15戦無敗の大宮は負けず、記録を16へと伸ばした。成熟したクラブを目指す大宮のベルデニック監督が会見で明かしたとおり、彼らは成長曲線を描く過程を今スタジアムで楽しむことができるクラブの一つだろう。何が上手くいって何が足りないのか。それを日々発見できる面白さが彼らの今の姿から感じとることができる。
F東京もまた同じだ。大宮に0−1で敗戦し、3連敗となった。まだ成熟した強豪と呼べるクラブではない。ただし、今に満足しなければ、進むことはできる。それは過去が証明している事実でもある。
前半は大宮が主導権を握り、後半はF東京が盛り返した。一瞬の隙を突いて大宮がセットプレーから得点を奪い、最後までそのリードを守りきった。それがこの試合の展開だった。
F東京は、水曜日のヤマザキナビスコカップからメンバーを変更し、先週の第4節・横浜FM戦と同じ先発メンバーでスタートした。ポポヴィッチ監督が思い描いたゲームプランは先行逃げ切りだった。「大雨で風が吹けば、ボールをつなぐことは難しくなる。攻撃面でアーリアのパスの精度も生かしたかった。予報によると、後半から大雨になるという予定だったので、その前に先制点をとってということが頭の中にありました。後半、大雨になったときに米本を投入して守備を固めることを考えた上での決断でした」。しかし、思惑は外れて空回りした。そうなった原因は2つ考えられる。相手の守備が堅いという事前情報と、大宮の均整のとれた素晴らしいラインコントロールが苦戦を招く要素となった。
渡邉千真は試合後に「実際、中央は堅かった。だから裏で起点をつくろうとしたけど、前に行き過ぎて単調になりすぎてしまった」と語った。この日、渡邉と李忠成が前線でコンビを組んだ。金澤慎が埋めている中央の中盤と最終ラインの間に顔を出すよりも、高めに設定してある最終ラインの背後を2人が狙い過ぎてしまった。結果的に、高い位置に攻撃の起点をつくることができず、離れた距離からパスを出してしまったため、精度を欠いてボールロストの回数も多くなった。ただ、背後を突くことは悪い判断ではない。2人と、大宮の最終ラインの個々の身体能力差を比較すれば、イーブンボールをマイボールにすることも可能だったはずだ。でも、そうはならなかった。大宮の最終ラインは、乱れることなく絶妙に調節して何度もオフサイドの網にかけた。たとえF東京ボールになったとしても、チーム全体がすばやく戻って複数で囲い込んでボールを奪うことにも成功していた。大宮の守備は、それだけ規律正しくコントロールされていた。
F東京は、背後を狙いすぎたことでさらなる副作用も起こしていた。それが攻撃から守備への切り替えの遅れだ。本来であれば、パスを受けに来るポスト役の選手がボールを奪われた瞬間に、相手ボランチにプレスをかけるファーストDFになるはずが、2人が前線で裏を狙ったためにその場所に戻るまでの時間がかかり過ぎていた。前半、大宮がボールを支配できた理由はここにもある。
後半、李に代えて米本を投入すると、流れが変わった。F東京は本来の守備の形が戻り、攻撃から守備への切り替えも早くなったからだ。ただ、うまく左サイドを起点に決定機をつくったが、大宮を崩しきるまでにはあと一歩が足りなかった。左サイドが機能したが、右サイドは徐々に攻撃回数が減少した。中村北斗の負傷によってカップ戦も含めて公式戦すべてに出ずっぱりの徳永悠平の疲れもあったはずだ。マッチアップしたチョ ヨンチョルの積極的な縦への仕掛けもそこに拍車をかけていた。
最終的には、78分に大宮のFWズラタンにセットプレーからミスが重なって決められてしまったが、F東京が勝ちきれない要素はほかにも存在していた。
しかし、渡邉と李のコンビが今以上に連係が深まれば、この試合の前半のようなことは起こらなかっただろう。逆に、大宮もさらにビルドアップが安定すれば、後半のように押し込まれることなく相手を押し返すことができたはずだ。成長の余地は互いに残されている。次の試合でどこまで改善できたかを見られる楽しみが両チームにはある。両クラブの監督、選手の言葉からは、もっと成長したい、強くなりたいという意志が伝わってくる。つまりはスタジアムに足を運ぶ価値があるということだ。再戦は、9月28日。秋が深まるころに、互いがどんな姿になっているのか、勝負はここからだ。
以上
2013.04.07 Reported by 馬場康平
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