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【J1:第5節 柏 vs 名古屋】レポート:柏と名古屋、実力と質の高さを示した壮絶な攻防は決着つかず。3−3の引き分けに終わる(13.04.07)

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試合終了の瞬間、多くの選手が膝に手を当てて屈み、またある選手は力尽きたようにピッチに座り込んだ。試合の半分を10人で戦った柏のみならず、数的有利にあった名古屋の選手たちも例外ではなく、その姿がこの試合の激しさを物語っていた。

この激闘は開始早々、まさに風雲急を告げる攻防から始まる。3分、名古屋の左コーナーキック。ゴール前ファーサイドにはぽっかりとスペースが空いており、どフリーの状況で放った田中輝希のヘッドが柏のゴールに突き刺さる。プロ入り初ゴールに手荒い祝福を受けたのも束の間、その1分後、増嶋竜也のロングフィードに対し、左サイドのオープンスペースへ抜け出した田中順也が絶妙のトラップの後、腰の入った鋭いクロスを送る。ドンピシャのタイミングで飛び込んだ工藤壮人のヘッドが決まり、柏もすぐさま同点に追い付いた。

ここからの柏のゲーム運びはほぼパーフェクトだった。「センターバック2人は空けたように見せて自陣に引き込んでから、コンパクトにして奪って、相手のサイドバックの裏のスペースを突き、押し戻していく」(ネルシーニョ監督)というように、田中マルクス闘莉王、増川隆洋、名古屋の2センターバックにはある程度ボールを持たせるが、鍵を握る中盤の田口泰士、ダニルソンには、2トップとボランチがマークを受け渡しながらケアすることで効果的な仕事をさせず、名古屋は玉田圭司、田中輝希も頻繁に受けに降り、矢野貴章、小川佳純もサイドに張らずに中へ動くなど前線の4人も流動的にプレーしたが、柏は上記したネルシーニョ監督の言葉通り、前線から最終ラインまでがコンパクトだったため名古屋が仕掛けの縦パスを入れても、柏の守備の網に必ず引っ掛かり、そして思惑通りに相手のサイドバックの背後を突いて押し返していく。14分の逆転弾も、狩野健太が田口と田中隼磨を食い付かせ、田中順也が左サイドのオープンスペースを突いた狙い通りの展開から生まれた。折り返しを受けた工藤のシュートはDFが辛くもブロックしたが、セカンドボールをレアンドロ ドミンゲスが詰めて2−1とした。

立ち上がりのセットプレーを除き、名古屋はチャンスらしいチャンスが全く作れず、アウェイ水原戦での大勝の勢いそのままに攻守とも柏が圧倒する。が、前半アディショナルタイムに栗澤僚一が2枚目のイエローカードを貰い退場になると、この両者のパワーバランスが大きく崩れ、後半からは転じて名古屋が主導権を握る。

49分、またしてもセットプレーから名古屋に一発が生まれる。先制点とはコーナーキックとフリーキックという違いこそあるが、田口の鋭いキックは1点目と同じようにファーサイドで急降下し、増川の高さを存分に生かしたダイナミックなヘッドがGK菅野孝憲のワンハンドセーブを打ち破った。

数的有利の名古屋は「甲府戦が教訓になった」(玉田)と、同じように相手が退場者を出しながら、なかなか攻め切れなかった前々節の戦いの反省点を生かし、ゆっくりとしたパス回しと前線4人の流動的な動きから必ず空いているところへパスを入れ、サイドに入った時には一気にスピードアップしてゴール前へクロスを送る。ただ、柏の対応も1人少ないなりに落ち着いていた。押し込まれるのは仕方がないが、中央で弾き返したボールを簡単に蹴って再び攻撃権を名古屋に与えてしまうのではなく、極力パスをつなぎ、カウンターで押し返す策に出た。

むしろ数的有利を得て、勝ち切らなければいけないと前がかりになる名古屋に対し、工藤は「相手に焦りがあるのは感じていた」という。神経を研ぎ澄ませていた工藤は、自陣の茨田陽生から長いグラウンダーのパスを受けると、名古屋の守備陣に囲まれながらドリブルを開始。田口の対応の甘さもあったが、工藤は1人で名古屋の堅陣を打ち破り、試合後にはストイコビッチ監督から「ファンタスティック」という言葉も飛び出した素晴らしいゴールを叩き出す。3−2と柏が勝ち越しに成功した。

しかしこのまま逃げ切らせてくれないところは、さすが名古屋である。1人少ない柏がうまく守れていた要因は、名古屋のセンターバックがそれほど攻撃に加わらなかったこともあるが、71分の同点弾は闘莉王がボランチよりも前に出たことによって、柏のマークが1つずつズレを引き起こした。茨田が闘莉王に寄り、茨田が見ていた矢野は増嶋がマークをしたが、裏へ抜け出す田中輝希への対応に増嶋が引き出されると、矢野が完全に空いた。矢野の強いシュート性の折り返しは一旦リバウンドとなったものの、その跳ね返りを玉田が押し込んで3−3となる。

終盤の攻防も見応えがあった。クレオとキム チャンスを投入して柏が4点目を狙えば、名古屋もバイタルエリアのスペースを埋める柏のブロックを中に絞らせておいてから、広大なスペースの空いたサイドへ展開し、外から矢のようなクロスでゴール前に襲い掛かる。どちらもチャンスを作り、どちらも耐えしのいだ。結局決着はつかず、3−3というスコアで激闘は幕を閉じた。

ストイコビッチ監督の、記者会見での第一声が「今日は楽しめるようなゲーム内容だった」との言葉通り、客観的に見ると非常に面白い試合だった。しかしゲームを称えるばかりではなく、柏と名古屋は優勝争いをするチームとして、あえて双方に課題を突き付けたい。名古屋は11対11の時に完全に柏に攻め手を封じられ、切り替えも遅く、後手に回った前半のパフォーマンスを修正しなければならない。数的同数の時にいかに後半のようなアグレッシブな展開に持ち込めるか。一方の柏も、主導権を握った前半に点差を広げられず勝負を決め切れなかったこと、そしてあれほど注意していたセットプレーで簡単にやられたことは入念な確認作業を必要とする。いくら数的不利を強いられたとはいえ、2度の勝ち越しを守り切れなかった点も反省材料は残る。

今度柏と名古屋が相まみえるのは、リーグ戦が佳境に入った第32節。その時には課題を克服した両者が“優勝の懸かった大一番”として一戦を迎え、今回の試合よりもさらにクオリティーが高く、痺れるような攻防を見せてほしい。柏と名古屋は、それだけの力を持ったチームだということを、今回の一戦で間違いなく証明したのだから。

以上

2013.04.07 Reported by 鈴木潤
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