これが負のスパイラルなのか。１点をリードされた群馬はゲーム終盤、数的優位を活かして総攻撃を仕掛けた。だが再三に渡る決定機がことごとくゴールに嫌われて、どうしても同点に追いつくことができない。群馬は５分間のアディショナルタイムも猛攻を続けたが、最後までゴールネットを揺らすことができずに無情にもタイムアップのホイッスルが響いた。今季２度目の連勝を決めた福岡に対して、群馬は痛恨の５連敗。試合後のスタジアムには重苦しい空気が漂っていた。

４連敗中の群馬はシステム変更を断行して福岡戦へ挑んだ。４節横浜FC戦以降先発出場のなかったブラジル人FWエデルをエース平繁龍一とともに前線に配置する４−４−２の布陣で連敗脱出を狙った。序盤は、左MFに入った加藤弘堅が左サイドでタメを作って攻撃を活性。左SB小柳達司が果敢にオーバラップを仕掛けて福岡を追いつめていく。小林竜樹は「ボールがしっかりと動いていて自分たちのサッカーができていた」と振り返る。

だが、チャンスとピンチは表裏一体。15分、左サイドで加藤弘堅がボールを失うと、福岡・石津大介のカウンターを浴びてしまう。群馬は、バイタルエリアへ侵入してきた石津への対応が甘く、ファーサイドへ送り込まれたクロスを金森健志に流し込まれてあっさりとゴールを許してしまう。群馬は、カウンター対応へのルーズなプレーが重なり、４試合連続で先制点を奪われる結果となった。

１点ビハインドとなった群馬は、エデルのポストプレーを攻撃の軸として反撃を開始する。20分に小柳のクロスから小林、前半終了間際には坂井洋平のクロスからエデルが決定機を迎えるなどゴールが生まれても決しておかしくなかった。60分には福岡の金久保順が２枚目のイエローを受けて退場となったことで群馬は数的優位という大きなアドバンテージを得る。秋葉忠宏監督は、小柳に代えて瀬川和樹、CB増田繁人に代えて青木孝太を起用するなど攻撃的な選手をピッチへと送り、ピッチの選手へ一斉攻撃のメッセージを送る。

しかし１点が遠かった。群馬はゲーム終盤、エース平繁、遠藤敬佑、瀬川らが次々とチャンスを迎えるが、福岡の決死の守備に阻まれてゴールネットを揺らすことができない。消費する時間に反比例するかのようにスタンドに蔓延する増えるため息。「勝っていないことでみんなが慎重になりすぎて決まるはずのゴールが決まらなかった」（黄誠秀）。群馬の選手たちは、試合終了のホイッスルともにピッチに立ち尽くした。

福岡は前半のワンチャンスを確実に活かして前節の九州ダービー勝利に続いて今季２度目の連勝を果たした。チャンス自体は少なかったが、３トップの徹底された動きで、群馬のDFラインを崩してみせた。「練習からやっている形だったのでイメージ通りにゴール前に入っていくことができた」（金森）。福岡は、開幕連勝後の約１カ月間、勝利から遠ざかっていたが、この連勝でチームは再び上昇気流に乗る。マリヤン プシュニク監督は「タフな戦いを制した選手を誇りに思う」と選手を称えた。

数的優位のアドバンテージを勝点に変換することができなかった群馬は、痛恨の５連敗となった。ただ攻撃のリズムは試合ごとに上がり、４−４−２のシステムに希望の光がみえるなど収穫があったのも事実だ。「選手たちはワンプレーワンプレーに生活がかかっていることを肝に命じて戦わなければならない。あらゆることにトライしてこの状況を脱する」（秋葉監督）。チームにとってこの連敗は成長への試練。負の連鎖を断ち切ったとき、群馬の未来が見えてくる。

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2013.04.18 Reported by 伊藤寿学