シッカリとした意識のもとに、相手の攻撃を待ち受ける状態を取ると、簡単にはやられることはないだろう。やられなければ、やり方をかえる必要はない。そうなると、求められるのは、相手の守備を崩すアイデアや、一人で打開する技術となるのがサッカー。今節の鳥栖対清水は、互いの守備意識が高く、攻撃陣にとっては苦労した試合だったのではないだろうか。
鳥栖は、前線からのプレスと高いDFラインで、清水のパスコースを限定し続けた。ワントップのバレーに入れたいボールを出させず、両サイドに振っても、ボールサイドに人数をかけて中にボールを入れさせなかった。鳥栖の守備での狙いは、ことごとく成功していた。
清水も、高いDFラインに押し上げられたMFとFWが、鳥栖のパス回しをDFに追いやっていた。セットプレーでも、FW豊田陽平に2人のマークを付けるなど、守備での意識は高かった。
お互いに球際でも激しいぶつかり合いを見せ、FKでの再開シーンが多くなった。それでも、ひるむことなくボールを奪いに行く展開に、お互い前半に放ったシュートは2本ずつと攻撃よりも守備での健闘が光る内容だった。
互いに決め手を欠く内容に、決着をつけたのが70分。鳥栖が、ボランチに末吉隼也を入れた直後だった。展開力のある末吉を入れることで、攻め手を変えて先制点を狙いに行ったところだった。左サイドからスローインで得たボールをイ キジェが左サイドの高木俊幸に送った。この時点で、鳥栖のDF陣は右にスライドし、左サイドDFの呂成海がワントップのバレーをマークする形となった。これは、清水の攻撃の形であり、鳥栖の守備の形でもある。鳥栖にとって違ったのは、バレーが反転してシュートを鳥栖ゴールに突き刺したことであり、清水の攻撃としては思惑通りだったに違いない。そして、このシュートが今季の初勝利を清水に、今季の初黒星を鳥栖に与えることになった。
と、ここまででこの試合のレポートを脱稿してもいいのだが、それでは一部のサポーターの方からはお叱りを受けることになるかもしれないので、少しだけ、課題についても記しておく。
両者とも、攻め手を欠いたとは前述したが、いかに攻め手を欠いたのかを触れておく。互いに前半に放ったシュートは2本ずつ。コンパクトな陣形で、ボールの入れ所を防がれ、出し所にプレスがかかると容易に相手を崩すことができなかった。鳥栖は、FWが相手DFの裏を取る動きを見せてはいたが、出す側がコースを防がれて思うような展開を見せることができなかった。清水も、逆サイドへの展開を図るものの、鳥栖のプレスにクロスまで持っていくことが少なかった。コンパクトな陣形を使ってくる相手にはロングボールや逆サイドへの展開は有効な手段であるが、相手のプレスが早い(厳しい)時には簡単にはボールを通すことができない。いかにして、プレスの早いコンパクトな陣形を崩すのかというアイデアを欠いていたように感じる。
スピードのある選手を入れてオフサイド覚悟でDF裏に走らせるのか、強引なドリブルで突破を図るのか、ダイレクトパスやポストプレーでプレスをかわすのか、ミドルシュートを放つのか…。チームの持つ特徴をフルに出し切ったといえる選手交代やシステム変更などを見ることができなかったのは残念なことだと感じた次第である。
J1に残留するため、上位に進出するためには、できるだけ多くのオプションを備えておきたいものである。守備が機能していた分だけ、攻撃に寄せる期待が高まった試合でもあった。
シュートを打つためにプレーをすれば、相手は打たせまいとプレーをする。
ボールを運ぼうとすれば、相手は奪いに来る。
サッカーはその繰り返しで、疲れたり気を抜いたりすると、その分だけ相手が優位な状況になる。
だからこそ、サッカーは一瞬たりとも気を抜けないのである。
以上
2013.04.07 Reported by サカクラゲン
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