしていかないといけない」とは、前節で久しぶりの先発出場を果たした畑本時央の言葉。ピッチに立つ11人はもとより、ベンチに座るメンバー、ベンチに入れなかったメンバーも含めて、全員の気持ちをひとつにして戦わなければならない。そして、チームだけではなく、スタジアムに集う仲間とともに、すべての力を結集させて戦う必要がある。それが今シーズンの福岡の姿、マリヤン・アビスパが求めるスタイルだからだ。2連敗の後の札幌戦は、福岡が最初にぶつかる序盤戦の壁。それを乗り越えることで福岡の変化は、さらに一層進むことになる。必要なものは「勝利」の二文字だ。
以上
2013.03.23 Reported by 中倉一志
J’s GOALニュース
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