ホーム2連敗中の鬱憤を晴らすかのようにケーズデンキスタジアム水戸は大盛り上がりを見せた。リーグ2位の得点力を誇る千葉のお株を奪う攻撃的な姿勢を前面に出して、千葉ゴールを襲い続けた水戸のサッカーにスタンドは沸き続けた。前線で三島康平が持ち前の強さを発揮して起点となれば、ボランチに入った内田航平が巧みな足技を見せてサポーターを魅了。エンターテインメント性あふれる攻撃を繰り出して手にした勝利にサポーターは満足したことだろう。リーグ序盤の苦しみの時を終え、いよいよチームが上昇気流に乗ろうとしていることを証明するには十分すぎるほど見事な勝利であった。

互いに自陣にしっかりと守備網を作り、そこに入ってきた相手に対してユニットを組んで潰しに行くという狙いが明確で、ボールを奪うとマイボールを大切にしながら攻撃を組み立てようとしていた。試合はミラーゲームの様相を呈していた。その中で勝負の分かれ目となると思われたのが、いかに前線にいい形でボールを入れられるかであった。前半は両チームともにタイトな守備を見せていたため、思うような攻撃を繰り出すことができず、こう着した展開のまま45分が過ぎた。

しかし、後半に入ると千葉が攻勢に出た。中央から崩す意識の強かった前半から一転、サイドを起点に攻撃を繰り出し、水戸の守備を崩そうとしてきた。しかし、水戸は冷静だった。「相手が点を取りに来ることは分かっていた。守るところはしっかり守って、自分たちの流れが来るのを待っていました」と内田が語るように、水戸は無理をせずに守備に集中。しっかりゾーンを保ち、千葉の猛攻を跳ね返し続けた。60分を過ぎると、ボランチの西岡謙太と内田が落ち着いてボールを回し、水戸がペースを握りだし、そこから輝きを放ったのが前線の三島康平であった。

前半はなかなか起点になれなかったが、後半は圧倒的な強さを見せて千葉DFを寄せ付けず前線で起点を作る。ここで三島にボールがおさまるようになったことが勝負の分かれ目となった。水戸が厚みのある攻撃を繰り出せるようになり、千葉のゾーンディフェンスを崩していくと、迎えた70分、右サイドで内田と小澤司、石神幸征でボールを回し、千葉の守備を引きつけておいて内田が中央にボールを入れる。パスを受けた山村佑樹がすぐに左の島田祐輝に展開。島田からの折り返しをゴール前に走り込んだ三島が左足ボレーでゴールに叩き込んだ。

「2点目を取れるチームにならないといけない」と前節、柱谷哲二監督が語ったように、今季初の複数得点に向けて、水戸は攻め手を緩めなかった。その後もアグレッシブな姿勢を失わず、74分にCKから再び三島が決めて追加点を挙げたのをはじめ、試合終了の笛が鳴り響くまで水戸は再三決定機を築いてみせた。そして、2対0で勝利。試合後には歓喜のラインダンスが行われ、ホームで3試合ぶりにサポーターと喜びを分かち合った。

ほぼ完ぺきな内容で勝利をおさめた水戸。今季初の2連勝を挙げ、いよいよチームは勢いづいてきた。しかし、選手たちの表情が緩むことがなかった。「次の北九州戦が大事。せっかく千葉に勝ったんだから、次も集中して3連勝を狙います」（細川淳矢）と選手たちは次節に向けて気を引き締めていた。この日のサッカーがベストではない。あくまでここからが本当のスタート。水戸はもっともっと強くなる。

開幕戦以来の敗戦を喫した千葉。しかし、敗戦から得るものがある。むしろ、これまでなかなか修正できなかった点をこの敗戦を経て取りかかることができるようになることだろう。鈴木淳監督を迎え、チームはスタートを切ったばかり。現在はまだベース作りの段階にある。こうした苦い思いが力になることだろう。この敗戦を経て、鈴木監督がいかなるアプローチを行うか。今後、さらなるレベルアップをするための糧としたい。

以上

2013.04.18 Reported by 佐藤拓也