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【J1:第6節 名古屋 vs 新潟】レポート:開始15分で勝負を決めた名古屋が新潟を一蹴。1年ぶりの豊田スタジアムでの勝利で、玉田の300試合出場に華を添えた(13.04.14)

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キックオフからの15分。ここが勝負の分かれ目だった。疲労のないチームなどあるはずもない、15日間で公式戦5試合目となるリーグ第6節。名古屋が新潟をホームで迎え撃った一戦で、体力面をカバーする戦い方の中から、最適解を導き出したのは名古屋の方だった。

この日の両チームのメンバーはともに現状でのベストといえる11人をそれぞれが選択。過密日程の最後を勝利で飾り、次週への勢いを手にしたい意図は明確だった。
名古屋の前線はこの数試合で密な連係を築きつつある4人で構成。トップ下の玉田圭司を中心に、右に矢野貴章、左に好調の小川佳純、そしてトップには前節柏戦でリーグ戦初ゴールを決めた20歳の田中輝希が選ばれた。
対する新潟はブルーノ ロペスと田中達也の2トップを成岡翔と田中亜土夢がサポートする攻撃陣を継続。開幕5節で3得点と不振の攻撃陣の爆発を、根気よく待つ姿勢で臨んだ。

そして迎えたキックオフ。ホーム、アウェイの関係なしに前から激しいプレッシングをかける新潟だが、その狙いは一気に空転させられた。名古屋の攻撃が想定以上に速く、流動的だったのである。
「名古屋の選手たちが非常に速い動きを見せましたし、キレも相当あったように見えました。ボールを持っていない選手の動きも速いので、ボールがどんどん動く。こちらが寄せる、その時にはもうパスされている」(柳下正明監督)。
ブルーノと田中達の2トップは積極的にフォアチェックを仕掛けていくも、その後ろのプレッシングがはまらず、新潟の守備陣はことごとく後手を踏む。また名古屋のボランチコンビ、ダニルソンと田口泰士のツボを押さえた守備も高い効果を挙げ、新潟はボールを得て反撃に出ても、すぐさま奪い返される劣勢の展開に持ち込まれた。

そして12分、試合を動かすプレーが生まれる。縦パスを受けた田中達がドリブルを開始した途端、後ろからダニルソンがボールを奪取。すぐさま左サイドの小川に預けると、小川の目の前の視界はゴールまで真っ直ぐ開けていた。新潟の右サイドバック藤田征也は攻撃参加しており、成岡も前線にとどまっていたため新潟の右サイドはがら空きに。小川はそのままゴールへ向かってドリブル突破を開始、対応した大井健太郎をかわしペナルティエリアに侵入すると、カバーリングに戻ってきたレオ シルバに倒されPKを獲得した。これを11日に33歳の誕生日を迎え、しかもこの日がリーグ通算300試合目だった玉田が豪快に中央へ蹴りこみ名古屋が先制。柳下監督が「あの15分のプレーが60分ももたない」と見た試合開始からのラッシュを、見事に成功させてみせた。

ここから試合は名古屋のペースに。新潟も失点後すぐさま決定機を作るなど反撃を見せたが、肝心のシュートやクロスの精度を欠き、名古屋を脅かすことができない。それどころか流れの中で単純なミスが目立ち、自ら流れを手放すプレーを連発した。すると32分には、またも守備陣の統制が乱れて失点を喫する。新潟の左サイドに抜け出した小川には2人のマーカーがついたが、2選手の間を抜いて玉田にパスを通された。タメを作った玉田にはさらに1人が加勢し3人で囲んだが、小川へのトリッキーなパスをまたも通され、最後は田中輝の2試合連続ゴールを決められた。この間、最後の小川へのマークを含めた延べ6人の選手は全てボールの行方を追うばかり。大井は先制の場面を「自分たちの決まり事を崩してしまったのが良くなかった」と述懐したが、失点の場面に限らず、プレッシングがはがされた後の守備には再考が必要と言わざるを得ない出来だった。

後半に入ると名古屋はペースを緩め、カウンターでゲームをコントロールし始める。後半の入り15分では新潟がラッシュをかけたが、やはり細かいミスが多くゴールマウスにボールが飛んでいかない。46分の田中達のシュートは枠を外れ、49分の三門雄大はブルーノとポジションがかぶり有効なシュートを打つことができないなど、チグハグな展開にはサポーターからも溜息がこぼれた。名古屋はカウンターでチャンスを作りつつ、67分に阿部翔平、71分にケネディを投入し攻守を強化。ケネディが入ってからも単純なクロスを上げずに、相手にカウンターのチャンスを与えなかったのは3日前の大分戦から得た反省だろう。「ここ何試合か引き分けが続いていたので、まずは簡単に失点しないこと。自分たちが先制点を取ること。すぐ次のプレーで失点しない。いろいろ勉強しながらやってきている」と小川は語ったが、この日の名古屋の冷静な状況判断力は際立った。

そして試合は2-0のまま終了。名古屋がどれだけ試合をコントロールしたかは、前後半でわずか5本しかシュートを打っていないことからも一目瞭然。決して自陣に引きこもったわけではなく、体力面で省エネをしながら敵陣にも脅威を与え続けた試合運びは、後半の45分の経過が早く感じられたほど。それだけ動きのある試合であったということで、名古屋の手応えとしては「3点、4点、5点と取れた試合だった」(ダニルソン)ことは間違いない。新潟のミスの多さにも助けられた面はある。試合後、柳下監督と大井、そして田中亜は異口同音にこう言った。「プレーに落ち着きが足りない」。周囲が見えないから、パスでもドリブルでもミスをする。「闘莉王も増川も、何もしなくても新潟の選手がミスをしてくれた」(柳下監督)という会見での発言は、新潟が現在抱える最大の課題だ。

名古屋は最初の15分間で勝負を決めようと意図して臨んだわけではなさそうだが、ここ3試合続けて引き分けたという結果が選手たちの集中力を高め、効果的な猛攻につながった。新潟と比べても、チームの意思統一という要素は名古屋の大きな勝因のひとつである。ちなみに試合後に判明したのだが、何と名古屋はこれが今季の豊田スタジアム初勝利だけでなく、豊田スでの1年ぶりの勝星だった。サポーターも待ちわびた第2の本拠地での勝利は、追加点を奪えなかったことが内容面での課題といえば課題だが、この日程を考慮すれば十分に評価できるものだった。

以上

2013.04.14 Reported by 今井雄一朗
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