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【J2:第5節 東京V vs 熊本】レポート:嗚呼1勝。あと一歩で耐え切れず、東京Vはまたしても初勝利ならず。熊本は、2試合連続で追いつくポジティブドロー(13.03.25)

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1勝が遠い……
東京Vは、今季初めて先制点を奪うことに成功したが、残り2分の土壇場で追いつかれた。『リードしてからの戦い方』という新たな壁に、またしても勝点「3」奪取を阻止されてしまった。

4節が終わり0勝3分1敗と結果の出ていなかった東京V・三浦泰年監督は、「怖がらないでボールをもらいに行って前へ運べる選手をボランチに置いて、リズムとテンポを出したかった」。「ダブルボランチの後ろに、今まで2枚だったDFを3枚にすることによって、矢印が前の方に守備ができる。両ワイドにスプリント能力のある選手を置くことによって、相手の攻撃に切り替わった時に早くポジションがつける」との狙いから、西紀寛をボランチに、陣形も3−4−3へと、前4節から変化をつけて臨んだ。
だが、狙いとするサッカーにはなかなか持ち込めず、特に攻撃が「タカさん(高原直泰)にボールを入れて『なんとかしてください』みたいなのも多かった」(飯尾一慶)。そんな、高原頼み的な戦いを避けるため、指揮官は高原を前半で交代。後半あたまから中後雅喜をボランチに入れ、西をシャドウに上げた。相手の熊本との兼ね合いも当然あるが、全体的に硬かった印象の前半とは違い、スムーズにボールが動くようになると、21分、その西が繰り出した裏へのスルーパスに飯尾が抜け出し受ける。横に流れながらコースを見つけ、右足を一閃。新キャプテンが強烈なボレーでチームに今季初のリードをもたらした。

しかし、「そのままのサッカーを続ければいいのに、なぜか変わってしまった」。西は大きく悔やんだが、それこそが、“勝利”という結果でしか掴み取ることができない真の意味での自信を未だ手にしていないことの弊害とも言える部分なのではないだろうか。もちろん、残り時間が20分以上あり、わずか1点のみのリードを守りきろうとは、この時点では決して思ってはいなかったに違いない。だが、いまの東京Vの誰もが抱く『初勝利』への思いは、とにかく強く、深い。が故に、「いつも追いつく立場だったので、点を取った後に自然と守備的になりすぎてしまったのかもしれない。1点を守りきるみたいな形になってしまったのが良くなかった」という飯尾の言葉にすべてがあるように思う。「(1点を守ろうとする)意識はなかったのですが、結果として下がってしまった形になった」と小池純輝も猛省したが、得点後、無意識に守備的意識が働いたのか、両ウィングバックが下がり5バック気味に。その東京Vのワイドのラインが下がったことで、逆に高い位置まで上がれるようになった熊本の両サイドは、特に右サイドバック藏川洋平からのクロスで決定的なチャンスを作るシーンが急増した。
 
後半43分の同点弾もまさにその形からだった。藏川が右サイドから持ち込み、相手が厳しくプレスに来ないところで思い通りの精度の高いクロスを入れると、途中から今季初めてFWで入った高橋祐太郎が頭でぴたりと合わせネットを揺らした。熊本は、前節のG大阪戦に続き、リードされつつも最後まで決して諦めることなくゴールを目指し、2試合続けて引き分けに持ち込んだ。「この3連戦を1勝2分の負けなしで終わることができたことが、まずチームとしてとても大きかった」黒木晃平の表情は明るかった。同じく、「一番良くないのは勝点0なので、1でも積み上げられたことは大事」と、ビハインドからドローへ持ち込んだ粘り強さには手応えを口にした北嶋秀朗だが、一方で「同点に持ち込んだ後、2点目を取りにいくことは大事だけど、玉砕覚悟の攻めはよくない。今日はどちらかというと玉砕気味だったので、しっかりと守りつつも追加点を狙うというバランスをきちんとることが大事」だと、熟練選手らしく今後“負けない”チームを作っていく上で必要な要素を提言した。

同じ熟練選手でいえば、西の「アディショナルタイムで勝てる試合もあれば、追いつかれる試合もあるんですけど、今日と逆の方(追いつく立場の方)が確実に波に乗れる。リードしたこの試合はしっかりと終わらせなければいけなかった」という言葉も、今後の東京Vにとっては大きなテーマとなるだろう。試合後の雰囲気にも顕著に現れていたが、同じ勝点1ずつを分けあったとはいえ、ポジティブな言葉と表情に満ちていたのは追いついた熊本だった。
 
ただ、その中でも、東京Vにとっては結果以上に個々人の面で大きな収穫があった。まず、ルーキー吉野恭平のJデビューだ。後半14分から3バックの一角として出場し、プロとしての第一歩を踏み出した。
そして、何よりも感慨深かったのが、巻誠一郎の復帰である。リーグ戦では、昨季第31節(8月26日)以来、約7ヶ月ぶりに立ったピッチへの思いを、「トップのゲームに絡めるようになったことは、大きなケガの時に助けてくれ、支えてくれたいろいろな人たちのためにも、とても大きなことだと思っています」と、目に熱いものを溜め込んで語った。そして、東京Vのチームの一人として続けた。「点は取れているけど、失点もしてますし、1点のところを2点取る努力をしなければいけない。お互いの特徴を生かしながら、共通意識を持つことが大事だと思います。(結果が出なくて)ここで投げ出すのは簡単ですが、僕らとしては一歩ずつの思いでやっています。チームメイトを信じて、ブレないように続けていくことが大事」。プレーでも、言葉でも周りを引っ張れる巻の復帰は、いまの東京Vにとっては精神的主柱としてかけがえのない、心強いものとなるに違いない。巻が語るように、投げ出すのは簡単だろう。だが、毎試合チケットを買い、勝利とJ1昇格を信じて大きな声援を送り続けるサポーターのためにも、現実から逃げず、自分の問題として現状を真摯に受け止め、乗り越えていく、ひとりひとりの責任感をぜひ示してほしい。「積み上げた1ポイントを生かすも殺すも次の試合だといつも考えています」と三浦監督。次節こそ、4つ溜め込んだ引き分けの答えを見たい。

以上

2013.03.25 Reported by 上岡真里江
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