前節の松本戦で悲願の今季初ゴール、初勝利を挙げた岐阜。この試合では、殊勲者となったDF新井辰也を前節同様にベンチスタートにし、あくまで地上戦で組織的な守備から、前線の樋口寛規と美尾敦のキープ力を生かして仕掛ける戦い方をセレクト。
対する富山は、【3-1-4-1-1】の変則布陣を敷いて、中盤で朝日大輔、ソ ヨンドク、キム ヨングンの3人をフリーマン的な役割として置き、彼等の動きによって生じるマークのズレを突いてくる狙いを持ってきた。
だが、序盤は双方に持ち味を消し合う戦いとなった。岐阜は【4-2-3-1】の後ろのスリーラインの距離間を縮めて、3枚のブロックとセカンドボールへの意識を高めることで、富山の狙いを外し、富山も3バックが中央に絞る形をとって、アンカーの森泰次郎と共に挟み込む形で、樋口と美尾の自由を奪った。
双方に打開策が見いだせない展開。膠着した状況で、岐阜にアクシデントが起こる。ボランチの李漢宰が28分に負傷し、プレー続行が不能に。ここで行徳浩二監督は早くも新井を投入し、松本戦同様にFWで起用。FWの樋口がトップ下に、美尾がボランチに下がり、中盤でボールを握って、前線のターゲットマンを目がけて仕掛ける攻め方にシフトチェンジ。
だが、中盤のやり方は変わらない為、富山はやることを変えずに、前線の新井に注意を寄せればよくなった。2人への注意から1人への注意に変わったことで、徐々に最終ラインや引き気味の木村勝太と國吉貴博の両ウイングバックから、中盤にいい形でパスが入るようになった。
結果として富山は当初の狙い通り、中盤の中央で数的優位を作り出せるようになり、ソ ヨンドク、キム、朝日の間でパス交換が生まれると、岐阜の守備陣は徐々に中央に引き寄せられるように。こうなると当然、空いて来るのが両サイド。特に守備力の高い田中秀人がいる富山から見て左サイドよりも、攻撃的な尾泉大樹のいる右サイドの方がより顕著にスペースが生まれるように。しかも中央で時間が出来たことで、低い位置を取っていたウイングバックが上がる時間も生じ、富山の左からの攻撃が効力を発揮し始める。
すると、40分に國吉貴博に簡単に右サイドを突破され、マイナスの折り返し。キムがフリーで放ったシュートは枠をそれたが、直後の41分に再び國吉が右サイドを突破。フリーの國吉は落ち着いて中を見て、得意の左足に持ち替えてから、ニアに飛び込んだFW西川優大にライナーのクロス。これを西川が187cmの長身を軽やかに浮かして、右ヒールでニアに押し込む。一昨年まで岐阜にいた西川が、古巣相手に均衡を崩す貴重なゴールを上げてみせた。
岐阜にとっては、40分のシーンで学習すべきだった。富山は明らかに自分たちの左サイドの裏を狙っていたことを。修正せぬまま、まるでリプレーを見ているかのような形でやられてしまった。
岐阜にとって、重くのしかかる先制被弾。後半、田中に代えてFW中島康平を投入し、右MF杉山新を右サイドバックに戻し、トップ下の美尾を右MFにし、中島をFWに置いて樋口とツートップに。新井を本来のCBにして、CBの益山司をボランチに上げた。しかし、肝心の左サイドの修正は見られなかった。
左右のバランスが崩れたまま後半に入ったことで、序盤はそのまま富山ペースに。52分にキムにポスト直撃のシュートを浴びると、58分には左サイドでキムにキープされ、岐阜守備陣がボールサイドに寄った瞬間、右の木村に展開される。そして裏に抜け出した西川に通され、西川の折り返しを中央でどフリーのソ ヨンドクに難なく頭で合わされた。
苦しくなった岐阜は、72分に美尾に代えて、FW杉本裕之を投入。それに対し、富山は81分にソ ヨンドクに代えてDF池端陽介を投入し、4バックにシフトチェンジ。だが、猛攻するしかなくなった岐阜の容赦ないロングボール攻撃に苦しみだすと、84分にはFKから中島がヘッドで合わせ、1点差に迫られる。勢いに乗った岐阜は、88分に益山のクロスがゴール前でこぼれたところを、DFデズモンドがアクロバティックなボレーシュートを決めて、2-2。
ようやくここで岐阜が気持ちを見せて、同点に追いついた。だが、スタジアムが盛り上がったのは、この『一瞬』だった。アディショナルタイム3分が表示された92分、ミスを奪われ、カウンターを受ける。朝日を経由して、中央の木村にボールが渡った瞬間、岐阜の守備陣はボールウォッチャーになり、中央から左に流れようとしている西川のマークの受け渡しを完全に失念。西川がフリーで左に流れきったときに、慌ててDFが応対に行くが、すでに遅く、逆に左の裏のスペースを作り出してしまう。木村のパスはその左前方のスペースに転がり、大外から走り込んだDF舩津徹也の下へ。舩津の強烈なシュートはニアを射抜き、これが富山の決勝弾となった。
3-2。83分間の『闇』と、10分間の『光と闇』。残念ながら岐阜が見せた光は、非常におぼろげなものであった。それは行徳監督のこの言葉に凝縮される。
「最後は2点を返したが、ゲームの終らせ方とか、0-1、0-2、2-2の状態の違いがピッチ上で判断できない選手がたくさんいた事での失点。あの時間帯ではアウトプレーをすることが大事だし、もう一点取りたい気持ちわかるが、バランス崩して獲りに行くとやられてしまう。0-1、0-2とは違う。流れは完全に相手に掴まれての2-2なので、これはしっかりと判断しないと。疲労があったのか、バランスを崩したし、プレーを切らなかったし、サポートも戦術的なサポートではなかった」。
それに対し服部年宏は、「2-2になって、僕は3点目を取りに行くつもりだったし、そのためにバランスを取るために残って守備を意識した。でも、そこの意思の統率がとれていなかったとすれば、僕のミスでもある」と語った。
この意識のズレと、行徳監督の指摘こそ、今の岐阜の深刻な問題だ。行徳監督が言うとおり、ピッチ上で状況を理解できていない選手が何人かいた。そうでなければ、3失点目のような拙すぎるミスは生まれない。逆に言えば、服部は状況を理解していた選手だった。
『敵は内にあり』。この試合は改めてそれを思い知らされる内容だった。まだまだ岐阜が迷い込んだトンネルの出口には達していない―。
以上
2013.04.18 Reported by 安藤隆人
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