「押し込まれる時間帯というのは当然あると思っていたし、そこでラインを引かずに前から守備に行けたらよかったんですけど、そううまいことはいかなかった」(山崎雅人)。山形はG大阪と同じ「攻撃サッカー」という土俵の上に上がり、真っ向からの勝負を挑んだが、結果は今季ホーム初黒星となった。
出場が微妙だったG大阪・今野泰幸、岩下敬輔が先発に名を連ね、両チームとも前節と同じ先発メンバーでスタートした。試合前、奥野僚右監督は「攻守にわたって本当に積極的に仕掛ける自分たちと、選手たちのたくましさを見てもらいたい」と話し、正面からぶつかる戦術を選択。高い位置でのプレッシャーを狙ったが、それを簡単にかいくぐったG大阪が序盤からペースをつかむ。5分には家長昭博の逆サイドへの正確フィードから、12分には左で起点となったレアンドロから倉田秋、そして3人目の動きで中央を走り始めていた遠藤保仁の足先にぴたりとボールが付けられた。
山形も16分には中村太亮のパスで萬代宏樹がゴールエリアまで進入し、18分には秋葉勝がファイントで相手をかわしてミドルシュートを打ち込むなど、互角に渡り合っていた部分はあった。しかし、21分のG大阪のコーナーキック。ショートを選択した遠藤保仁は、二川孝広からリターンをダイレクトでゴール前へ。「本当にいいボールが来て、タイミングもバッチリだった」と動き直しゴール前へノーマークで入ることに成功した岩下がヘディングで合わせ、G大阪が先制した。
先制後はG大阪の一方的なペース。サイドハーフはアタッキングサード付近まで戻って対応し、中央では遠藤、今野が宮阪政樹と秋葉勝の足元を強襲。ボールを奪った後は奪いどころが曖昧になった山形を尻目にテンポよくボールを動かしながら、山形の浅いラインの背後を狙って今野が足の長いボールを供給。それがことごとくレアンドロや倉田秋に収まると、「そこで相手を間延びさせることができたし、そこでつなぐことができました」(今野)と今度は押し込む形に持ち込んだ。得点シーン以外にもレアンドロの決定機があったG大阪に対し、パスの出どころを抑えられた山形はつなぎでミスが多発し、2トップがボールを収めるシーンもゴールに向かって攻め込むシーンもほとんど見られなくなった。
後半、山田拓巳に代わり小林亮を投入した山形は、風上も利して1点を追いかける。シンプルに裏へのゴールを多用して敵陣に人数をかけようとするが、シュートまで持ち込めず、60分過ぎまではむしろカウンターを受け、レアンドロのシュートにヒヤリとさせられるシーンが続いた。チャンスが巡ってきたのは65分過ぎ。中村太亮がロメロ フランクとのワンツーで突破を図り、これがファウルで止められると、ペナルティーエリアのすぐ角からのフリーキックを宮阪が直接狙った。
攻勢の流れがさらに強まったのは72分、萬代宏樹に代えて比嘉厚平を投入し、そのタイミングでロメロ フランクをボランチに移してからのこと。中盤のセカンドボールが拾えるようになり、ロメロ フランクを起点に山崎や比嘉がショートを放ちながらG大阪のゴールに迫っていった。最大のチャンスが訪れたのは86分のコーナーキックの場面。ゴール前で足元に落ちたボールを藤春廣輝がかき出すと、ペナルティーエリアの外で跳ね返りのケアをしていたロメロ フランクがトラップからすかさずシュートを放った。GK藤ヶ谷陽介の位置と逆の右隅にコントロールされたボールは、しかしクロスバーをかすめてゴールラインを割った。
試合は1点を守りきったG大阪が勝利を飾り、2位に浮上した。長谷川健太監督は「クロス対応のところもきちっと準備をしてこの試合に入って、そういうシーンでほとんど危ない場面をつくらせなかった。ボールをきちっとつなげられて、もう1点、2点目というのが取れれば完璧なゲームだった。ありがちなのは、我慢しきれずにということがあるんですが、本当に最後まで集中力を切らさずに戦ってくれたんじゃないかなと思っております」と守備面で選手の頑張りを称讃した。今野は「ああやって最後守りきるんじゃなくて、アウェイでも自分たちのサッカーをして2点目、3点目を取りきるというサッカーをしていきたいと思っているので、まだまだかなと思います」と後半の戦い方について指摘したが、次節、今シーズンホーム初勝利を懸けた松本戦で真価が問われることになる。
山形・奥野僚右監督は「最後まで得点を奪いにいく姿勢とファイトを選手たちが表現してくれた」と評価しながらも、「ベンチから見た僕の目では、タフさがあるなと。それも、どちらの選手が転んでる回数が多いかというところに表れてる」とG大阪との違いを挙げた。前節・神戸戦と今節のG大阪戦、実力を伴った降格チームとの2連戦は、いずれも内容的にはシビアな0-1に終わった。2年前までの山形であれば、対戦相手との力の差を埋めるために相手の長所を消すサッカーを志向していただろう。しかし、攻撃主体に生まれ変わり、真摯に成長を求めるチームとなった今、持っているものをぶつけ、あえてアクションで上回ろうとチャレンジする過程は避けて通ることのできないものだ。技術や戦術やタフさがどれほど必要なのかを肌で感じ、それが将来の成長につながるのであれば、それは意味のある敗戦となる。
以上
2013.04.15 Reported by 佐藤円
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